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[がん政策レター 2014/05/13(第120号)]都道府県のがん計画中間評価のための「指標マップ」を考える

配信日付:2014年05月13日


━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2014/05/13(第120号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

● 都道府県のがん計画中間評価のための「指標マップ」を考える

 4月23日、国の第43回「がん対策推進協議会」が開催されました。ここで、
国の「第2期がん対策推進基本計画(2012~16年度。以下、基本計画)」の中
間評価のための“評価指標セット”が、おおよそ決定されました。本年度は中
間評価の年ですので、年度内に計測と集計が進められることとなります。都道
府県の第2期がん対策推進計画(以下、県計画)の中間評価年は来年度です。
国の指標が決まったことで、都道府県の評価指標と計測方法をしっかり固めて
おく作業を行うタイミングになったと言えるでしょう。

 そのためには、国の指標セットを理解したうえで、県計画を策定した当初に
想定していた県の評価指標セット全体をいったん改善・改訂しておくことが重
要になると思われます。5月8日に開催された「沖縄県がん診療連携協議会」の
場で、評価指標セットについて解説する機会を得ました。今回のコラムでは、
国の評価指標の概要と、沖縄での発表の内容を、かいつまんでご紹介します。
指標セットの話は少しややこしいですが、県の計画とその結果の全体を左右す
ることですから、お付き合いください。このテーマに独特の用語もたくさん出
てきますが、「患者アドボカシーカレッジ」の第3章「政策立案と評価のとき
に」を併せてお読みいただくと、理解しやすいと思います。

 まず、国の評価指標セットの概要をご紹介します。国の協議会では、3つの
指標セットの検討結果の報告がありました。全体目標指標19個、分野別指標(緩
和ケア除く)91個、緩和ケア分野指標15個の、合計125個です。125個の具体的
内容は、本コラム末尾にある参考URLのウェブページを開いてご確認ください。

 全体目標の指標セットは、基本計画の全体目標である(1)がんによる死亡
者の減少(2)苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上(3)がんになっても安心
して暮らせる社会--のうち、特に(2)と(3)の評価に使われる「患者診療
体験調査(以下、患者調査)」です。「あなたは、がんによる体の痛みがあり
ますか」という設問への回答など、19個の指標が設定されました。患者調査は、
すべての都道府県がん診療連携拠点病院、国立がん研究センターの病院、各都
道府県から1つの地域がん診療連携拠点病院の計100施設において、それぞれ100
人ずつ、合計1万人が調査対象となります。目標回答数は5000人と設定されて
います。

 分野別の指標(緩和ケアを除く)は91個あります。そのうち、医療分野のも
のが60個、研究開発分野が11個、社会分野が20個です。91個のうち6個は試行
実施、9個は実施困難が予想されるとしており、それを引くと計測指標は76個
となります。指標の情報源については、91個のうち「拠点病院で化学療法オー
ダーを電子化している割合」など29個が拠点病院調査、「納得のいく治療選択
ができた患者の割合」など14個が患者調査、「標準的治療実施割合」など8個
が院内がん登録・DPCデータ・レセプトデータ、などとなっています。

 緩和ケア分野指標15個です。情報源は「がん患者のからだのつらさ」など3
個が患者調査で、「地域多職種カンファレンスの開催状況」は拠点病院調査、
などとなっています。

 このように、懸案であった国の指標セットにようやくめどが立ちました。地
域医療計画の中では、がんを含む5疾病・5事業・在宅の11領域に関して現況把
握指標を設定して、医療計画のPDCA(計画、実行、評価、改善)サイクルを回
すことになっていますが、がんに関する指標セットはその中で各段に体系的か
つ詳細となります。また、全体目標のための患者指標19個は、患者視点からが
ん対策のアウトカムを問う指標となっています。こうした指標セットによって、
がん対策のPDCA管理が大きく進展し、患者にとってのアウトカム向上にも貢献
することが期待されます。また、他の疾病や事業へのモデルの位置づけとなる
ことも期待されます。

 一方で、そのためには、これからも継続した努力が欠かせません。指標の開
発も続ける必要がありますし、今回の中間評価で計測して出てくるデータをど
う解釈し、評価し、施策の改善に結び付けるかという大きな課題も待っていま
す。都道府県では、まだアウトカムベースのPDCAサイクル管理ができる本格的
な指標セットにめどを立てているところは少ないでしょう。評価指標セットの
策定はこれからが本番と言えるのではないでしょうか。患者のアウトカムが向
上することを担保する重要な手段ですから、患者アドボケートとしてはしっか
り理解して、地域の指標セットの策定とPDCAサイクル管理にきっちり参画して
いきたいものです。

 指標セットに関して、次のような声を聞きます。
(1)指標と国や都道府県の計画との関係がマップのように図示されていると
便利(指標マップの作成)
(2)アウトカムの観点から特に重要なコア指標が示されていると、何を目指
して進めばいいか意識が高まる(コア指標の設定)
(3)患者にとって分野アウトカム目標が本当に達成に近づいているかを示す
患者視点の包括的な指標を設定することが重要(患者視点包括指標の設定)
(4)施策が動いているのに、指標がないところはどう考えればいいのか(指
標不在の項目)
(5)点を測るだけではなく、ある施策に関してやったこと(アウトプット)
とその成果(アウトカム)の一連のつながりを測らなければ、効果が検証でき
ない(アウトプットとアウトカムの連結)
(6)都道府県にとって国の評価指標セットは何を意味するのか。これから都
道府県はどうすればいいのか(県の対応の仕方)

 そこで、こうしたことを考える一助にと、5月8日の沖縄県がん診療連携協議
会にて、「県の視線からのがん対策指標セットとその活用法」という発表を行
いました。端的にいうと、国の125の指標に関して指標マップを作成し、上記
の6点を考えてみたのです。

 まず、国の基本計画にできるだけ忠実にと意識しながら、分野別に「分野ア
ウトカム」「中間アウトカム」「個別施策アウトプット」の3要素からなるロ
ジックモデル(論理構造図)を作成しました。そこに125個の指標を配置しま
した。言葉では十分に説明しにくいので、下記の参考資料のURLから「県の視
線からのがん対策指標セットとその活用法」(沖縄で使用した資料を改訂して
あります)を開いて、5~15ページ目の指標マップを閲覧してみてください。

 どの項目に配置すべきか迷う指標も多いのですが、ここでは試作版としてあ
る程度割り切った機械的な作業としました。1つの指標が複数の施策項目の評
価指標となっている場合も多いです。作業する人によってある程度、結果は異
なると思います。みなさんも一度同じように作業をしてみてください。かなり
手間がかかりますが、この作業をすることで、指標セットについてずいぶん理
解が進むような気がします。

 試行による指標の分布状況は、ご覧のとおりです。分野によっては、分野ア
ウトカムや中間アウトカムの指標が複数あるところもあれば、一つも指標がな
いところもあります。こうした指標マップを作って眺めることによって、今後
の県の指標を考える参考にできるでしょう。また、先の6つの声への示唆も見
えてきます。

 1の「指標マップの作成」について。それを実際に試行的にやってみると、
やはり全体像が可視化され、ずいぶん理解が進む感じがします。

 2の「コア指標の設定」について。上記の分野アウトカム指標と中間アウト
カム指標に分類されたものがコア指標の候補になると考えられるでしょう。こ
こから県にとって必要なものを採用し、不足しているものがあれば補えばよい
と考えられます。

 3の「患者視点包括指標」について。分野アウトカム、中間アウトカム指標
のうち、患者調査を情報源としているものが、ある程度該当するものと考えら
れます。これも県にとっての過不足を検討し、県における患者調査を設計する
とよいでしょう。

 4の「指標不在の項目」について。アウトプット指標については、もともと
国の指標プロジェクトでは、アウトカム志向のPDCA体制を作るために、アウト
カム指標を中心に探索していますので、個別施策のアウトプット指標を必ずし
も網羅する発想があるわけではありません。県においては、施策項目、予算項
目、事業項目となっているものは必ずアウトプットを計測するとしておけばい
いでしょう。一方、中間アウトカム指標については、県の重要施策に対応する
中間アウトカム項目やその指標がない場合には、できるだけ入れるようにして
おく必要があると考えられます。

 5の「アウトプットとアウトカムの連結」について。まさにPDCAサイクルの
ポイントです。たしかに、施策のアウトプット、中間アウトカム、分野アウト
カムを横並びに一貫して観測して吟味しなければ評価にはなりません。そのた
めにも、指標マップを作成することは有効ですし、県にとって中間アウトカム
指標の抜けがないか確認がカギとなります。個別の施策項目・予算項目・事業
項目においては、その直接のアウトプット指標だけでなく、必ず関連する中間
アウトカム指標を記述し、施策とアウトカムの連関を考察できる前提を整える
ようにしていく必要があります。

 6の「県の対応」について。国の指標が計測されれば、自動的に県に必要な
指標のすべてが計測されたり、県計画の評価に必要な指標データすべてが国か
ら支給されたりするわけではありません。それぞれの県がしっかり自分の県に
適した指標セット体系を形成していく必要があります。その作業は、例えば次
のような流れになるでしょう。
○国計画の指標マップを吟味する
○県の計画やアクションプランに関する指標マップを作成する
○国計画の指標マップを参考に、県計画のロジックモデルを強化する
○国の指標セットのうち県でも採用するもの、国の指標セットにはないが県で
は必要なものなどを同定していく
○県計画の中間評価のための指標セットを決定する

 上記のような指標セットの策定のみならず、実際の計測のための調査、集計、
とりまとめ、評価、改善施策の抽出などをいつだれがやるか、なども決めてお
く必要があります。特に、こうしたとりまとめをする担当を県拠点病院の中に
作ったり、その作業に必要な資源を予算化しておいたりすることも大切でしょ
う。県にとっては来年度が中間評価年ですから、そのためにはこうしたことは
年度内に決めておく必要があり、来年度予算の策定のことも考えると、まさに
今から本格的な準備が必要となってくるでしょう。なお、各県がばらばらに指
標を開発し、同じ名前でも定義や計測法が異なる指標が乱立すると、都道府県
間の比較ができなくなります。指標を共有する仕組みも欠かせないでしょう。

 指標マップづくりは、県のがん対策のPDCAサイクルに大切な作業と考えられ
ます。資料の施策マップは試作版ですので、ぜひご自分や仲間と一緒に自分た
ちの版を作ってみてください。5月16日からの「がん政策サミット2014」でも、
指標やPDCA管理の話はしばしば出てくると予想されます。その内容については、
6月にウェブサイトに掲載する予定のレポートをお読みください。
(センター長 埴岡健一)

資料
>>「県の視線からのがん対策指標セットとその活用法」(改訂版)
http://ganseisaku.net/files/magazine/140513_shihyo_set.pdf

参考URL
>>第43回がん対策推進協議会資料「策定指標の報告と測定法」
全体指標(患者診療体験調査)(24ページ)
分野別指標(緩和ケア除く)(39~42ページ)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000044635.pdf
>>緩和ケア分野指標(9ページ目、65ページ)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000044636.pdf
>>患者アドボカシーカレッジ第3章「政策立案と評価のときに」(3-1 PDCAサイクル、
3-2 政策評価、3-3 ロジックモデル、3-4 目標設定、3-5指標設定)
http://www.advocacy-college.net/


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>がん情報サービス〔5月8日更新〕
http://ganjoho.jp/public/index.html


>>広島がんネット〔5月12日更新、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gan-net/

>>しまねのがん対策〔5月12日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>北海道のがん対策情報〔5月9日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>千葉県がん登録事業について〔5月8日更新、千葉県〕
http://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/gan/touroku.html

>>がん患者の支援〔5月8日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f417303/p513312.html

>>青森県がん情報サービス〔5月1日更新、青森県〕
http://gan-info.pref.aomori.jp/public/

>>「がん」情報サイト〔5月1日更新、高知県〕
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/130401/ganjouhou-top.html

>>がんと向き合う サポートブック ながさき〔5月1日更新、長崎県〕
http://www.pref.nagasaki.jp/object/koho-object/kennohakkobutsu/142365.html


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[5] がん対策ニュース

>>社説:緩和ケア病棟 開設の動きを広げたい[5月11日、秋田魁新報]
http://www.sakigake.jp/p/akita/editorial.jsp?kc=20140511az

>>岐阜のNPO:「がんでも働ける」就労支援 ホテルと協力[5月8日、毎日新聞]
http://mainichi.jp/select/news/20140508k0000e040265000c.html

>>規制改革会議の提言 患者団体が反発[5月8日、産経新聞]
http://sankei.jp.msn.com/life/news/140508/bdy14050811000001-n1.htm

>>食道がん死者100人超 富山県内、5年連続 10日、富山で公開講座[5月8日、富山新聞]
http://www.toyama.hokkoku.co.jp/subpage/TO20140508511.htm

>>がん情報で専用サイト 予防から治療、助成制度も 千葉県が「がんなび」[5月8日、千葉日報]
http://www.chibanippo.co.jp/news/politics/192245

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip.html


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マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2014/05/13(第120号)

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