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[がん政策レター 2012/01/10(第60号)]民主主義と、“六位一体”のがん対策

配信日付:2012年01月10日

━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012/01/10(第60号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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東日本大震災により被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
皆さまの安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

●民主主義と、“六位一体”のがん対策

 新年に当たり、みなさん今年の抱負を確認されたことでしょう。私もお正月の新聞を読
んで、今年はどんな年になりそうか、少し考えてみました。そのとき感じたのは、「民主
主義とは何か」「民主主義はどうあるべきか」を問うている記事が、例年より多いのでは
ないかということでした。

 その背景には、
・東日本大震災と東電福島第1原発事故で露呈した防災やエネルギーに関する政策決定プ
  ロセスの不透明さ
・国政に関しては、日本政府や国会の運営の混迷
・地方政治においては、名古屋や大阪で進行する新しい変化の動き
・いよいよ本格化した日本の超高齢化社会と国家財政難
・インターネットを促進剤に、チュニジアなどで起こった民衆革命の潮流
・大震災復興に果たした市民やインターネットの役割
--など、さまざまな要素があるのでしょう。

 単純化すれば、ここでは、市民参加を希求する流れと、強いリーダーを望む波と、一見、
矛盾する二つの要素があるようです。そこで、新聞は改めて、民主主義のあるべき姿を問
うたのでしょう。

 市民参加は、国民の声に基づき、国民が当事者意識と責任感をもった社会を作る可能性
を高めるという利点があります。一方で、ただみんなの意見を聞くばかりとなれば、議論
が拡散し、いつまでも何も決められません。強いリーダーは、やるべき改革を断行できる
確率を上げる良さがあるでしょう。他方、実施する政策を合意するプロセスを欠けば、独
裁的なかたちに陥ってしまう恐れがあります。また、政治家が大衆に付け込んで、迎合主
義のポピュリズム(人気取り)政治に走れば、みんなに利益を配分するだけで、選択と決
断と改革ができない政府の姿になってしまうことが指摘されています。

 となると、理想は、知識をもった市民がリーダーシップと責任感をもって政策決定に参
加して、迅速に合意を形成し、決まったことが実施されていくこと。まずいのは、情報を
もたない大衆を政治家が操作して、強いリーダーとなり、勝手に自分の好きなことをどん
どんやっていくこと。--そういう風に描くこともできるでしょう。

 ここで話はがん対策に飛びます。ある国会議員と話をしていて、「がん対策は、これか
らの民主主義のモデルになるかも知れないと期待している」と聞きました。その趣旨は、
さまざまな政治のかたちの「いいとこ取り」ができるかも知れない、ということでした。

 がん対策においては、患者の声に基づいた議員立法によるがん対策基本法に基づいて、
患者・家族・遺族が参加するがん対策推進協議会という場において計画と政策選択が議論
されます。協議会では患者をはじめとしたさまざまな立場の意見や知識が集約されます。
もちろん、議論の枠組みやプロセス、議論されたことの決定や実施の度合いなど、問題点
はまだ多々あるでしょう。しかし、曲がりなりにも、「一気に広く意見を聴取して、毎年、
政府としての方針を決める」に近いかっこうにはなっているのです。また、都道府県など
地方公共団体でも、がん対策推進条例、都道府県がん対策推進協議会、都道府県がん対策
推進計画、都道府県のがん対策予算などとして、同様なかたちが整いつつあります。

 その政治家は、「がん以外のあらゆる医療分野、医療のみならずどんな分野に対しても
モデルになりえる」ともおっしゃいました。それだけに、「がん対策での“新しい民主主
義のかたち”を失敗してほしくない」との気持ちもあるでしょう。確かに、各地で高まっ
ている患者アドボケート(政策提言をする人)がリードする六位一体(患者、政治家、行
政、医療提供者、民間、メディアが協働する姿)のがん対策推進は、がん対策のみならず、
民主主義の試金石ともなる位置付けにあるのかもしれません。

 このコラムで繰り返し書いていて恐縮ですが、国のがん対策においては、第2期がん対
策推進基本計画の策定の大詰め段階となっています。都道府県のがん対策推進計画は、こ
れから1年で第2期計画を策定していくこととなります。年初に当たって今年のカレンダー
をもう一度展望すれば、次のようになるでしょう。

 環境としては、衆議院の解散と選挙がある可能性が高まってきており、政治の舞台の混
乱は続きそうですが、それだけに市民の声を届ける好機であるともいえるでしょう。
・2月ごろ 第2期がん対策推進基本計画素案の検討の山場
・6月ごろ 第2期がん対策推進基本計画の閣議決定
・夏ごろ  都道府県での第2期がん対策推進計画の審議
・秋ごろ 都道府県での第2期がん対策推進計画初年度(2013年度)の予算審議
・冬   都道府県がん対策推進協議会での第2期がん対策推進計画の策定
・4月  第2期都道府県がん対策推進計画の実施

 --みなさん、今年の年間カレンダーと活動目標をイメージされていることと思います。
その際、このたび発行いたしました「がん対策白書2011~アドボカシーに使える情報集~」
の第2章「都道府県別がん対策カルテ」を参考になさってください。都道府県のがん対策
推進協議会の2010年度の開催回数は最少0回、最大4回です。一方、患者関係委員数は最少
0人、最大5人となっています。患者関係委員が0人だったり、開催回数が0回だったりすれ
ば、“民主主義の新しいかたち”どころではありません。逆にいえば、節目となる今年、
47都道府県すべてにおいて、例えば患者関係委員が4~5人参加するがん対策推進協議会が
4~5回開催されるようになれば、この国の政策立案プロセスは確実に変わっていくかもし
れません。われわれも4月からの第2期がん政策センタープロジェクト始動に向け、何がで
きるかを考えていきたいと思います。(センター長 埴岡 健一)

参考サイト

>>「がん対策白書2011~アドボカシーに使える情報集~」
http://ganseisaku.net/practices/whitepaper/databook.html


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

●アドボカシーワークブック第2版とツールキット編を公開しました

 このたび、アドボカシーワークブック~患者さんが作る 提言活動の手引き~を増
補改訂し、第2版を公開しました。これは、患者さんの立場からアドボカシー活動を
行う皆さんが実践している活動のための知識やノウハウを一冊にまとめたものです。
第2版では最新の情報にアップデートするとともに、ドラッグ・ラグ、小児がん対策
など、注目のテーマを3つ加えました。

 また、そのツールキット編として、課題解決の手法をご紹介する冊子を公開してい
ます。ツールキット編では、課題解決のステップに応じて、複数のステークホルダー
(利害関係者)の意見を集約するのに有用なツールを7つ掲載しています。

 ぜひこの機会にお読みいただき、日頃のご活動にお役立ていただければ幸いです。

>>ダウンロードはこちら(簡単なアンケートにご協力をお願いします)
http://ganseisaku.net/impact/training/workbook/download.html


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[4] がん対策トピックス

>>北海道のがん対策情報〔12月28日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>美の国あきたネット・健康推進課がん対策室〔1月4日更新、秋田県〕
http://www.pref.akita.lg.jp/www/genre/0000000000000/1238473618657/index.html

>>がん医療〔12月27日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f300664/

>>山梨のがん情報〔1月4日更新、神奈川県〕
http://www.pref.yamanashi.jp/kenko-zsn/seizinhoken/ganjyouhou.html

>>しまねのがん対策〔1月5日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>広島がんネット〔1月5日更新、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/gan-net/index.html


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[5] がん対策ニュース

>>2月14日にオープン 産官学共同「産業科学技術センター」[1月5日、中日新聞]
http://www.chunichi.co.jp/article/aichi/20120105/CK2012010502000087.html

>>啓発行事で早期発見 大腸がん[12月31日、北国新聞]
http://www.hokkoku.co.jp/subpage/H20111231105.htm

>>緩和ケア切れ目なく 県内医師らネットワーク設立[12月31日、宮崎日日新聞]
http://www.the-miyanichi.co.jp/contents/?itemid=42926&catid=74&blogid=13

>>放射線、石綿発がん要因 道、対策条例に明記方針[12月30日、北海道新聞]
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/340664.html

>>がん死亡率、全国ワースト5位…北海道[12月30日、読売新聞]
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=52421

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip/


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2012/01/10(第60号)

発行所	   :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人/編集長:埴岡 健一

住所	   :〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-10-101
Tel	   :03-3222-6532
Fax	   :03-3222-6535
E-mail	   :gan_newsletter@hgpi.org
Web	   :http://ganseisaku.net/
	    http://www.shimin-iryou.org/

Copyright(c) 2012 日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
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