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[がん政策レター 2011/11/29(第57号)]「市民主体の医療」は、本当に広がるのか

配信日付:2011年11月29日

━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2011/11/29(第57号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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東日本大震災により被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
皆さまの安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策~気になるデータ
[6] 患者さんが作る提言活動の手引き
[7] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

●「市民主体の医療」は、本当に広がるのか

 毎年、イベントの多い秋のシーズンですが、みなさんも忙しい時期を過ごしてこられた
ことでしょう。

 9月はがん征圧月間、11月11日は介護の日でした。では、毎年、11月25日を含む1週間が
「医療安全推進週間」となっているのは、ご存じでしょうか。今年は、20日から26日でし
た。「医療の質・安全学会」の学術集会も、このタイミングに合わせて開催され、今年は、
19日と20日でした。がんの治療については、主に外科手術、化学療法、放射線療法などが
行われますが、いずれもけっして事故のリスクが低いとはいえませんから、医療安全には
関心を持っていたいものです。

 私はこの学術集会で、「医療者とマスメディアの対話~“対立”から協働へ~」という
ワークショップの座長をしました。愛育病院(東京・港区)で医療安全管理室長を務める
加部一彦さんは、医療者のコミュニケーション力の強化の重要性を指摘しました。国立が
ん研究センターがん対策情報センターの医療情報サービス研究室長である高山智子さんは、
メディアにがんのことをより理解してもらうために2007年から実行している「メディアセ
ミナー」について、その取り組みを紹介しました。日経メディカル編集委員の北澤京子さ
んは、医療に関する記事を客観的に評価しようとする試みである「メディア・ドクター」
に関して、その概要と意義を説明しました。日本経済新聞記者の前村聡さんは、『がん治
療の実力病院ランキング』を作成した経験を踏まえ、メディア各社のランキング本の動向
に触れたうえで、医療者が精度の高いデータを作りメディアが分かり易く提供する大切さ
を訴えました。医療の質に関する正しい知識を普及するため、医療者とメディアの協働作
業の芽生えがあることも分かりました。患者の立場からも注目したいものです。

 この医療の質・安全学会は、「新しい医療のかたち賞」という賞を設けています。第5
回となる今年は、患者さんの闘病記を紹介する「健康情報棚プロジェクト」、長崎市の開
業医のネットワークで在宅ケアを広めている「長崎在宅Dr.ネット」、地域住民と共に
健康意識を高める活動を行う一関市国民健康保険藤沢病院が受賞しました。闘病記といえ
ば、特にがんの領域においてたくさん書かれています。先日出席した勉強会で、『生きる
力の源に~がん闘病記の社会学』という著書を出版されたばかりの門林道子さんにお会い
しました。約550冊の闘病記を読んで、闘病記を書くことと読むことの意義を分析した大
著です。長崎市の診療所医師である白髭豊さんらの取り組みについては、10月末に名古屋
で開催された日本癌治療学会学術集会の特別企画シンポジウム「“届けがん医療 日本の
隅々まで” 地域におけるがん対策」(共同座長を市民医療協議会の山口綾香が務めまし
た)において、さまざまな角度から紹介されていたことを思い出します。地域をあげた在
宅ケアの取り組みの、ひとつのモデルとなるものといえるでしょう。

 一昨年の「あたらしい医療のかたち賞」では、「医療機関における真実説明の取り組み」
が表彰されました。医療事故が起こったときに医療機関が本当のことを誠実に話すことを
広めようという活動です。医療者と患者・医療事故被害者が共に活動しており、私も参加
しています。現在、医療機関では「真実説明指針」を策定しそれを守ろうと努力している
ところと、そうでないところが混在します。同学会は医療界の多くの職能団体や学会と共
に、「医療安全全国共同行動」という医療安全キャンペーンを実施しています。真実説明
は事故が起こった際の事後対応ですが、この共同行動は予防活動で、実施すれば事故を減
らすと分かっている「危険薬の誤投与防止」など9つの活動を広めようとするものです。9
つのひとつには、「患者・市民の医療参加」も入っています。例えば、本人確認、転倒転
落防止、薬の飲み間違い防止などにも有効と考えられるからです。患者にできることとし
て、地域の医療機関に、真実説明指針や医療安全全国共同行動の資料をプリントアウトし、
それを見せながら「この活動を実施していますか」と尋ねてみることなどが考えられます。

 11月21日には、がん対策推進協議会が開催されました。詳しくはレポートをお読みくだ
さい。同協議会から厚生労働大臣宛てにがん医療に関する診療報酬対応の強化を求める、
「平成24年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について」が出されました。こ
れは前回改定期の2009年12月4日に、各地から集まった意見をもとに出された「平成22年
度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について」に続くもので、診療報酬改定期
に同協議会として提案を出すことが恒例として定着したといえるでしょう。どれだけの項
目が実際に採用されるかが注目されます。

 ようやく、厚生労働省がん対策推進室が、「次期がん対策推進基本計画の全体構成(案)」
と「次期がん対策推進基本計画骨子(案)」を提示しました。構成としては、これまでの
患者関係者の提案や議論を受けて、新たに「医薬品・医療機器の早期発見・承認に向けた
取組」、「小児がん」、「がんの教育」、「がん患者の就労を含む社会的な問題」が、個
別分野の柱に加わりました。計画骨子は、まず、「緩和ケア」など7つの個別分野につい
て提示されました。分野別にそれぞれ「現状」「課題」「目指すべき方向」が記載されて
いますが、まだ分野別の目標については考え方や具体的指標が記載されておらず、今後し
っかりと議論が深まることが期待されます。

 一方、同日、がん対策指標についてのヒアリングが3人の専門家から行われました。参
考人の一人、東尚弘さん(東京大学医学系研究科)は「がん対策における指標の考え方」
として解説をしましたが、ここで「各種施策と対応指標の構造・過程・結果(施策特異的)
の例」との資料により、荒削りながらも分野別の目標指標の例を示しました。こうした分
野別目標についての考え方や設定についてしっかりとした議論をすることが、まさに同協
議会の最も重要な役割のひとつといえるでしょう。これまでの協議会の審議でもたびたび
指摘されましたが、現在の計画の目標は外形的な指標設定となっており、次期計画におい
てはどこまでアウトカム(成果)ベースのものにできるかが焦点となっています。それが
なければ、個別のがん対策が打たれても、それに使われる費用やみんなの労力が役に立っ
ているのかどうか、はっきりしないままになってしまいます。来年春の閣議決定に向けて、
次期計画策定に残された時間は少なくなっていますが、今回示された骨子案のなかに、ア
ウトカム指標が組み込まれ、アウトカム指標への効果を最大限に発揮するという観点から、
「目指すべき方向」の内容が記載されるようにすることがポイントとなるでしょう。

 みなさまのご協力をいただいて実施した「がんアドボカシー・アンケート」ですが、結
果レポートはもうお読みいただけたでしょうか。患者アドボケートへの社会からの期待が
数値として明らかになり、政策立案のプロセスに患者参加を進める際の説得材料にもなり
えると思います。ぜひ、読んで活用してみてください。大阪市長選挙、大阪府知事選挙で
見られたように、地域から大きな旋風が巻き起こっています。制度疲労を起こした行政機
構の改革は欠かせないでしょうし、同時に、構造改革を行っている際でも個別の疾病対策
がおろそかにならないようにすることも大切です。両面において、患者や市民の声がます
ます重視されるようになってほしいものです。
(センター長 埴岡健一)

参考サイト

>>医療の質・安全学会
http://qsh.jp/
>>医療の質・安全学会 第6回学術集会
http://www2.convention.co.jp/qsh2011/
>>国立がん研究センター メディア・セミナー
http://ganjoho.jp/public/event/2011/h23_media_seminar.html
>>メディア・ドクター研究会
http://mediadoctor.jp/menu/about.html
>>第5回 新しい医療のかたち賞
http://qshpsp.giving.officelive.com/default.aspx
>>闘病記ライブラリ(健康情報棚プロジェクト)
http://toubyoki.info/index.html
>>認定NPO法人 長崎在宅Dr.ネット
http://doctor-net.or.jp/
>>第3回「新しい医療のかたち」表彰団体
http://qshpsp.giving.officelive.com/Documents/2009新しい医療のかたち発表資料1117.pdf
>>「医療有害事象・対応指針~真実説明に基づく安全文化のために」(全国社会保険協会連合会)
http://www.zensharen.or.jp/zsr_home/risk/zsrwtgw/zsrwtgw.html
>>医療安全全国共同行動
http://kyodokodo.jp/index.html
>>第28回がん対策推進協議会レポート
http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/28.html
>>第28回がん対策推進協議会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a.html
>>「平成24年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a-att/2r9852000001vv6x.pdf
>>「次期がん対策推進基本計画の全体構成(案)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a-att/2r9852000001vv6j.pdf
>>「次期がん対策推進基本計画の骨子(案)」
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a-att/2r9852000001vv6q.pdf
>>「がん対策における指標の考え方」(東参考人資料)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a-att/2r9852000001vv5y.pdf
>>「がんアドボカシー・アンケート」結果レポート
http://ganseisaku.net/practices/whitepaper/gan_2011_advocacyenquete.1.html


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[2] がん対策レポート

●「社会的痛みの軽減」を全体目標に盛り込む方向へ

 第28回がん対策推進協議会が、11月21日、厚生労働省内で開かれ、来年度から始まる
次期計画の骨子案の一部について協議されました。がん予防・検診、就労・経済負担、
サバイバーシップについて集中審議が行われるなど、次期5カ年計画の審議は大詰めに
入っています。

>>第28回がん対策推進協議会レポート
http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/28.html

>>第28回がん対策推進協議会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001vv0a.html

>>過去のがん対策推進協議会レポート一覧
http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>「地域健康づくりシンポジウム&がん検診推進タウンミーティング」を開催します!〔11月24日更新、秋田県〕
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1321947828922/index.html

>>千葉県がん診療連携協力病院の新規指定について〔11月24日更新、千葉県〕
http://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/press/2011/kyoryokubyouin.html

>>地域・職域連携推進会議 兼 がん対策推進府民会議受診率向上対策部会の開催について〔11月24日更新、京都府〕
http://www.pref.kyoto.jp/gan/1321506158462.html

>>北海道のがん対策情報〔11月22日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>ピンクリボンかながわ2011〔11月22日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f12438/p393091.html

>>「第5回高知県がんフォーラム」開催のお知らせ〔11月21日更新、高知県〕
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/130401/ganfo-ramu.html

>>平成23年度第2回福岡県がん対策推進協議会を開催しました〔11月18日更新、福岡県〕
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/b01/h23-2gantaisakusuishinkyo.html

>>子宮がんチェックシート「ちょっと気になる、わたしの子宮」〔11月17日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f7731/

>>みやぎのがん情報ポータルサイト〔11月16日更新、宮城県〕
http://www.pref.miyagi.jp/situkan/gan-portal/top.html

>>第18回患者と家族のためのがんセミナー コミュニケーションを学ぼう〔11月16日更新、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/gan-net/event/event20111210.html


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[5] がん対策~気になるデータ

隔週で連載しています。
次号をお楽しみに。


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[6] 患者さんが作る提言活動の手引き

●アドボカシーワークブックの改訂をしています

 このコラムでは、アドボカシーワークブックの使い方を、過去13回にわたり、少しずつ
ご紹介してまいりました。全42テーマ、幅広い内容となっていますが、読んでいただけま
したでしょうか。
>>患者アドボカシーワークブック ダウンロード
http://ganseisaku.net/impact/training/workbook/download.html

 このほど、新テーマを2~3加えて増補・改訂作業を行っています。現在、国や地域のがん
対策推進協議会で話題になっているトピックスも盛り込むことができればと考えています。
また、がん政策サミット2011で参加者の皆さんにご紹介した、試作版の「ツールキット編」
も、完成版として一緒に公開できるよう、準備を進めています。年内には公開し、皆さんに
ダウンロードして読んでいただきたいと思っています。

>>がん政策サミット2011 7月17日のレポート
http://ganseisaku.net/impact/events/gan_summit/gan_summit_2011/reports/0717.html#17_link_e

 患者アドボカシーの手引きとして、2冊の冊子をまとめることができたのは、患者アドボ
ケートのみなさまにご協力の賜物です。誠にありがとうございます。今後も国と地域のがん
対策推進に向け、患者さんの声を政策に届けるお手伝いができれば幸いです。
(プログラム・オフィサー 沢口 絵美子)


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[7] がん対策ニュース

>>がん専門の医療拠点を[11月28日、朝日新聞]
http://mytown.asahi.com/akita/news.php?k_id=05000001111280004

>>子宮頸がんテーマに講演[11月27日、読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kanagawa/news/20111126-OYT8T00982.htm

>>たばこのない社会へ/永田町でフォーラム[11月25日、四国新聞]
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/locality/20111125000175

>>施設の禁煙化重点に たばこ対策検討委が骨子案、経済影響に懸念も/青森[11月25日、毎日新聞]
http://mainichi.jp/area/aomori/news/20111125ddlk02010144000c.html

>>喫煙と歯周病 発症率、吸わぬ人の3倍[11月23日、北海道新聞]
http://www.hokkaido-np.co.jp/cont/health_news_mouth/147606.html

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip/


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2011/11/29(第57号)

発行所	:日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人	:埴岡 健一
編集長	:沢口 絵美子

住所	:〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-10-101
Tel	:03-3222-6532
Fax	:03-3222-6535
E-mail	:gan_newsletter@hgpi.org
Web	:http://ganseisaku.net/
	 http://www.shimin-iryou.org/

Copyright(c) 2011 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
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