配信日付:2011年01月25日
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011/01/25(第35号) ■□ がん政策レター □■ 日本医療政策機構 市民医療協議会 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策の 好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ■今週のレター■ がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策の 好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1]センター長コラム [2]がん対策レポート [3]インフォメーション [4]がん対策トピックス [5]がん対策ニュース ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [1]センター長コラム ●新設された3つの専門委員会の議論の行方に注目 国のがん計画やがん対策を審議するがん対策推進協議会(以下、協議会)に、この ほど「緩和ケア」「小児がん」「がん研究」の3つの専門委員会が設置されました。 協議会では、2007~11年度の「がん対策推進基本計画(以下、第1期計画)」に続 く、12~16年度の「第2期がん対策推進基本計画(以下、第2期計画)」に関する検討 が始まっています。協議会本体で、「がん拠点病院」「相談支援」「がん登録」など にテーマを絞って議論する「集中審議」もスタートしています。一方、3つの専門委 員会も第2期計画の「緩和ケア」「小児がん」「がん研究」の部分の記述に使えるよ うな報告書を何らかのかたちで取りまとめるものと思われます。3つの専門委員会の 初回を傍聴してきましたので、ご紹介しましょう。 まず、緩和ケア専門委員会(委員長:江口研二氏)が1月11日の午前に開催されま した。それぞれの委員が「課題と対応策」について順に意見を述べました。特に興味 深かったのが緩和ケアに関する評価方法についての具体的提案があったことです。志 真泰夫委員は、「緩和ケアをストラクチャー(外形)、プロセス(過程)、アウトカ ム(結果)の3点から評価していくことが重要。プロセス指標としては、CES(ケア評 価尺度)が開発されており実施可能。患者調査と遺族調査の実施によって評価でき る」と述べ、資料に実際の調査票も提出しました。 同日の午後には、小児がん専門委員会(委員長:檜山英三氏)が開かれました。多 くの委員から意見が出たのが、「小児がん治療の質の向上のための施設の集約化」に ついてでした。原純一委員、堀部敬三委員からは、日本の小児がん治療施設では少な い症例数を多数の施設が分け合っている実態を示す資料が示されました。今後の審議 事項として、小児がんの診療体制(集約化の議論を含む)、患者と家族への支援(長 期フォローアップ含む)、難治性がん、ドラッグ・ラグと臨床試験体制整備、小児が ん登録--の5テーマが例示されました。 1月14日にはがん研究専門委員会(委員長:野田哲夫氏)がありました。臨床研究 を活性化するために、臨床研究と治験を一体化させた制度の導入、バイオバンク(患 者のがん細胞を収集保管する設備)の整備などを求める意見がありました。がん研究 は省庁横断的なとりまとめが重要な分野です。次回以降、厚生労働省、文部科学省、 経済産業省、内閣官房医療イノベーション推進室などからヒアリングをする予定。野 田委員長からは、「そのまま次の基本計画の草稿になるようなかたちで協議会に提出 したい」と、とりまとめ方針が示されました。 今後の3専門委員会の議論の行方が注目されます。その際、特に(1)報告書の目的と 枠組みを決めた上での審議(2)分野の数値目標、評価指標、測定方法(3)具体的優先施 策の推奨--がポイントになるでしょう。委員長のリーダーシップにも期待したいも のです。専門委員会の意見が協議会や第2期計画の中で尊重されることを見守ること も大切なことですね。 世界に目を転じると、がん対策は各国で議論されています。英国では、1月12日に 新しいがん計画「Improving Outcomes: A strategy for Cancer(アウトカムを改善 する:がん戦略)」が発表されました。英国はがんの死亡がEU(欧州連合)の中でも 高め。ここ10年ほど、計画的な取り組みと資源投入により、改善に取り組んでいま す。この計画では4年間で1000億円を投資し、2015年には現在よりがん死亡者数を年 5000人減らすとしています。目を通してみると、(1)目標が明確(2)計画で施策を選 択するためのエビデンス(根拠)整備の努力がされている(3)大規模患者調査の結 果が踏まえられている(4)計画と予算措置が結びついている(5)関連ステークホル ダーの連携がしっかりと位置付けられている(6)がんの種類ごとの戦略が練られて いる(7)政策の事前評価がしっかりとなされている--などが見てとれます。国と 環境は異なっても、日本の第2期計画策定のためのヒントも含んでいることでしょ う。 米国では、学術団体である医学研究所(IOM)が、医療・公衆衛生分野の質の高い 政策提言を行っていますが、がん領域でも、たくさんの重要なレポートを発行してい ます。たとえば、(1)「21世紀の全米がん臨床試験システム」(10年4月15日)、 (2)「患者への全人的ながんのケア」(07年10月15日)、(3)「がん患者からがんサ バイバーへ」(05年11月3日)、(4)「小児がん患者のためによりよい薬を創る」 (05年4月18日)、(5)「小児がんのサバイバーシップ」(03年8月21日)、(6) 「緩和ケアを向上させる」(03年4月4日) 計画策定の枠組み作りについては、欧米が上手いなあと感じるときがしばしばあり ます。当センターの記事「世界のがん計画」を読めば、フランス、カナダ、オースト ラリアなどの計画にも優れたところがあることが分かるでしょう。第2期計画策定時 には海外動向も十分に参考にしたいところです。(センター長 埴岡 健一) ■参考サイト >>がん対策推進協議会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html#shingi1 >>がん対策推進協議会 緩和ケア専門委員会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html#shingi2 >>がん対策推進協議会 小児がん専門委員会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html#shingi3 >>がん対策推進協議会 がん研究専門委員会 http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000008fcb.html#shingi4 >>英国のがん計画 Improving outcomes: a strategy for cancer http://www.dh.gov.uk/en/Publicationsandstatistics/Publications/PublicationsP olicyAndGuidance/DH_123371 >>米国IOMがん関係レポート集 http://www.iom.edu/Reports.aspx?Search=cancer >>UICC(国際対がん連合)「世界がん会議」参加レポート http://ganseisaku.net/impact/training/advocacy/uicc.html >>2010年度 がん対策白書 パート① 世界のがん計画 http://ganseisaku.net/practices/whitepaper/gan_world_cancer_control.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [2]がん対策レポート ●協議会の運営のあり方が焦点に 「小児がん対策」の専門委員会設置へ 第15回がん対策推進協議会が、2010年11月19日、東京都千代田区で開かれ、2012年 度から始まる第2期がん対策推進基本計画の作成の進め方について協議が行われまし た。元厚生労働大臣で参議院議員の尾辻秀久さん(国会がん患者と家族の会会長)、 衆議院議員の坂口力さんが傍聴。協議会の進め方に疑問を抱く委員が会長の垣添忠生 さん(日本対がん協会会長)の解任を求め、同協議会のあり方が改めて問われる場面 もありました。 >>第15回がん対策推進協議会レポート http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/15.html ●拠点病院の指定と機能のあり方を集中審議 第16回がん対策推進協議会が、2010年12月10日、東京都港区で開かれ、細川律夫厚 生労働大臣が就任後初めて出席。次期がん対策推進基本計画の作成に向け、まず、が ん診療連携拠点病院についてから集中審議が本格的にスタートしました。 >>第16回がん対策推進協議会レポート http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/16.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [3]インフォメーション 今回はお休みさせていただきます。 次号をお楽しみに。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [4]がん対策トピックス ●「がん部位別死亡改善率 基本計画後改善率(2006-2009年)」を掲載しました 2006年から2009年の都道府県別のがん部位別死亡改善率(11種類)を掲載しまし た。制定後改善率ではがん対策推進基本計画のベースラインとなる06年の死亡率と比 較することができ、自分が住んでいる地域の改善状況を知って、アドボカシー活動に 役立ててください。 >>がん部位別死亡改善率 基本計画後改善率(2006-2009年)胃がん (この他にも結腸がんなど10種類がございますので、あわせてご参照ください) http://ganseisaku.net/gap/data/gan/prefectures/buibetsukaizenritsu/stomach-i mprovement-kihon/ >>がん死亡改善率 基本計画後改善率(2006-2009年) http://ganseisaku.net/gap/data/gan/prefectures/kaizenritsu/establishment/ ●「都道府県別のがん対策推進計画とアクションプラン」を更新しました 都道府県別の「がん対策推進計画」と「がん対策推進計画を推進するための都道府 県の主な取組(アクションプラン)」を掲載しました。一部の県では独自性や創意工 夫が見られます。この計画からがん政策・がん対策における多数の好事例(ベストプ ラクティス)が生まれました。ご自分の住んでいる地域のがん計画やアクションプラ ンを知っていただき、アドボカシー活動に役立ててください。 >>都道府県別のがん対策推進計画とアクションプラン http://ganseisaku.net/practices/archives/plan/local/gan_keikaku.html ●がん対策関連情報 >>第17回がん対策推進協議会の開催について http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000010ufx.html >>第7回がん診療連携拠点病院の指定に関する検討会の開催について http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000010sc1.html >>「がんの統計 '10」を掲載しました。 http://ganjoho.ncc.go.jp/public/statistics/backnumber/index.html >>村上:たばこから健康を守ろう(新潟県、1月20日掲載) http://www.pref.niigata.lg.jp/murakami_kenkou/1295470818961.html >>がんサロンリーダー・サポーター養成セミナーの開催について(熊本県、1月20日 掲載) http://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/31/gansaronseminar.html >>神奈川県たばこ対策推進検討会(神奈川県、1月19日掲載) http://www.pref.kanagawa.jp/osirase/15/1383/fuzokukikan2/jyudoujorei/jyudouj orei22.html >>たばこ対策(石川県、1月19日掲載) http://www.pref.ishikawa.lg.jp/kenkou/bunen/index.html >>しまねのがん対策(島根県、1月19日更新) http://www.shimane-gan.jp/index.html >>受動喫煙防止に努めましょう(佐賀県、1月18日掲載) http://www.pref.saga.lg.jp/web/kurashi/_1019/ki-yobou-kennkou/kien-bunen.htm l >>各種がん検診受診率(平成20年度)を掲載しました。(京都府、1月17日掲載) http://www.pref.kyoto.jp/kenshin/1295228456248.html >>各種がん検診受診率(平成19年度)を掲載しました。(京都府、1月17日掲載) http://www.pref.kyoto.jp/kenshin/1295245693476.html >>がんに関するイベント情報を更新しました。(北海道、1月12日更新) http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kak/gantaisakujyouhou >>群馬県がん対策推進条例が制定されました!(群馬県、1月12日掲載) http://www.pref.gunma.jp/02/d2900002.html >>受動喫煙について(埼玉県、1月12日更新) http://www.pref.saitama.lg.jp/page/zyudoukituenn.html >>第20回茨城がん学会を開催(茨城県、1月11日掲載) http://www.pref.ibaraki.jp/topics/event/20110112_01/ >>十日町:がん相談ホットライン(無料電話相談)が働く方々のために、曜日が拡大 されています (新潟県、1月7日掲載) http://www.pref.niigata.lg.jp/tokamachi_kenkou/1294261271420.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━ [5]がん対策ニュース >>新年度から在宅医療充実へ 治療計画を統一〔朝日新聞、1月19日〕 http://mytown.asahi.com/tochigi/news.php?k_id=09000001101190001 >>適応外薬の新ルール、「有効に機能していない」〔医療介護CBニュース、1月17 日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110117-00000009-cbn-soci >>本庁舎全面禁煙 23道府県〔産経新聞、1月16日〕 http://news.goo.ne.jp/article/sankei/nation/snk20110116087.html >>がん患者 県が登録へ〔読売新聞、1月15日〕 http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/oita/news/20110115-OYT8T00027.htm >>臨床研究支援やバイオバンク構築の必要性を指摘―がん研究専門委〔医療介護CB ニュース、1月14日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110114-00000009-cbn-soci >>在宅療養支援病院「5つの指針」を決定―日慢協〔医療介護CBニュース、1月13 日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110113-00000007-cbn-soci >>民主県連がマニフェスト説明会 青森〔産経新聞、1月12日〕 http://mainichi.jp/area/aomori/news/20110112ddlk02010197000c.html >>仙台厚生病院が医学部新設を構想 医師不足解消目指す http://www.kahoku.co.jp/news/2011/01/20110112t13019.htm >>関西広域連合で救急医療どう変わる?〔朝日新聞、1月12日〕 hhttp://mytown.asahi.com/tokushima/news.php?k_id=37000001101120001 >>緩和ケア推進へ必修化や加算新設の提案も―がん対策推進協・専門委〔医療介護C Bニュース、1月11日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110111-00000009-cbn-soci >>次期基本計画策定に向け初会合-がん対策推進協・小児がん専門委〔医療介護CB ニュース、1月11日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110111-00000007-cbn-soci >>5月末までに全面禁煙 島根県庁、喫煙室を撤去〔産経新聞、1月11日〕 http://sankei.jp.msn.com/region/news/110111/smn11011102260000-n1.htm >>がん治療費「負担大」8割 本紙患者意識調査〔沖縄タイムス、1月7日〕 http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-01-07_13464/ >>在宅療養支援病院部会を設置―日慢協〔医療介護CBニュース、1月7日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110107-00000013-cbn-soci >>「実証事業」の具体案を提示―チーム医療推進協議会〔医療介護CBニュース、1 月7日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110107-00000012-cbn-soci >>10年の人口減少幅、12万人超で戦後最大-厚労省〔医療介護CBニュース、1月5 日〕 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110105-00000010-cbn-soci ※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。 http://ganseisaku.net/newsclip/ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール マガジンを配信しております。 配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。 今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策レター 2011年01月25日号(第35号) 発行所 :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター 発行人 :埴岡 健一 編集長 :湯澤 敦子 グレイス 住所 :〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町2-5-3 Tel :03-5614-7796 Fax :03-5614-7795 E-mail :gan_newsletter@healthpolicy-institute.org Web :http://ganseisaku.net/ http://www.shimin-iryou.org/ Copyright(c) 2011 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ●がん政策レターのバックナンバーは下記URLよりご覧ください。 http://ganseisaku.net/impact/mailmagazine/gan_/ ●がん政策レターを購読ご希望の方は下記URLにアクセスしてください。 https://shimin-iryou.org/plugins/cch/mailmagazine/index.html ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
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