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[がん政策レター 2013/09/10(第103号)]都道府県がん対策予算をチェックしてみよう

配信日付:2013年09月10日


━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013/09/10(第103号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

● 都道府県がん対策予算をチェックしてみよう

 恒例の都道府県がん予算のチェックです。2013年度の全国の予算と自県の予
算を振り返った上で、そろそろ議論が始まる来年度予算の策定に活かしてくだ
さい。各地の好事例は、地域のだれかのご尽力があったからこそ、かたちにな
ったものと思われます。その努力の果実を、バトンリレーして広げたいもので
すね。現在45都道府県の予算を掲載しています。この場を借りて、ご協力いた
だいた県庁ご担当者にお礼を申し上げます。

 今年は読者のために表示にひとつ工夫を加えました。これまで「県によって
がん予算の定義や範囲が異なる」「特別な大きな投資や案件があった翌年度は
大幅減少に見える」など、掲載情報を読み解く際にいくつか考慮に入れなけれ
ばならない点がありました。一方で、それぞれの県が作成している予算のフォ
ーマットを完全に統一することは困難です。そこで、事務局によって一部整理
をして一定の調整数値も併記することにしました。すなわち、大型機器の整備
費や建設資、県によってがん予算に入れたり入れなかったりする検査費などを、
いったん外した数値も示しています。調整前と調整後の数値はどちらがより有
益というのではなく、それぞれの役割があります。調整前の数値は、がん予算
を広くとらえる際に役に立つでしょう。調整後の数値は、県の予算の経年変化
の傾向を見る際や、他県と同様の範囲内での規模感を捉えるのには、適してい
る場合があるかも知れません。両方をご活用ください。

 全体を概観してみましょう。県がん予算は全体としては頭打ちの傾向がある
ようです。財政難である県が多く、既存施策・事業の予算は一律一定カットに
なりがちで、新規のもので減少をくいとめようとしているようにも見えます。
こうした財政状況の中で予算獲得を訴求していくには、好事例や有効性によっ
て十分な納得を得ていくことが大切になります。県の間の格差や温度差は、予
算額の規模、施策・事業の組み立ての細やかさ、新規項目への積極性などの点
で、依然として存在するようですが、みなさんの感想はいかがでしょうか。な
お、財政余力は県によって大きく異なります。同じ100万円をねん出するので
も、それに必要な努力の大きさは県によって大きく異なります。ですから、金
額の大きさだけでなく、財源の多様化、施策の細やかさなどの創意工夫など、
“どれだけ知恵を使ったか”も評価の観点となるでしょう。

 個別の具体的な目新しい事業・予算に視点を移す前に、広い観点からの確認
をしてみましょう。まず、がん対策推進条例(制定済の場合)、第2期県がん
対策推進計画と、予算の一貫性があるか。条例でうたったこと、2013年4月か
ら実施している県計画に盛り込んだ施策の実施を担保する予算が入っているで
しょうか。5月の「がん政策サミット2013」の会場で好事例として取り上げら
れた施策は、ちゃんと予算に反映されているでしょうか。

 次に、予算の決定プロセスです。県がん対策推進協議会などにおいて、予算
に関して意見を聞いたり審議したりする機会があったでしょうか。また、目に
つきやすい大型予算や新規予算だけでなく、従来からある基盤的な部分にしっ
かりと配慮がなされているかも欠かせない視点です。例えば、がん拠点病院へ
の補助金(がん診療連携拠点病院機能強化事業)の水準が維持されているか、
第2期県がん計画の進捗管理をする県がん対策推進協議会などの開催予算が確
保されているか、などです。

 では、実際に予算書を読んで、分野・テーマ別に、私が気になったいくつか
の事例をピックアップしてみましょう(テーマごとに、北から南の順に並べま
した)。着眼点や関心によって興味を持つ事例は異なってきますので、ぜひご
自分でも実際に読んでみてください。また、予算書に書かれた情報だけでは、
その施策の内容の詳細は分かりませんので、あくまで事例とアイデアの探索の
一助という意味合いに留まることをご了解ください。

【各療法の充実と専門的医療者の育成】
・北海道は、リンパ浮腫をテーマとした「がん後遺症対策事業」を開始しまし
た。
・岩手県、茨城県、長崎県などは、従来から専門的看護師の育成・研修のため
に予算を確保しています。
・福井県は、病理診断ネットワークの整備を含む「がん専門医育成事業」を開
始しました。
・熊本県は、病理医の育成の予算を拡大しています。

【がんと診断された時からの緩和ケア、在宅ケア】
・栃木県は、専門家によるコンサルテーションや同行訪問などを含む「がん患
者在宅医療体制構築事業」を開始しました。
・千葉県は、従来から「千葉県在宅緩和ケア支援センター事業」を進めていま
す。
・広島県は、実績把握や評価・公表を含む「施設緩和ケア推進事業」を開始し
ました。また、地域を選んだモデル事業を行う「在宅緩和ケア推進事業」も開
始しました。

【がんの予防・がんの早期発見】
 国内外で成果につながるとされているコール・リコール(検診対象者に個別
に受診勧奨・再勧奨する)など、個別勧奨の活動が広がっています。
・秋田県は、「がん検診受診勧奨推進事業」によるコール・リコールを継続し
ています。モデル市を2011年度の3カ所から13年度は9カ所に増やしています。
・福島県は、国交付金による基金を活用し、市町村の個別受診勧奨経費補助を
含む「受診啓発強化支援事業」を開始します。
・埼玉県は、コール・リコールを実施する市町村を支援する「女性がん検診へ
の関心向上促進事業」を開始します。
・福井県は、「がん検診受診勧奨センター」を設置した個別勧奨を継続してい
ます。
・奈良県は、コール・リコールをモデル市町村で実施する「がん検診個別受診
推奨・再勧奨モデル事業」を開始します。
・和歌山県は、個別通知による受診勧奨を実施する市町村を支援する「がん検
診推進支援事業」を開始します。
・広島県は、市町が行う個人受診勧奨への支援を含む「がん検診個別受診勧奨
支援事業」を拡大しています。

 がん検診の受診に結びつく情報伝達経路を、勤務先(職域)、かかり付け医、
がん検診推進員、家庭内など、さまざまの方向から模索する活動も増えている
ようです。
・福島県は、がん検診推進員を設置する「がん検診普及ボランティア育成事業」
を、開始しました。富山県は、がん予防推進員の養成とフォローアップを行う
事業を継続しています。千葉県は、がん検診推進員育成事業を継続しています。
・栃木県、山梨県、兵庫県などは、協働企業のネットワークを形成するための
予算を確保しています。
・福井県は、かかり付け医が「がん検診推進医」として、患者に勧奨する作戦
に取り組んでいます。
・山梨県は、「子から親へのメッセージ事業」を継続しています。
・徳島県は、「こころに響け!がん検診メッセージ事業」を拡大します。

【がんの教育】
・秋田県は、「がん教育モデル事業」を拡大しました。
・神奈川県は、小中学生を対象としたがん教育の検討を行う「がん教育普及啓
発事業」を実施します。
・山梨県は、「学校におけるがん予防に関する普及啓発事業」を継続します。
・京都府は、がん経験者等によるがん教育・啓発などを含む「がん教育の推進」
に、大きな予算を計上し取り組みます。
・鳥取県は、「子どものころからのがん予防教育推進部会」を設置する予算を
確保しました。
・広島県は、「子ども向けがん出前講座事業」を行います。

【がんに関する相談支援と情報提供】
 相談支援と情報提供の「場」を作る試みが、さらに盛んになっています。
「地域統括相談支援センター」の設置も増えています。患者団体などへの業務
委託も行われています。
・茨城県は、ピアサポート窓口の設置と研修会の開催を継続します。
・富山県は、社会福祉協議会に委託して「富山県がん総合相談支援センター」
を設置します。
・石川県は、「がん患者安心生活サポートハウス」を設置・運営します。
・福井県は、看護協会に委託し、まちなかでのがん相談や患者サロンを実施し
ます。
・京都府は、「がん総合相談窓口」を新設します。
・愛媛県は、「町なかがん患者サロン運営事業費」を拡大しました。

 相談支援者やピアサポーターの人材養成や研修に関わる事業も、多くありま
す。
・北海道は、ピアサポーターの人材派遣、相談支援マニュアルの作成などを含
む「がん患者支援体制整備促進事業」を開始します。
・埼玉県は、ピアサポーター養成・派遣の予算を計上しています。
・富山県は、ピアサポーター養成事業を社会福祉協議会に委託して行います。
・静岡県は、ピアサポーター養成事業を、予算化しました。
・島根県は、「がん相談支援センター連絡会議」の設定などを行っています。
・広島県は、ピアサポート相談員研修プログラムの検討を行います。

 その他、患者団体等の活動への助成、患者団体の育成支援、患者満足度や実
態把握のための調査やアンケートなどを行うところもあります。
・北海道は、患者相互の連携と医療関係者や行政関係者等との連携・協働を促
進するための、「がん患者等ネットワーク支援事業」を新たに実施します。
・青森県は、「がん患者団体等活性化支援事業」を、継続しています。
・奈良県は、「ならのがん対策県民提案事業」を新たに実施し、公募・選定・
補助を行っています。
・奈良県や高知県では、「患者満足度調査」を実施します。
・広島県は、相談支援センター利用者へのアンケート調査を行います。

【がん患者への就労支援】
・山形県は、病院、患者団体、労働局などによる連絡会議を開催する「がん患
者就労支援事業」を開始しました。
・東京都は、がん患者の就労等に関する調査を含めた「がん患者就労等普及啓
発事業」を開始しました。
・神奈川県は、「がん患者等就労支援事業」を開始しました。
・鳥取県は、事業主への普及啓発などを行う「企業連携就労支援推進事業」を
開始しました。
・岡山県は、新たに実施する「在宅患者等の療養生活支援事業」に、就労支援
も含めています。
・広島県は、民間企業等に取り組みを要請することを含む「がん患者就労支援
事業」を開始しました。

【小児がん】
・北海道は、実態調査を行う「小児がん医療連携推進事業」を実施します。
・東京都は、「東京都小児がん診療連携ネットワーク」を構築する事業を開始
しました。
・滋賀県は、「小児がんワーキング」を開催する予算を確保しました。
・鳥取県は、患者と家族を支援する「小児がん対策推進事業」を実施します。

【がん研究】
・青森県は、弘前大学に、がんの疫学的研究を行う寄付講座を設置しました。
・秋田県は、がん情報の分析・評価・提言・発信に結びつけるための「がんに
関する調査研究委託事業」を拡大しました。
・鳥取県は、公募型の調査と対策推進事業を実施する「がん医療対策推進検討
事業」を開始しました。
・沖縄県は、県内のがん医療の実態把握と公表により、参加医療機関の自主的
な医療の質改善に結びつける「がん医療の質の評価センター設置事業」を継続
します。

 以上、がん予算の分野・テーマ別に概観してきました。ぜひ、ご自分で各都
道府府県のがん対策予算を読み解き、自分なりの好事例像を描いてみてくださ
い。そろそろ平成26年度の地域のがん対策予算を考える時期です。その際、参
考になりそうな他県の事例があれば、さらに情報収集を進めてみてはいかがで
しょうか。また、すでに国の来年度のがん対策予算の概算要求は出ています。
国の新規予算項目を把握して、そのうち県としても獲得すべきものがあるかど
うかも、ひとつの重要な観点となります。次回のセンター長コラムでは、「都
道府県がん対策カルテ2013」のハイライトを、みなさんと読んでいきたいと考
えています。(センター長 埴岡健一)

参考サイト
>>都道府県がん予算リスト
http://ganseisaku.net/budget_state.html
>>平成26年度各部局の概算要求の概要(厚生労働省健康局)
(がん対策部分 9~12ページ)
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokan/dl/04-03.pdf
>>平成26年度厚生労働省予算概算要求の主要事項
http://www.mhlw.go.jp/wp/yosan/yosan/14syokan/02.html
>>都道府県がん対策カルテ2013
http://ganseisaku.net/karte_2013.html


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[2] がん対策レポート

● 平成25年度 都道府県がん予算リスト

 各都道府県別にがん対策の予算を抜粋して掲載しています。
自分の住んでいる県の予算と他県の予算を読み比べてみましょう。ここにも都
道府県格差が存在することに気づかされます。

>>都道府県がん予算 リスト
http://ganseisaku.net/budget_state.html

● 都道府県がん対策カルテ2013

 47都道府県別に、がん対策の現況の情報を整理してまとめたものです。各都
道府県のデータをコンパクトにまとめ、見開きで一望できるようになっていま
す。

>>都道府県がん対策カルテ2013
http://ganseisaku.net/karte_2013.html


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>がん情報サービス〔9月2日更新〕
http://ganjoho.jp/public/index.html


>>北海道のがん対策情報〔9月6日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>ぎふがんねっと〔9月6日更新、岐阜県〕
http://gifugan.net/

>>しまねのがん対策〔9月6日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>平成25年度 がん征圧岡山県大会を開催しました〔9月5日更新、岡山県〕
http://www.pref.okayama.jp/page/detail-74544.html

>>福岡県地域がん登録に関する情報〔9月5日更新、福岡県〕
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/b01/chiikigan.html

>>佐賀のがん情報〔9月3日更新、佐賀県〕
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/gan/top.html

>>長野県のがん対策のページ〔9月2日更新、長野県〕
http://www.pref.nagano.lg.jp/kenko-choju/kenko/kenko/gan/taisaku/index.html


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[5] がん対策ニュース

>>がん患者に専用サロン 14日に新設、県立大船渡病院[9月7日、岩手日報]
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20130907_10

>>がん患者の不妊対策[9月5日、読売新聞]
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=83818&from=os4

>>都道府県がん拠点、放射線治療に医師専従を[9月5日、CBNews]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130905-00000010-cbn-soci

>>規制改革、診療所の開設要件など論点に-医療機関のガバナンスも[9月5日、CBNews]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130905-00000009-cbn-soci

>>昨年度の県内がん検診受診率上昇[9月4日、愛媛新聞]
http://www.ehime-np.co.jp/news/local/20130904/news20130904773.html

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip.html


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2013/09/10(第103号)

発行所	   :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人/編集長:埴岡 健一

住所	   :〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-10-101
Tel	   :03-3222-6532
Fax	   :03-3222-6535
E-mail	   :gan_newsletter@hgpi.org
Web	   :http://ganseisaku.net/
	    http://www.shimin-iryou.org/

Copyright(c) 2013 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
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