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[がん政策レター 2012/03/06(第64号)]がん計画策定のステップやプロセスを考える

配信日付:2012年03月06日

━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2012/03/06(第64号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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東日本大震災により被災された皆さまには心よりお見舞いを申し上げます。
皆さまの安全と一日も早い復興を心よりお祈り申し上げます。

[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース


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[1] センター長コラム

●がん計画策定のステップやプロセスを考える

 3月1日のがん対策推進協議会において「がん対策推進基本計画」の変更案が小宮山洋子
厚生労働大臣から諮問され、同協議会は原案のまま答申を行いました。この変更案は5月
ごろに閣議決定され、5年間(2012~16年度)の第2期がん対策推進基本計画となります。
3月2日から4月1日までパブリックコメントが募集され、意見などを表明するラストチャン
スとなります。第2期基本計画の内容については2月7日号のこのセンター長コラムなどで
もご紹介してきましたので、ご参照ください。また、重要文書ですので、まだ全文を通読
されていない方には、読まれることをお奨めします。第2期基本計画の内容についての評
価はさまざまでしょうが、いったん成立すれば都道府県など地域にとっては、がん対策を
進めるうえでの大きな環境要因のひとつとなってきますので、よく研究しておくことが大
切なのは言うまでもないことでしょう。

 国の計画の成立を受けて、今後、都道府県のがん対策推進基本計画を策定していくこと
になります。その際、第2期基本計画を読み解くために、有益であろうひとつの観点をご
紹介しておきます。それは、分野別施策と個別目標を、「施策」⇔「中間成果(アウトカ
ム)」⇔「最終成果(アウトカム)」のかたちに、いわゆる「論理モデル」として構造化
しておくことです。たとえば、緩和ケア分野を取り上げてみましょう。実際に、第2期基
本計画案の11~14ページを参照しながら、下の論理モデル(骨格を浮き彫りにするために
大幅に簡素化していることをご了承ください)を確かめてみてください。

【第2期基本計画案 緩和ケア分野の基本構造】

□最終成果:
患者と家族などががんと診断された時から身体的、精神心理的・社会的苦痛などに対して
適切に緩和ケアを受け、こうした苦痛が緩和されることを目標とする

□中間成果:
・がん診療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し、知識と技術を習得する
(5年以内)
・拠点病院を中心に緩和ケアを迅速に提供できる診療体制を整備するとともに、緩和ケア
チームや緩和ケア外来などの専門的な緩和ケアの提供体制の整備と質の向上を図る
(3年以内)

□個別対策:
1,がん診療に緩和ケアを組み入れた診療体制を整備する
2,専門的な緩和ケアへのアクセスを改善する
3,緩和ケアチームや緩和ケア外来の診療機能の向上を図る
4,切れ目のない在宅医療体制を整備する
5,薬剤の迅速・適正な使用と普及を進める
6,心のケアの専門家を育成する
7,緩和ケア研修会の質の維持向上を行う
8,実践的な緩和ケア教育プログラムを実施する
9,緩和ケアに関する普及啓発を進める

 中間成果の評価指標や数値目標などは、今後の設定が必要となります。個別施策の具体
的内容や活動結果(アウトプット)目標は、まだ詳しくは示されていません。個別対策が
どのような経路で、どの程度中間成果に結びつくのか、吟味することが重要となります。
都道府県など地域の観点からも、最終成果の目指すべき姿は共有できるものだろうと感じ
ます。中間成果については、地域によっては、足せる項目が作れるかもしれません。都道
府県としての最大の難関は、国の示した個別対策をどのように地域で実施していくのか、
その際、どのように中間成果に結びつけるのか、国の施策にないもので地域では実施しな
ければならないものは何か、といったところでしょう。なお、こうした作業には、アドボ
カシーワークブック・ツールキット編の「4,戦略設計シート」と「6,活動カード」が役立
つはずですので、ご活用ください。

 3月2日には、沖縄県がん診療連携協議会に委員として出席しました。私は、報告説明事
項のなかで、現在、第2期の都道府県がん対策推進計画策定に着手する時期になっている
ことから、「良い『県がん対策推進計画』へのヒント」と題してお話をさせていただきま
した。世界保健機関(WHO)のガイドブックにある「がん計画策定の3ステップ」をご紹介
しつつ、がん計画を作るプロセスについて少し考えてみました。また、その際に重要な、
論理モデルと指標設定のことについても、触れました。

 同連携協議会では、今回も多くの決定や報告がなされました。第2期沖縄県がん対策推
進計画に対する提案書を、がん政策部会で作成することとなりました。全部で7つある部
会の来年度(2012年度)の事業計画と予算が承認されました。各部会が論理モデル図のか
たちで事業計画を策定しています。また、それに対応した予算案も公開の席で開示され審
議されます。また部会のこれまでの活動の進捗に関する自己評価も提出されています。同
協議会は来年度は、5月、7月、9月、13年1月の4回開催と予定が決まりました。5月、7月、
9月には、県の新計画や2013年度の県がん対策予算についての検討が行われ、並行して同
連携協議会の活動のブラッシュアップも進められるものと想定されます。

 同連携協議会では、たくさんの事業や活動も進行しています。ごく一部をここにご紹介
します。相談支援部会によって、「患者必携 地域の療養情報:おきなわがんサポートハ
ンドブック 第2版(以下、患者必携・沖縄版)」が完成しました。第1版から大幅に改訂。
内容を充実させると同時に、患者さん・ご家族がいまおかれている状況に応じて、情報が
見つけられやすいように工夫がされています。また、「患者のためのチェックリスト」の
ページを加えました。これは、がんの治療過程で患者さんが考えたり、医療者に質問した
りしておいた方がいいと思われることを列挙したもので、患者さんがよりよい質の医療を
安心して受けられる一助になることを目的としています。「患者必携・沖縄版」は、県内
の新たな患者さんすべてに配布するように予算と部数が確保されています。今後、実際に
届く仕組みが構築されていくこととなります。また、患者さんに緩和ケアのことを知って
もらうために、県内すべての患者さんに4ページの緩和ケアリーフレットを配布すること
も決まりました。なお、「患者のためのチェックリスト」は、医療者が質問されたときの
心の準備ができるようにと、県内の医療者にも配布されます。

 県庁からは来年度の県がん対策予算案が説明されました。本年度と来年度を比べると、
約6億2000万円から3億8000万円への減額ですが、いくつかの特殊要因を除外すると、実質
7000万円から1億円へ約3000万円の増額とも読めます。「地域統括相談支援センター」の
予算は868万円から1300万円に増えます。「がん患者相談支援モデル事業」が新規に付き
ました。患者必携・沖縄版の印刷費用も手当てされています。「がん医療の質の評価セン
ター設置事業」として550万円が新たに用意されました。これは、「県内のがん医療の実
態を把握し、治療経過・成果を評価する『がん医療の質の向上センター』を琉球大学に設
置し、医療機関をはじめ、県民及び患者へ広く評価を公表することで、参加医療機関の自
主的な医療の質の改善を促進する」とのことです。拠点病院への補助金も少し増やされて
います。

 都道府県で良いがん計画を策定して実施していくには、1,部会などが自主的に活動のPD
CA(計画、実行、評価、改善)を担おうとする文化、2,論理モデルに基づいた計画策定、
3,評価指標の整備と合意---などが重要な要素となるでしょう。そういう意味では、沖縄
から他県が学ぶことも多いのではないかと感じました。(センター長 埴岡 健一)

参考サイト

>>がん対策推進基本計画(変更案)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000023yyd-att/2r98520000023z2w.pdf
>>「がん対策推進基本計画(案)」に対する意見の募集について
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495110426&Mode=0
>>Cancer control: Knowledge into action, Planning, WHO guide for effective programmes(英語)
http://www.who.int/cancer/publications/cancer_control_planning/en/index.html
>>アドボカシーワークブック【ツールキット編】
http://ganseisaku.net/impact/training/workbook/download.html
>>沖縄県がん診療連携協議会
http://www.okican.jp/index.jsp
>>地域の療養情報 ちむぐくる おきなわ 「おきなわがんサポートハンドブック」(第1版)
http://www.okican.jp/detail.jsp?id=21980&menuid=6375&funcid=1


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[2] がん対策レポート

 1年半以上に渡って議論されてきた次期がん対策推進基本計画(変更案)案が、3月1日
の第32回がん対策推進協議会で承認され、小宮山洋子厚生労働大臣へ答申しました。5~6
月には閣議決定される予定で、都道府県のがん対策推進計画の見直しも本格化する見通し
です。

>>第32回がん対策推進協議会レポート
http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/32.html

>>第32回がん対策推進協議会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000023yyd.html
>>過去のがん対策推進協議会レポート一覧
http://ganseisaku.net/practices/reports/domestic/gan_kyougikai/


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[3] インフォメーション

 がん政策情報センタープロジェクトは、2009年1月から2011年12月を第1期として活動し、
その総括を報告書にまとめました。

 さらに、同ページ内において、外部評価委員による評価報告書も掲載してあります。あ
わせてご覧ください

>>がん政策情報センタープロジェクト 第1期報告
http://ganseisaku.net/mission/gan_project.html



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[4] がん対策トピックス

>>がん情報サービス〔3月5日更新〕
http://ganjoho.jp/public/index.html


>>広島がんネット〔3月5日掲載、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/gan-net/index.html

>>がん対策に関するリンク集〔3月1日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kak/ganlink.htm

>>がん対策〔3月1日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/life/2/6/32/

>>子宮頸がん等ワクチン接種緊急促進事業について〔3月1日更新、徳島県〕
http://www.pref.tokushima.jp/docs/2010122700113/

>>がん対策推進企業等連携協定について〔募集のお知らせ〕〔3月1日更新、福岡県〕
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/b01/gankigyoukyoutei.html

>>しまねのがん対策〔2月29日掲載、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>「がん相談の事例集」公開しました!〔2月24日掲載、青森県〕
http://gan-info.pref.aomori.jp/sys/jirei

>>【子宮頸がん検診・乳がん検診の無料クーポン券をお持ちの方へ(お知らせ)】〔2月24日掲載、秋田県〕
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1254401409578/index.html

>>長野県のがん対策のページ〔2月24日更新、長野県〕
http://www.pref.nagano.lg.jp/eisei/hokenyob/kenzo/g_taisaku/g_taisaku.htm

>>みやぎのがん情報ポータルサイト〔2月23日掲載、宮城県〕
http://www.pref.miyagi.jp/situkan/gan-portal/top.html

>>秋田県地域がん登録の状況について〔2月22日掲載、秋田県〕
http://www.pref.akita.lg.jp/www/contents/1188873911026/index.html



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[5] がん対策ニュース

>>羽村市 '12予算案 路上喫煙など罰金 3月議会に条例案 10月から本格実施へ[3月5日、東京新聞]
http://www.tokyo-np.co.jp/article/tokyo/20120305/CK2012030502000038.html

>>喫煙率で数値目標「非常に大きい」-次期対がん計画で小宮山厚労相[3月2日、CBNews]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120302-00000001-cbn-soci

>>国がん新理事長に堀田知光氏-厚労省、独法理事長の公募結果を発表[3月2日、CBNews]
http://news.livedoor.com/article/detail/6330705/

>>死亡率が男女とも全国最少/長野県[3月2日、読売新聞]
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/nagano/news/20120302-OYT8T00012.htm

>>本県女性の死亡率ワースト2位 脳卒中、心臓病目立つ/栃木県[3月2日、下野新聞]
http://www.shimotsuke.co.jp/news/tochigi/top/news/20120301/731633

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip/


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2012/03/06(第64号)

発行所	   :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人/編集長:埴岡 健一

住所	   :〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-10-101
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Fax	   :03-3222-6535
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