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[がん政策レター 2014/04/01(第117号)]都道府県のがん対策のPDCAサイクルを高める

配信日付:2014年04月01日


━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2014/04/01(第117号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

● 都道府県のがん対策のPDCAサイクルを高める

 3月24日、奈良県がん対策推進協議会にオブザーバー出席しました。とても
盛りだくさんの内容でした。各都道府県のがん対策推進協議会の年間開催回数
は1、2回の場合が多いでしょうが、年度の終盤に開催して当年度の振り返りと
次年度の予定を議題とするところもかなりあると思います。みなさんの地域で
はいかがですか。今日は奈良県の協議会の内容から主に医療関係分野の一部を
ご紹介します。これを機会に、みなさんの地域の協議会等の開催状況、審議事
項、会議資料などを確認し、がん対策のPDCA(計画、実行、評価、改善)サイ
クルを高めることを考えてみてはいかがでしょうか。

 「第2期奈良県がん対策推進計画 年次計画」では、がん医療11項目、緩和
ケア11項目、地域連携6項目、相談支援・情報提供12項目、就労支援5項目、が
ん登録4項目の2014年度の取り組みが記載されています。部会報告のパートで
は、それぞれの部会から2013年度の取り組みの成果と2014年度の予定が発表さ
れました。「がん医療部会」からは2013年度の6つの取り組みの成果と2014年
度の5つの予定、「緩和ケア・在宅医療部会」からは4つの成果と2つの予定、
「地域医療部会」からは4つの成果と4つの予定、「相談支援・情報提供部会」
からは6つの成果と3つの予定、が発表されました。

 興味深かったのは、病院団体・職能団体からも当年度の取り組みの結果と次
年度の予定が発表されたことです。奈良県病院協会、奈良県訪問看護ステーシ
ョン協議会、奈良県歯科医師会、奈良県薬剤師会、奈良県医師会、の5つの団
体からです。それぞれがん対策においては重要な役割を果たしていますし、県
協議会の委員も出していますので、それぞれの活動が県の計画や目標とかみ合
っていくためには、会議でこうした報告を入れることが重要だと感じました。

 がん教育に関する報告もありました。奈良県は2009年に制定した条例を2013
年に改正し、がん教育の条項を次のように加えています。「県は、児童及び生
徒ががんに関する正しい知識を持つとともに、がんの予防及び早期発見の重要
性等について理解を深めるよう、学校関係者及び保健医療関係者と連携を図り
つつ、がんに関する学習活動を推進するものとする」。これに基づいて、取り
組みも進めており、がん教育検討会議やがん教育推進ワーキングでの審議を経
て、今後のがん教育の進め方を定めました。「小中高すべてでそれぞれの発達
段階に応じたがん教育を進める」とのこと、そして、「第1段階として文部科
学省の『がんの教育総合支援事業』を活用し、中学生を対象に施行的な取り組
みを進める」としました。それを検証したうえで高校生、さらには小学生に広
めていく予定です。

 2014年度のがん対策予算の資料もありました。前年度の約3億2100万円から、
約3億3800万円へと増額されています。新規事項として、「ならのがん在宅医
療推進事業」、「奈良医療連携体制構築事業 在宅医療参入希望医師に対する
訪問同行研修等の実施」、「健康寿命を延長する取組推進モデル事業(がん検
診コール・リコール)」、「がんの教育総合支援事業」などが記載されていま
す。計画や施策に書かれたことに予算措置がされているかどうかは、重要な観
点となります。

 調査結果も報告されました。「ならのがんに関する患者意識調査」は、2013
年10月に県内41の病院で医師や看護師からがん患者1337人に調査票を配布し、
812人(60.7%)からの回答を得ました。受診病院への満足度は、「満足」が
73.4%、「不満」が2.2%でした。セカンドオピニオンについては、「必要と
思う」が52.1%、そのうち「受けたことがある」が32.2%、そのうち「良かっ
た」が91.9%でした。在宅緩和ケアについては、「知っている」が19.2%で、
そのうち「受けたいと思うし、実現可能だと思う」が23.1%、「受けたいが、
困難な気がする」が29.5%、「希望しない」が16.7%でした。相談支援につい
ては、「相談支援センターを利用したことがある」が4.2%、「患者サロンを
知っている」が19.6%でした。

 「治療と就労」についてもたくさんの設問を設けています。「現在の日本は、
がん治療を受けながら、働き続けられる環境だと思うか」に対し、「そう思う」
が25.3%、「そう思わない」が52.2%でした。がんによる就労状況の変化につ
いては、「自分から希望して変化があった人」が21.6%、「会社等の事情によ
り変化があった人」が7.0%でした。仕事の継続に関する事業主の理解・支援
については、「得られた」が74.2%、「得られなかった」が4.5%でした。仕
事を継続するために必要な対応・制度としては、35.8%が「短時間勤務への変
更」、35.1%が「年次有給休暇の時間単位での取得」、32.8%が「体調を考慮
した配置転換」をあげました(複数回答)。情報提供・相談支援に望むことに
ついては、「医療機関における相談支援体制の充実」が55.3%と多く、それに
「行政機関による相談支援体制の充実」が34.4%で続きました。患者意識調査
の詳細は、全文がウェブ掲載されていますので、そちらをご覧ください。

 がん患者の就労について、事業所への調査も行われました。1500事業所を抽
出して調査票を送付し、469事業所(31.3%)から回答を得ました。過去1年間
にがんで療養した従業員がいたのは、9.5%。「病気休職制度あり」としたの
は、正規労働者対象では61.8%、パートタイム労働者対象では30.9%でした。
同じ正規労働者対象でも、300人以上の規模の事業所の88.0%が病気休職制度
ありとしたのに対し、30人未満の事業所では33.5%に過ぎませんでした。「実
施している治療と仕事の両立支援」として多かったのは、「体調を考慮した配
置転換」(42.0%)、「職場復帰前の面談」(41.4%)でした。「休職前部署
への復帰」(9.2%)、「フレックス勤務への変更」(13.4%)などを実施し
ているところもありました。

 奈良県のがん対策全般のPDCAサイクル管理の観点から重要なのが、「第2期
奈良県がん対策推進計画 分野別施策の目標の進捗状況」という資料にある指
標セットの一覧表です。このうち、医療分野の部分を少し詳細に見てみましょ
う。タテには「がん医療」「緩和ケア」などの6つの分野が並んでおり、ヨコ
には「ストラクチャー(構造)指標(S)」「プロセス(過程)指標(P)」「ア
ウトカム(成果)指標(O-1)」「分野別最終アウトカム(成果)指標(O-2)」
の4つの欄があります。それぞれの箱におおよそ4個程度の指標が入っています。

 医療関連の下記の6分野の指標は、合計73個が設定されています。内訳は、
ストラクチャー指標(S)が14個、プロセス指標(P)が23個、アウトカム指標
(O-1)が20個、分野最終アウトカム指標(O-2)が16個、となっています。「が
ん医療」分野の最終アウトカム指標(O-2)は、「医師による診療・治療内容
に満足している人の割合」など4個。アウトカム指標(O-1)は、「診断や治療
方針について、病院で医師から受けた説明が分かった人の割合」など3個とい
った具合です。分野別に見ると次のようになっています。

がん医療:Sが3個、Pが3個、O-1が3個、O-2が4個、計13個
緩和ケア:Sが2個、Pが5個、O-1が4個、O-2が7個、計18個
地域連携:Sが3個、Pが3個、O-1が3個、O-2が1個、計10個
相談支援・情報提供:Sが3個、Pが7個、O-1が9個、O-2が2個、計21個
就労含めた社会的な問題:Sが2個、Pが4個、O-1が1個、O-2が1個、計8個
がん登録:Sが1個、Pが1個、O-1が0個、O-2が1個、計3個

 なお、指標の情報源として多いのは、先にみた患者意識調査で、P指標5個、
O-1指標18個、O-2指標14個の計37個が、ここから得られています。また、うち
就労支援のS指標2個は、先の企業職場環境調査が情報源となっています。

 奈良県の指標セットを見て感じることがいくつかあります。(1)施策の直
接の結果であるストラクチャー指標やプロセス指標よりは、患者におよぼす影
響に関するアウトカム指標が重視されていること(2)それが意識されるよう
に、表が作られていること(3)施策ごとにS、P、O指標を横に一列に並べて、
打った対策とその効果が将来的に評価しやすいように配慮していること(4)
アウトカム指標の情報源として、患者意識調査を重視しており、その結果とし
て、患者にとって成果が出ているのかというアウトカムに重みがつけらえてい
ること--などです。

 もちろん、課題も残っているでしょう。(1)地域がん登録の精度が上がり、
罹患、生存率、死亡率などの基礎が正確に把握できるようになること(2)先
にみた、県や部会の活動計画などにおいて指標セット表中にある指標と数値が
記載されるようになり、活動と目指す姿および指標が一貫性をもってつながっ
ていくこと(3)指標セット一覧表の中に該当する指標がなくても、それぞれ
の活動や事業は、各々が結果についての指標を計測し報告すること。進捗管理
指標セットの整備に伴って、奈良県のPDCAサイクルがさらに高められていくこ
とが期待されます。

 以上、たまたま出席機会をいただいた奈良県のがん対策の様子を見てきまし
た。1県だけでも、これだけ盛りだくさんのことが進展しています。きっと各
地でも、いろいろなトピックがあり、全国ではおびただしい事例の数に上るこ
とでしょう。5月16日、17日、18日の「がん政策サミット2014」で、こうした
ことが共有されることが楽しみです。

 ここで、ウェブで見つけた2つの府県のがん対策PDCA進捗管理の資料も紹介
しておきます。岡山県は、2月4日に開催された岡山県がん対策推進協議会にお
いて、「分野別施策への取組状況」で53ページにわたって詳細に2013年度の活
動実績と2014年度の活動予定を予算も含めて記載しています。「計画の数値目
標の進捗状況」では、S、P、Oを含めた指標セット表に、現在把握できる最新
数値を記入しています。大阪府は、3月24日の大阪府がん対策推進委員会で「第
2期計画の取組内容の検証・評価」という23ページにわたる資料を出していま
す。「計画での目標」に対する「平成25年度の取組」「これまでの進捗」を記
載したうえで、「課題・方向性」も示しています。

 このように積極的にPDCA意識を高めようとしているところも存在します。み
なさんの県ではどんな様子か、ぜひ一度、確認してみてください。
(センター長 埴岡 健一)

参考サイト
>>奈良県がん対策推進協議会(平成25年度)
http://www.pref.nara.jp/32938.htm
>>「ならのがんに関する患者意識調査」
http://www.pref.nara.jp/34966.htm
>>岡山県がん対策推進協議会 開催案内
http://www.pref.okayama.jp/page/detail-114822.html
>>「分野別施策への取組状況」(岡山県)
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/171654.pdf
>>「計画の数値目標の進捗状況」(岡山県の指標セット)
http://www.pref.okayama.jp/uploaded/attachment/171655.pdf
>>大阪府がん対策推進委員会の開催状況
http://www.pref.osaka.lg.jp/kenkozukuri/gan-iinkai/kaisaijokyo.html
>>「第二期大阪府がん対策推進計画取組内容の検証・評価について」
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15663/00091833/03%20gantaisaku%20siryou2-1.pdf
http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/15663/00091833/04%20gantaisaku%20siryou2-2.pdf


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>「がんネットなら」「療養ガイド」ができました!〔3月28日更新、奈良県〕
http://www.pref.nara.jp/item/118421.htm#moduleid17426

>>ぎふがんねっと〔3月27日更新、岐阜県〕
http://gifugan.net/

>>広島がんネット〔3月27日更新、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gan-net/

>>「佐賀県がんを生きる社会づくり条例(案)」についての意見募集の結果を公表します〔3月27日更新、佐賀県〕
http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/gan/_76488.html

>>北海道のがん対策情報〔3月26日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>「健康いわて21プラン(第2次)」を策定しました〔3月26日更新、岩手県〕
http://www.pref.iwate.jp/iryou/kenkou/kenkozukuri/002262.html

>>平成26年度「生命のがん教育」実施校を募集しています〔3月26日更新、京都府〕
http://www.pref.kyoto.jp/gan/news/gankyouikujiltushikoubosyu.html

>>青森県がん情報サービス〔3月25日更新、青森県〕
http://gan-info.pref.aomori.jp/public/

>>三重県がん診療連携推進病院を新たに指定しました。〔3月25日更新、三重県〕
http://www.pref.mie.lg.jp/KENKIKA/SOGOH/details/index.asp?cd=2014030288&ctr=navi&key=s01751

>>しまねのがん対策〔3月25日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>がんに関するイベントのお知らせ〔3月24日更新、千葉県〕
http://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/event/ganevent.html


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[5] がん対策ニュース

>>約2割のがん拠点病院が新要件免除対象に[3月29日、CBNews]
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/42350.html

>>県、1425人を異動 スポーツ・文化に力 女性管理職は9.7% 滋賀[3月26日、産経新聞]
http://sankei.jp.msn.com/region/news/140326/shg14032605200001-n1.htm

>>肝がん重症化減らせ ウイルス感染者に定期検診促す・・・広島[3月25日、読売新聞]
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=95375

>>肝がん死亡率、全国の1.3倍 肝炎患者の受診率向上が急務/山梨県[3月24日、山梨日日新聞]
http://www.sannichi.co.jp/local/news/2014/03/24/11.html

>>メンタル休職、42%退職 期間短く完治せぬまま[3月18日、日本経済新聞]
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDG1800V_Y4A310C1CR8000/?n_cid=TPRN0009

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip.html


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2014/04/01(第117号)

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