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[がん政策レター 2011/05/31(第44号)]地域の創意工夫をみて、国の役割を考える

配信日付:2011年05月31日

━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011/05/31(第44号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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東日本大震災により被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
皆さまの安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] 新連載!注目のコンテンツ
[6] 新連載!がん対策~気になるデータ
[7] 新連載!患者さんが作る提言活動の手引き
[8] がん対策ニュース

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[1] センター長コラム

●地域の創意工夫をみて、国の役割を考える

 今回は、岡山県と埼玉県への訪問と、地域のがん対策を中心に、書こうと思い
ます。

 5月29日は、岡山市で開かれた「みんなで学ぼう がん対策」に招いて
いただきました。私が「国のがん対策推進政策と今後の動向」、島根県の患者
アドボケートである納賀良一さんが「島根県に学ぶ がんサロン」、岡山がん
患者・家族会連絡協議会の宮本絵実さんが「患者が望む岡山県がん対策」を演題に、
お話しをいたしました。

 患者関係者だけでなく、岡山県議会議員、岡山県庁職員、地元メディア記者も
参加していました。4月に施行された岡山市がん対策推進条例の制定を牽引した
岡山市議会元議員(がん経験者)の姿もありました。岡山県瀬戸内市でもがん対
策推進条例を制定する動きがあるそうです。2010年6月には岡山県がん対策推進
議員連盟ができており、岡山県における条例制定も期待されるところです。1年半
ほど前から岡山のがん対策に活気が出てきていることを知りました。

 5月21日には、埼玉県さいたま市浦和区の埼玉会館で開催された第2回埼玉県民
がんフォーラム「明日のがん医療~医療・研究・ケア・県民をつなぐ~」に呼ん
でいただき、「大丈夫?埼玉県のがん対策」という講演をいたしました。埼玉県
のがんの現況を少し調べてみて、がく然とすることがいくつかありました。まず、
ここ10年間のがん死亡者数削減が全国平均と比べてはかばかしくないこと、大腸
がん(結腸がん、直腸がん)の死亡数が多いことがあります。また、専門性の
高いがんの治療やケアに関する資格を持つ医師や看護師の数が全国に比べかなり
少ないこと。一方で、県のがん対策予算などの対応や改善策は必ずしも活発では
ないこと。そうした気になる数字が見つかります。

 なかでも、驚いたのは、高齢化の進行度が日本一であることです。2010年から
30年までの20年間に、日本の75歳以上人口は1.6倍に急増しますが、埼玉県は
2.2倍で、日本でもっとも早いスピードでの増加となります。人数でいえば
約60万人から約130万人です。さいたま市だけでも、10万人弱から20万人余りに
なります。これまで人類が経験したことのない高齢化現象ではないでしょうか。

 高齢者が増えることで、それに比例する形でがんの患者も看取りも増えること
になります。現在の埼玉県の在宅看取り率は全国平均以下です。このままでは、
病院でも在宅でも看取ってもらえない“看取り難民”が生まれる可能性も指摘
されています。埼玉県にとって喫緊の課題であると同時に、その対応力が他の県
からも、海外からも注目されることでしょう。埼玉県民がんフォーラムで危機感
と問題意識が少し共有されたようです。今後の取り組みが注目されます。

 5月23日には、厚生労働省の「医療計画の見直し等に関する検討会」が、開催
されました。現在、各都道府県は、がんを含む4疾病5事業について、2008~12年度
の5年間の地域医療計画を策定しています。13年度からの新地域医療計画の実施
に当たり、どのように計画の枠組みを改善するか方針を決めることがこの検討会
の任務となっています。この日、参考人として出席した国際医療福祉大学大学院
教授の高橋泰氏は、「二次医療圏データベースを用いてわかること」とのテーマ
でプレゼンテーションを行いました。

 高橋氏らは、二次医療圏ごとに病院ベッド数、人口数、年齢構成、医師数、
がん拠点病院の有無などを入力したデータベースを公開しています。それを分析
すると、医師数が少なくかつ高齢化増加率が高い地域などを簡単に抽出すること
ができます。高橋氏は、全国で医療体制に関してさまざまな格差があること、
そして、実態を把握したうえで地域の特性に応じた医療計画を策定することが
重要であると、主張しました。

 ぜひ、みなさんも自分の地域の状況を見てください。2013年春には、次の都道
府県地域保健医療計画と都道府県がん対策推進計画が完成していなければなりま
せん。これから1年あまりの間に議論を煮詰める必要があるのです。

 5月25日には、がん対策推進協議会が開催されました。同協議会は2007年4月に
始まりましたが、委員の任期は2年であり、今回から第3期に入りました。委員20人
のうち信任の委員が9人でした。第3期に入るにあたり、まず会長の選任が委員の
互選で行われました。門田守人氏(大阪大学理事・副学長)と嘉山孝正氏(国立
がん研究センター理事長)を推す声があり、それぞれが会長になった場合に
どのように協議会を運営するか方針を述べた後、出席委員17人により無記名投票
が行われ、14対3で門田氏が選出されました。会長から指名される副会長には、
患者関係委員である天野慎介氏が前期に引き続き就くことになりました。

 会長候補が方針を述べた後に投票で選ばれたこと、患者委員が引き続き副会長
の位置づけとなったことは、いずれも意義深いことと思われます。さらなる
活性化が必要とされてきた同協議会ですが、会長のリーダーシップが発揮され、
委員の積極性が引き出され、事務局の業務遂行意志の強化が伴うことで、活性化
する方向に向かうことが期待されます。私は協議会委員としての任期を終えまし
た。4年間委員である機会が与えられたことに感謝いたします。

 協議会の場で、新会長含め多くの委員から「患者の声を重視して運営する」と
いう発言があったことは嬉しいことです。しかし、それをどのようなプロセスで
実行するかはまだ必ずしも明らかになってはいません。今回、ご紹介した岡山県、
埼玉県だけでなく、各地で課題の発見と対処の創意工夫が始まっています。
「患者の声・現場の声・地域の声」をどう集約するか。協議会にそうした声が
集まり、そこで対策や提言や政策にかたちにどうまとめるか。そうした基本設計図
を描くことも、大切だと感じます。
                       (センター長 埴岡 健一)

##参考サイト
みんなで学ぼう がん対策
http://www.pref.okayama.jp/presssystem/detail.html?press_id=2832
岡山市がん対策推進条例
http://www.city.okayama.jp/hofuku/hokenkanri/hokenkanri_t00008.html
第2回「埼玉県民がんフォーラム」の開催について
http://www.pref.saitama.lg.jp/news/page/news110509-03.html
第4回 医療計画の見直し等に関する検討会
(資料「二次医療圏データベースを用いてわかること」入口)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001dlb2.html
二次医療圏データベースシステム ダウンロード無償
http://www.wellness.co.jp/siteoperation/msd/
第20回がん対策推進協議会
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001den5.html


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

●アンケートにご協力をお願いします

 「震災後におけるがんの療養生活について」アンケート調査を行っています。
この調査では、震災におけるがん患者さんやご家族の抱える問題点や課題を
明らかにすることを目的としています。

 震災(東日本大震災に限りません)を経験したがん患者さん・ご家族や、
がん患者さんやご家族の支援に関わられた方からのご意見をお待ちしております。
アンケートは専用ウェブページからご回答いただけます。
所要時間は約5分程度です。

締切日:6月27日(月) 16:00
内容 :震災後のがんの療養生活について困ったことやその対処法

>>アンケート「震災後におけるがんの療養生活について」のページ
http://ganseisaku.net/impact/reports/enquete.html


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[4] がん対策トピックス

>>震災によるがん診療連携拠点病院の被災状況およびがん患者受け入れ体制一覧
http://ganjoho.ncc.go.jp/public/news/2011/kyoten_taisei.html

>>第5回がん研究専門委員会開催案内
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001dgpn.html

>>第4回がん研究専門委員会開催案内
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001dggf.html

>>第20回がん対策推進協議会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001den5.html


>>平成23年度「世界禁煙デー・禁煙週間」の取組について
(愛知県、5月24日掲載)
http://www.pref.aichi.jp/0000014522.html

>>5月31日は世界禁煙デー、5月31日から6月6日は禁煙週間です!
(三重県、5月24日掲載)
http://www.pref.mie.lg.jp/TOPICS/2011050153.htm

>>十日町市・津南町地域で「禁煙・分煙宣言施設」が増えています!
(新潟県、5月20日掲載)
http://www.pref.niigata.lg.jp/tokamachi_kenkou/1274391620255.html

>>しまねのがん対策
(島根県、5月19日更新)
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>市民講座「がんと一緒に働こう」のごあんない
(群馬県、5月18日掲載)
http://www.pref.gunma.jp/02/d2900041.html

>>「新潟県がんアクションプラン」を改定しました
(新潟県、5月17日更新)
http://www.pref.niigata.lg.jp/kenko/1305406825303.html

>>健康づくり審議会委員の公募について
(兵庫県、5月17日掲載)
http://web.pref.hyogo.lg.jp/hw13/hw13_000000087.html


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[5] 新連載!注目のコンテンツ

●がんの格差を“見える化”しよう

 がん死亡率は、都道府県によって、大きな格差があります。
「がん死亡率」のページでは、格差が一目でわかるよう日本地図とグラフで
示しています。日本地図で赤く塗られた北海道・青森県・大阪府・高知県は、
全国平均よりもおよそ10ポイント高く、対策が急がれる地域といえます。

 また、がん部位別死亡率を見てみましょう。
がん死亡率は全国平均より低くても、部位別にみると平均より高い地域がある
ことがわかります。胃がん(男女)では、山形県・新潟県・愛媛県が該当します。

 ぜひ、皆さんも自分の地域で多いがんを確認してください。

>>47都道府県「がん死亡率」
http://ganseisaku.net/gap/data/gan/

>>がん部位別死亡率 胃がん(男女)2009年
http://ganseisaku.net/gap/data/gan/prefectures/buibetsu/stomach/

上記のページを開いて「がん部位別死亡率」をクリックすると、
がんの部位ごとに選択してデータを見ることができます。


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[6] 新連載!がん対策~気になるデータ

●緩和ケアについて

 このコーナーでは、がん対策に関連する気になる情報やデータをご紹介します。
今回は「緩和ケア」に注目します。

 当機構で実施したがん患者意識調査(2010年)では、緩和ケアに関する興味深い
結果がでました。アンケート回答者のうち、緩和ケアを「受けたことがない」と
回答したのは79.0%。そのうち、「受ける必要がなかった」人は57.8%、
「受けられると知らなかった」人は28.8%、「受けたくても受けられなかった」人は
9.9%でした。この結果から、緩和ケアを受けたことがない人のうち、約4割の人が
緩和ケアのニーズを持っていたものの実際には受けられなかった可能性がうかがえます。

>>患者が求めるがん対策 vol.2 ~がん患者意識調査2010年度版~
http://ganseisaku.net/impact/reports/gan_ishiki_2010.html

 いわゆるがんにおける緩和ケアとは、「がんそのものの痛みや治療による
“からだの痛み”や不安や落ち込みなどの“こころの痛み”などを和らげること」
といわれていますが、「緩和ケア」と聞いて一般的にイメージされるものは
どのようなものでしょうか。09年に内閣府が行なった「がん対策に関する世論
調査」では、緩和ケアに対するイメージを尋ねています。「終末期の患者だけを
対象とすると思っていた」と回答した人が最も多かったようです。

>>内閣府「がん対策に関する世論調査」
http://www8.cao.go.jp/survey/h21/h21-gantaisaku/index.html

 実際に提供されている緩和ケアについてはどうでしょうか。
がん診療連携拠点病院で提供されている緩和ケアについてまとめられた報告から
その一部を知ることができます。報告書には、それぞれの拠点病院の緩和ケアの
機能がレーダーチャートで表わされています。データの活用方法についての
「利用ガイド」も充実しています。

>>厚生労働省委託事業 がん医療水準の均てん化を目的として医療水準等調査事業
「がん診療連携拠点病院の緩和ケア及び相談支援センターに関する調査」
http://ganjoho.jp/professional/cancer_control/2009report.html

 緩和ケアの普及に関する研究も行われています。例えば、4つのモデル地区に
おいて緩和ケアを普及させるプロジェクト(2008年~2010年)が行われ、その
成果がまとめられています。自分の地域で活用できるノウハウやデータの情報源
となりそうです。

>>がん対策のための戦略研究『緩和ケア普及のための地域プロジェクト』
http://gankanwa.jp/index.html


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[7] 新連載!患者さんが作る提言活動の手引き

●患者の声を届ける方法を考える

 「より良い医療を受けたい」「救える命が救われるように」---。
読者の皆さんの中にも、このような想いを持たれている方が多くいらっしゃると
思います。市民医療協議会では、患者さんの立場から医療政策について提言する
ことを「アドボカシー活動」、それを実行する人のことを「患者アドボケート」
と呼んでいます。昨年12月、アドボカシー活動をしている方やこれから始める方
を対象に、「アドボカシーワークブック~患者さんが作る提言活動の手引き~」
を編纂しました。初版は、主にがん患者アドボケートの方のご協力を得て作っています。

>>患者アドボカシーワークブック ダウンロード
http://ganseisaku.net/impact/training/workbook/download.html

 患者や家族として経験したことや、患者支援活動を通して感じたことの中に、
政策課題が隠れていることがあります。「なぜ」という現状への疑問から
「こうすればより良くなる」という解決策を見出した時が、
患者アドボカシー活動の始まりではないでしょうか。それは、診察室の中でも、
医療政策が決定されるプロセスの中でも、日々起こっていることでしょう。

 アドボカシーワークブックでは、アドボカシー活動の実践に必要な「誰に
伝えるか」「どのように伝えるか」というノウハウをご紹介しています。
「アドボカシー」「マネジメント」「医療政策」の3章構成で、42テーマを掲載
した冊子のハイライトを、このコラムで毎回少しずつご紹介していきます。
(プログラム・オフィサー 沢口絵美子)


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[8] がん対策ニュース

>>被災がん患者に支援5500点 医療用かつらなど
〔河北新聞、5月23日〕
http://www.kahoku.co.jp/news/2011/05/20110523t13029.htm

>>がん死亡率ワースト脱却へ 県、検診推進へ来月協議会設立
〔秋田魁新報、5月22日〕
http://www.sakigake.jp/p/akita/news.jsp?kc=20110522d

>>「広く意見聞いて」県のがん条例、連絡会仕切り直し
〔沖縄タイムス、5月20日〕
http://www.okinawatimes.co.jp/article/2011-05-21_18103/

>>厚労省が医療・介護改革案 受診時100~200円上げ、高給会社員は保険料増
〔産経新聞、5月20日〕
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110520-00000117-san-soci

>>医療用麻薬、使い方見直し
〔産経新聞、5月20日〕
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110520/bdy11052007460000-n1.htm

>>がん患者の負担軽減、「高額療養費」拡充を検討
〔読売新聞、5月19日〕
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20110519-OYT1T00963.htm

>>がん治療方針の決定プロセス、不満足が2割-患者意識調査
〔医療介護CBニュース、5月16日〕
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110516-00000007-cbn-soci

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip/


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2011/05/31(第44号)

発行所 :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人 :埴岡 健一
編集長 :沢口 絵美子

住所 :〒103-0014 東京都中央区日本橋蛎殻町2-5-3
Tel :03-5614-7796
Fax :03-5614-7795
E-mail :gan_newsletter@hgpi.org
Web :http://ganseisaku.net/
 http://www.shimin-iryou.org/

Copyright(c) 2011 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
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