配信日付:2013年08月27日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013/08/27(第102号) ■□ がん政策レター □■ 日本医療政策機構 市民医療協議会 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策 の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] センター長コラム [2] がん対策レポート [3] インフォメーション [4] がん対策トピックス [5] がん対策ニュース ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1] センター長コラム ● 医療用麻薬使用量の都道府県格差に関心を持とう 今回は、ひとつのデータを少し分析してみましょう。2009年から2012年の4 年間の都道府県別の医療用麻薬使用量です。 国の第1期がん対策推進基本計画(2007~11年度)は、医療用麻薬の使用量 を緩和ケア分野の個別目標の参考指標としていました。2013年度から17年度 の各都道府県の地域医療計画について厚生労働省が示した作成ガイドライン では、がん分野で計測する指標として、医療用麻薬の消費量をあげています。 これに従って、各都道府県はこの数値の推移を見守ることになります。 都道府県の第2期がん対策推進計画(2013~17年度)でも、緩和ケア分野の 目標として医療用麻薬消費量の増加をあげているところがあります。三重県 の計画では、これまでの消費量が全国の平均量を大きく下回っていることか ら、具体的な数値目標を定め29.1グラム(人口千人当たり)から40.0グラム に高めると、記載しました。 緩和ケアでは、患者さんの痛みが取れることが目的であり、アウトカム目 標となります。アウトカムとは、患者の健康状態に起こる変化のこと。除痛 率や緩和ケアに関する患者満足度など、アウトカム指標の計測が重要です。 一方、医療用麻薬の使用量は、行われている医療サービスの内容を示すプロ セス指標のひとつとなります。プロセス指標としては、ガイドラインに基づ く適切な緩和ケアが患者さんに施されているかどうかの順守率等の方が、よ り良い指標といえますが、その一種の代理指標として麻薬使用量を使おうと しているともいえるでしょう。 もちろん、本当に痛みが取れているかが重要で、使用量は単純に多ければ いいとは限りません。また、データの限界もあります。人口当たりの数値で 患者当たりではありませんので、罹患率の違いや患者の県外への流出度合い などは反映されていません。しかし、日本では全体として医療用麻薬の使用 量が少ないとされています。そこで、使用量を当面は緩和医療の質をモニタ ーする代理指標とすることに、一定の意義があると考えられているようです。 そのための使えるデータとして、厚生労働省によってモルヒネ使用量に換算 した都道府県別の数値が取りまとめて公表されています。 そのデータを見てみましょう。厚生労働省が作成した「医療用麻薬適正使 用ガイダンス」の付表に、平成19年から22年度までの都道府県数値が掲載さ れています。全国の人口千人当たりの数値は、この3年間で26.7グラムから41.4 グラムへと、急速に55.2%増えています。平成22年度の全国値が41.4グラム であるのに対して、使用量が最小の滋賀県では36.5%少ない26.3グラムです。 一方、最大の青森県では、全国より52.6%多い63.2グラムとなっています。 青森県は滋賀県の2.4倍です。 〔医療用麻薬消費量 下位10県〕 県名、消費量(グラム、千人当たり)、全国比 全国、 41.4、・・・ 滋賀県、26.3、-36.5% 三重県、29.1、-29.9% 静岡県、31.1、-25.0% 埼玉県、31.9、-22.9% 奈良県、32.9、-20.7% 大分県、33.5、-19.2% 愛媛県、34.3、-17.2% 愛知県、34.9、-15.7% 茨城県、35.2、-15.1% 沖縄県、36.5、-12.0% また、3年間の伸びがもっとも大きいのは徳島県(106.5%増)で、緩やか なのは茨城県(2.5%増)となります。滋賀県は消費量が下位1位で、かつ伸 び率が下位6位(39.1%)となっています。静岡県は消費量が下位3位で、伸 び率が下位7位(42.0%)です。みなさんの地域のデータを確認してみてくだ さい。そして、全国平均より少ない場合には、何か問題がないのか、地域の がん対策推進協議会等の委員で緩和ケアを専門としている人や県庁のがん対 策担当者などに聞いてみるものいいでしょう。 医療用麻薬の消費量だけで緩和ケアの質を見るのは限界があるものの、モ ニターしつつ地域の関係者で議論し、緩和ケア体制の強化に役立てる意義は あるかも知れません。近日中に掲載予定の「都道府県がん対策カルテ2013」 には、平成23年度の都道府県別医療用麻薬使用量も含めますので、その際に はぜひご覧ください。また、がん政策情報センターウェブサイトの格差デー タコーナーにも、掲載予定です。今回取り上げた医療用麻薬消費量に限らず、 地域の格差データを確認することは、がん対策の向上に大いに貢献する可能 性があるでしょう。(センター長 埴岡健一) 参考サイト >>医療用麻薬適正使用ガイダンス http://ganjoho.jp/professional/med_info/drug01.html >>医療用麻薬適正使用ガイダンス 日本における医療用麻薬の消費量(平成19年~平成22年) http://ganjoho.jp/data/professional/med_info/1isaao00000010ek-att/2012iryo_tekisei_guide_14.pdf >>地域医療計画 がんの医療体制構築に係る現状把握のための指標例 http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_taisei2.pdf ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2] がん対策レポート 今回はお休みさせていただきます。 次号をお楽しみに。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3] インフォメーション 今回はお休みさせていただきます。 次号をお楽しみに。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4] がん対策トピックス >>がん情報サービス〔8月21日更新〕 http://ganjoho.jp/public/index.html >>がんに関するイベントのお知らせ〔8月26日更新、千葉県〕 http://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/event/ganevent.html >>第2回京都府がん対策推進府民会議総会及びシンポジウムを開催します〔8月26日更新、京都府〕 http://www.pref.kyoto.jp/gan/news/gansinpojiumu.html >>しまねのがん対策〔8月23日更新、島根県〕 http://www.shimane-gan.jp/index.html >>広島がんネット〔8月21日更新、広島県〕 http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gan-net/ >>埼玉県がんピアサポーター養成研修会を開催します〔8月20日更新、埼玉県〕 http://www.pref.saitama.lg.jp/site/gantaisaku/pia.html >>ぎふがんねっと〔8月20日更新、岐阜県〕 http://gifugan.net/ >>がんに関するイベント等〔8月16日更新、宮城県〕 http://www.pref.miyagi.jp/soshiki/situkan/eventtop.html >>佐賀のがん情報〔8月16日更新、佐賀県〕 http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/gan/top.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5] がん対策ニュース >>がん:非正規雇用者の約6割離職 正規雇用者大きく上回る[8月25日、毎日新聞] http://mainichi.jp/select/news/20130825k0000e040122000c.html >>検診率低下/釧路のがん検診[8月25日、釧路新聞] http://www.news-kushiro.jp/news/20130825/201308255.html >>がん患者口腔ケアで連携診療/福井県[8月23日、読売新聞] http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/fukui/news/20130822-OYT8T01531.htm >>県が来月がん相談窓口 患者同士の交流支援も/富山県[8月22日、読売新聞] http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/toyama/news/20130822-OYT8T00012.htm >>乳がん体験者が面接相談/神奈川県[8月22日、タウンニュース] http://www.townnews.co.jp/0103/2013/08/22/200347.html ※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。 http://ganseisaku.net/newsclip.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール マガジンを配信しております。 配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。 今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策レター 2013/08/27(第102号) 発行所 :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター 発行人/編集長:埴岡 健一 住所 :〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-10-101 Tel :03-3222-6532 Fax :03-3222-6535 E-mail :gan_newsletter@hgpi.org Web :http://ganseisaku.net/ http://www.shimin-iryou.org/ Copyright(c) 2013 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●がん政策レターのバックナンバーは下記URLよりご覧ください。 http://ganseisaku.net/backnumber.html ●がん政策レターを購読ご希望の方は下記URLにアクセスしてください。 https://shimin-iryou.org/mailmagazine.php ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
※バックナンバーは発行当時のものを掲載しております。リンク先などが変更になった場合は、該当記事などが表示されないことがありますのであらかじめお断りいたします。