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[がん政策レター 2013/12/17(第110号)]データによって、ものごとを考えよう

配信日付:2013年12月17日


━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013/12/17(第110号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

● データによって、ものごとを考えよう

 10月22日、日本医学ジャーナリスト協会賞の授賞式が行われました。大賞3
点、特別賞1点の他に、優秀賞2点が選ばれました。そのうちの一つが、沖縄県
立八重山病院の医師、上原真人さんが書いた「八重山病院 データでムヌカンゲ
ー」(ボーダーインク発行)です。八重山毎日新聞に書いたコラムをまとめま
した。「ムヌカンゲー」は地域の言葉で「ものごとを考えること」という意味。
日本最南端・最西端の総合病院で、石垣市、竹富町、与那国町からなる人口約
5万4000人の八重山諸島の地域医療を支えています。ここでは、約60点のデー
タを考察しています。

 協会が発表した受賞理由には、「患者動向や輸血量、周辺離島からの患者の
ヘリ搬送数、ごみ処分費用などにいたる多様なデータを様々な角度から分析。
医療を丸ごと人間ドックにかけたような野心的な試みが評価されました。全国
の医療機関にも通じる重いテーマで、医療について、一人ひとりにもっとムヌ
カンゲー(物を考えて欲しい)との問題提起がされています」とあります。

 一方、東京の真ん中にある聖路加国際病院では、「Quality Indicator 2013 
聖路加国際病院の先端的取り組み [医療の質]を測り改善する」(インター
メディカ発行)を作成しています。こちらでは、約70種類のQuality Indicator
(医療の質指標、QI)を掲載し、考察しています。これまでに7年間、継続し
て行われている活動です。欧米などで行われているグローバルスタンダード
(国際標準)となりつつある手法を使い、その医療行為を行えば医療の成績が
良くなるというエビデンス(研究の結果による根拠)がある医療のプロセス(過
程)に関するデータを集めています。

 がん治療関係では、たとえば「乳房温存手術を受けた70歳未満の患者のうち、
発症後1年以内の放射線療法実施率」「Stage IIIA~IIICの大腸癌患者におけ
る補助化学療法実施率」などのQIが掲載されています。乳がんの治療ガイドラ
インでは、早期乳がん温存手術の後は放射線療法が推奨されています。この実
施率は、2007年が96.7%で11年には100%となっています。治療ガイドライン
によると、3期の大腸がんは手術後の化学療法が標準と考えられています(た
だし、主要臓器の機能が保たれていることなどが条件)。2007年の実施率は96.7%
でしたが、2011年では77.8%に下がっています。同書では、「投与されなかっ
た理由が記録されていない可能性が高い。化学療法が施行できない理由を明確
にし、それをカルテに記録することが必要」との考察を行っています。

 がん領域のQI活動としては、ASCO(米国臨床腫瘍学会)が牽引するQOPI(が
ん診療の質向上活動)が知られています。日本でも、「がん対策における管理
評価指標群の策定とその計測システムの確立に関する研究班」によってQI指標
が開発され、いくつかの施設で計測が行われています。沖縄では今年2月に、
「がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究班」によって、「がん診療の
質指標(Quality Indicator:QI) 沖縄県4施設における測定結果のフィード
バック会」が開催されました。参加した医療関係者へのアンケート(回答24人)
では、「評価を行うことは重要」(100%)、「結果を見て自分の診療が変わる」
(83%)との結果が出ていました。

 11月19日には、広島県が「広島県地域がん登録における5年相対生存率の公
表について」との発表を行いました。2006年にがんの罹患を登録された患者に
関し、5年後の生存を2012年に調べて生存率を出し、がんにかかっていない人
も含めた一般の人に対比される「相対生存率」と呼ばれる数値を算出したもの
です。2012年1月から「住民基本台帳ネットワーク」を利用した生存率調査を
始めたことによって、生存確認の精度が向上してデータの信頼性が高まったた
め、発表を開始したとのこと。

 その結果、全体の生存率は66.6%でした。26種類のがん別にも生存率が公表
されています。その詳細はウェブ上に公開されている「広島県のがん登録」に
よって見ることができます。広島県ではこのデータを活用することで、(1)
データを適切に提供し県全体の取り組みを促進させる(2)がん医療評価指標
の一つとしてがん医療水準の向上に役立てる(3)生存率の低いがんへの対策
を強化するなど、死亡の減少に取り組む--としています。

 広島県は、生存率計算の精度が高いとされる7県と比較して、広島県がもっ
とも生存率が優れているとしました。データの比較対象は「全国がん罹患モニ
タリング集計 2003-2005年生存率報告」にあるもので、宮城県65.0%、山形
県66.3%、新潟県59.3%、福井県61.1%、滋賀県60.3%、大阪府53.7%、長崎
県57.6%となっています。計測した期間が異なりますが、類似のデータとして
参考に比較しているわけです。統計的な誤差などもあるため、少しの差であれ
ば実際の差があるかどうか分かりませんが、数値の高い広島県、山形県、宮城
県などと、数値が低い大阪府、長崎県などの間には差がある可能性が高いとい
えます。がんの種類別にがんが発見されたときの進行度や生存率を比較してい
くと、死亡率が高い地域の原因が推定できるようになってくるかもしれません。

 生存率はこの中で一番低いですが、地域がん登録データをこれまでにもっと
も活用しているのは大阪府でしょう。大阪府立成人病センターがん予防情報セ
ンターが掲載するデータは豊富です。全体の生存率はもとより、医療圏別のが
ん進行度別生存率、医療機関別のがん進行度別の生存率などが閲覧できます。
このデータを患者向けサイト「大阪がんええナビ」も分かりやすいかたちで掲
載しています。例えば大腸がんにおいては、早期(限局)のがんで生存率が施
設によって85%から99%に、少し進行したがん(領域)で56%から85%に、進
行したがん(遠隔)で8%から31%に、広く分布しています。ただし、受け入
れている患者さんの年齢や合併症の有無などによって成績に差が出ている可能
性があるので、病院選択の際には背景をよく確かめる必要があります。

 12月6日に、「がん登録等の推進に関する法律」が成立しました。これによ
り、上記のようながん登録のデータが全国で活用できるようになります。また、
生存確認がより確実に行われ、県境を越えて移動する患者さんの治療結果も追
跡可能となり、精度が向上します。順調に進めば、各地域の間のデータの比較
検討ができるようになります。国での全国データの集約、生存確認、データ公
表と、地域でのデータの登録、活用などが進むことが期待されます。

 がんの現況や政策を評価するためのさまざまなデータ収集も進みつつありま
す。地域医療計画の中では、がんの現況を示す指標を収集することになってい
ます。国のがん対策推進基本計画と都道府県のがん対策推進計画では、全体目
標や個別目標に関する評価指標が収集される途上にあります。12月13日に開催
された国のがん対策推進協議会では、「がん対策に関する評価指標の検討につ
いて」が議題となり、同協議会としての評価指標収集の枠組みが示されました。

 医療改革のため、対策のPDCA(計画、実施、評価、改善)を重視する声が高
まっています。社会保障改革国民会議の報告書では、「市場の力でもなく、提
供体制側の創意工夫を阻害するおそれがある政府の力でもないものとして、デ
ータによる制御機構をもって医療ニーズと提供体制のマッチングを図るシステ
ムの確立」が、重要なこととしてあげられています。今回見てきたような、医
療のアウトカム(成果)データ(患者の生存などの状態を示すデータ)と、プ
ロセス(過程)データ(どのような医療サービスが行われているか)を組み合
わせ、患者の施設選択のためにも、地域の対策向上のためにも、利用ができる
ようになることが期待されます。

 その際、データの意味を誤解することなく、データから何の意味を見出すか、
読み解くことが何よりも大切になってくるでしょう。すなわち、データでムヌ
カンゲーする(データからものごとを考える)力が決め手です。「患者アドボ
ケートはデータでしっかりムヌカンゲー」が合言葉になってきます。数字の読
み解き方のガイドの一つとして、患者アドボカシーカレッジの第3章「政策立
案と評価のときに」も、ご活用ください。(センター長 埴岡健一)


参考サイト

>>日本医学ジャーナリスト協会賞
http://www.meja.jp/
>>聖路加国際病院 病院紹介 Quality Indicator(医療の質)
http://www.luke.or.jp/about/graph/index.html
>>米国臨床腫瘍学会(ASCO) がん診療の質向上活動(QOPI)の指標(英語)
http://qopi.asco.org/Documents/QOPI-Fall-13-Measures-Summary.pdf
>>「がん対策における管理評価指標群の策定とその計測システムの確立に関する研究班」の指標
http://qi.ncc.go.jp/index.html
>>「がんの実態把握とがん情報の発信に関する研究班」による「がん診療の質指標
(Quality Indicator:QI) 沖縄県4施設における測定結果のフィードバック会」
http://www.okican.jp/UserFiles/File/kyougikai/siryou/conf2013/1kai/no19.pdf
>>広島県のがん登録(平成22年集計)(12MB)
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/uploaded/attachment/112012.pdf
>>全国がん罹患モニタリング集計 2003-2005年生存率報告
http://ganjoho.jp/data/professional/statistics/odjrh3000000hwsa-att/mcij2003-2005_report.pdf
>>がんの診療実績(大阪府立成人病センター がん予防情報センター)
http://www.mc.pref.osaka.jp/ocr/treatment/treatment2.html
>>同・医療圏別がん患者の生存率
http://www.mc.pref.osaka.jp/ocr/images/treatment/image0022.pdf
>>施設別治療数と5年相対生存率同(例:大腸がん)
http://www.mc.pref.osaka.jp/ocr/images/treatment/image0012.pdf
>>大阪がんええナビ(大阪府がん拠点病院 診療実績)
http://www.osaka-anavi.jp/cancer/2013/10/post-226.html
>>大阪がんええナビ(施設別生存率 例:大腸がん)
http://www.osaka-anavi.jp/cancer/h2006-08daichou.pdf
>>がん登録等の推進に関する法律
http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/185/pdf/t071850111850.pdf
>>地域がん登録全国協議会
http://www.jacr.info/index.html
>>地域医療計画 がんの医療体制構築に係る現状把握のための指標例(1ページ目)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/iryou_keikaku/dl/tsuuchi_iryou_taisei2.pdf
>>がん対策推進協議会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html
>>社会保障制度改革国民会議報告書
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo.pdf
>>患者アドボカシーカレッジ
http://advocacy-college.net/


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>がん情報サービス〔12月13日更新〕
http://ganjoho.jp/public/index.html


>>しまねのがん対策〔12月16日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>北海道のがん対策情報〔12月12日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>がん情報〔12月10日更新、佐賀県〕
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/gan.html

>>がん対策推進企業等連携協定について〔募集のお知らせ〕〔12月5日更新、福岡県〕
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/b01/gankigyoukyoutei.html


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[5] がん対策ニュース

>>末期がん医療、74%が「生活優先」希望 厚労省調査[12月15日、日本経済新聞]
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG0604O_V11C13A2CR8000/

>>過剰な医療機能への転換に知事が中止要請も-医療部会、19日に意見書[12月11日、CBNews]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20131211-00000006-cbn-soci

>>世界のがん死亡者820万人 2012年、新規患者1410万人 WHO[12月13日、産経新聞]
http://sankei.jp.msn.com/life/news/131213/bdy13121308590000-n1.htm

>>小児がんなどの医療費助成 負担軽減の案[12月12日、NHK]
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131212/t10013768221000.html

>>県がん対策推進条例案 議員提案、啓発週間制定を明記 滋賀
http://sankei.jp.msn.com/region/news/131207/shg13120702160001-n1.htm

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip.html


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2013/12/17(第110号)

発行所	   :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人/編集長:埴岡 健一

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※次回(第111号)は、2014年01月07日(火)を配信予定とさせていただきます。
よろしくお願いします。

			

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