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[がん政策レター 2013/02/12(第88号)]条例と計画と予算の相互作用を考える

配信日付:2013年02月12日

━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2013/02/12(第88号)
■□   がん政策レター   □■  日本医療政策機構 市民医療協議会
━━━━━━━━━━━━━━━━━━ がん政策情報センター

がん政策レターでは、各地の「がん患者アドボケート」による活動やがん対策
の好事例を紹介し、がん医療の“均てん化”を目指します。

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※ アンケートのお願い
[1] センター長コラム
[2] がん対策レポート
[3] インフォメーション
[4] がん対策トピックス
[5] がん対策ニュース

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※アンケートのお願い

 がん政策レターについて、みなさまのご意見を伺いたく、アンケートを行い
ます。ぜひご協力ください。
募集期間:2月12日(火)~2月17日(日)

>>がん政策レター・アンケート
http://ganseisaku.net/impact/mailmagazine/20130212_enquete.html


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[1] センター長コラム

●条例と計画と予算の相互作用を考える

 今年になってから、これまでの23道府県のがん対策推進条例(以下、がん条
例)を読み直し、32都道府県の第2期がん対策推進計画案(以下、第2期県がん
計画)に目を通し、また、2012年度の都道府県のがん対策予算(以下、県がん
予算)を眺めてみて、改めて認識したことがあります。条例と計画と予算に関
しての、全国での相互作用の高まりについてです。

 まず、同一県内での条例⇒計画⇒予算という波及経路があると考えられます。
第2期県がん計画の特色のひとつとして、条例制定県においては、「条例の内
容を踏まえて」といった言及があるところが多数見られました。条例の条項と
して記載されたことに対応する施策が第2期がん計画にあるかどうかは、その
県の関係者は当然意識することでしょう。また、条例や計画に記載されている
ことが具体的に個別施策として実施される際、多くの場合は予算措置が行われ
ます。条例が制定された県において、県がん予算がそれまでに比べて大幅に増
加することが多いことは、これまでによく観察されてきたことです。

 第1期県がん計画の最終年度に当たる2012年度の県がん予算については、当・
がん政策情報センターがまとめている「都道府県別のがん対策予算」コーナー
から、47都道府県分の資料を見ることができますが、北海道、秋田県、群馬県、
山梨県、京都府、大阪府、香川県などの資料に、条例への言及が見られます。

 条例から計画や予算への波及が見られるひとつの典型例が、香川県のがん教
育分野の施策です。2011年10月5日に制定された香川県がん対策推進条例の第
14条に「がん教育の推進」として「県は、学校関係者、保健医療関係者及び関
係団体と連携し、児童及び生徒が学習活動等を通じてがんに対する理解及びが
んの予防に関する知識を深めるために必要な施策を実施するよう努めるものと
する」との条項が入りました。第2期香川県がん対策推進計画案においては、
がん教育に関する個別目標に、「すべての中学校でがん教育を実施」と目標を
設定しています。

 香川県ではすでに2012年度のがん予算において、「がん教育推進事業」に450
万円を計上しています。また、県庁担当者からの自由記載欄へのコメントとし
て、「昨年(2011年)10月に策定した『香川県がん対策推進条例』に基づき、
児童生徒のがんに関する正しい知識の習得とがんに対する理解の向上を図るた
め、県内の小学生、中学生、高校生を対象とした『がん教育』を推進すること
としている。全県下で一律の教育ができるように、香川版がん教育プログラム
の開発及び教材の作成を行うこととしており、今年度中(2012年度中)の完成
を目指している」とあります。2013年度の予算措置がどうなるか、注目される
ところです。

 条例や計画と予算に関して、県と県の間の波及も大きいと考えられます。例
えば、条例におけるがん教育に関する記載について、おおよそ次のような流れ
が見られます。
・京都府(2011年3月11日制定):がんに関する教育について記載。
・香川県(2011年10月5日):がん教育の推進の条項を設定。
・山梨県(2012年3月20日):がん教育の推進の条項を設定。
・北海道(2012年3月23日):教育関係者の責務とがん教育の推進の条項を設定。
・宮崎県(2012年3月29日):がんに関する教育の推進の条項を設定。
・愛知県(2012年10月16日):児童及び生徒に対するがん教育の推進の条項を
設定。
・富山県(2012年12月11日):がんの教育の推進の条項を設定。
・和歌山県(2012年12月26日):教育関係者の役割の条項を設定。

 条例における就労支援等の位置づけについては、だいたい次のような流れが
存在します。
・鳥取県(2010年6月23日制定):事業者の責務としての就労支援、患者が不
当な扱いを受けない社会の実現、を記載。
・その後、群馬県、秋田県、京都府、大分県、香川県、山梨県、北海道が、就
労支援について記載。
・大阪府(2011年3月22日):府による就労支援と経済的負担の軽減を記載。
・富山県(2012年12月11日):基本理念の条項に、がん患者の就労などの社会
経済活動への参加を記載。
・和歌山県(2012年12月26日):患者が不当な扱いを受けない社会の実現を記
載。

 現在、第2期都道府県がん対策推進計画の策定が最終的な段階になっていま
すが、患者アドボケートや行政など多くの人が、他県の計画案も参考にしつつ
仕上げに取り組んでいるところでしょう。これまでの数年の県がん予算におい
ても、例えば、相談支援・情報提供分野での患者サロンやピア・サポートへの
支援への予算付けなどが、だんだんと多くの県へと広がってきました。

 もちろん、国の計画の都道府県への波及には大きなものがあります。例えば、
第2期がん対策推進基本計画で、個別分野として「がんの教育・普及啓発」「が
ん患者の就労支援を含めた社会的な問題」などが新しい柱として立てられたこ
とで、それにならって大多数の県が同様の個別分野を新設しています。また、
国が成人の喫煙率の数値目標を設定したことで、ほとんどの県も数値目標を設
けました。

 一方で、県の条例・計画・予算などから、国の計画への波及も生じていると
もいえます。成人喫煙率の数値目標設定、患者のピア・サポートへの支援、就
労支援、がん教育などは、第2期がん対策推進基本計画に記載されるより前に、
都道府県において条例や計画や予算に盛り込まれる事例が存在しました。この
ように、地域から国へ、国から地域へ、両方向の相互作用によって、全体の政
策レベルが高まってきているとも考えられます。

 このように見てくると、全国でがん対策に関する大きな“相互学習システム”
とでもいう仕組みが回り始めているように思えてきます。(1)地域内の条例・
計画・予算などの間(2)地域間の条例・計画・予算などの間(3)地域から国
と、国から地域への双方向--といった複合的な相互作用がダイナミックに動
いているようです。浮き彫りになってくるのは、どこかで誰かがアドボカシー
(政策提言)活動をするなどして頑張った成果が、大きな波紋として広がり、
響きあい、重層的に蓄積され、高まっていく姿です。無数の英雄の集合的な努
力の共同作品として、がん対策が進展していっているともいえます。がん政策
情報センターとしても、そうした良い循環の側面的な促進剤になれるよう、活
動を進めていくことを心掛けたいと思います。(センター長 埴岡健一)

参考サイト

>>都道府県のがん対策に関する条例
http://ganseisaku.net/practices/archives/law/gan_local.html
>>「32都道府県のがん計画素案に目を通して感じたこと(1月29日増補改訂版)」
http://ganseisaku.net/impact/mailmagazine/20130129.html
>>都道府県第2期がん計画パブリックコメント実施状況
http://ganseisaku.net/practices/archives/plan/local/public_comment
>>都道府県別のがん対策予算
http://ganseisaku.net/practices/archives/budget/gan_local/gan_torikumi.html


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[2] がん対策レポート

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[3] インフォメーション

今回はお休みさせていただきます。
次号をお楽しみに。


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[4] がん対策トピックス

>>がん情報サービス[2月1日更新]
http://ganjoho.jp/public/index.html


>>みやざきのがん情報〔2月8日更新、宮崎県〕
http://www.pref.miyazaki.lg.jp/contents/org/fukushi/kenko/cancer/index.html

>>北海道のがん対策情報〔2月7日更新、北海道〕
http://www.pref.hokkaido.lg.jp/hf/kth/kak/gantaisakujyouhou.htm

>>かながわのがん対策〔2月7日更新、神奈川県〕
http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f417303/

>>岡山県がん診療連携協議会〔2月7日更新、岡山県〕
http://www.okayama-ganshinryo.jp/

>>がん患者さんやご家族等への支援のページ〔2月5日更新、高知県〕
http://www.pref.kochi.lg.jp/soshiki/130401/ganjouhou-kannja.html

>>広島がんネット〔2月4日更新、広島県〕
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gan-net/

>>しまねのがん対策〔2月4日更新、島根県〕
http://www.shimane-gan.jp/index.html

>>千葉県がん対策推進計画について〔2月1日更新、千葉県〕
http://www.pref.chiba.lg.jp/kenzu/keikaku/kenkoufukushi/gantaisaku.html


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[5] がん対策ニュース

>>男性の喫煙率が過去最低/新潟県[1月26日、新潟日報]
http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20130126023582.html

>>切れ目ないがん医療で「群」指定へ-厚労省「がん診療提供体制」検討会
[1月25日、CBNews]
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130125-00000004-cbn-soci

>>75歳未満死亡率20%減/県、がん対策計画案/香川県[1月25日、四国新聞]
http://www.shikoku-np.co.jp/kagawa_news/administration/20130125000157

>>禁煙、まだ間に合う?40歳までなら余命正常化[1月25日、産経新聞]
http://sankei.jp.msn.com/science/news/130125/scn13012511010000-n1.htm

>>がん予防へ検診大事 中学生に健康教室 古座川・明神中/和歌山県[1月25日、
産経新聞]
http://sankei.jp.msn.com/region/news/130125/wky13012502390004-n1.htm

※がん対策関連のニュースは下記にまとめて掲載しております。
http://ganseisaku.net/newsclip/


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日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センターでは定期的にメール
マガジンを配信しております。
配信の停止をご希望の方は、下記事務局まで、連絡してください。
今後とも当機構の活動へのご支援を何とぞよろしくお願い申し上げます。

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がん政策レター 2013/02/12(第88号)

発行所	   :日本医療政策機構 市民医療協議会 がん政策情報センター
発行人/編集長:埴岡 健一

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Tel	   :03-3222-6532
Fax	   :03-3222-6535
E-mail	   :gan_newsletter@hgpi.org
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