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次期がん対策推進基本計画の全体構成に関する協議では、まず、会長代理でNPO法人グループ・ネクサス理事長の天野慎介さんが、「前回も申し上げたように、全体目標に、がん患者を社会全体で支え、がん患者が安心して暮らせる社会の構築といった項目をぜひ追加してほしい」と強調しました。前回、「がん患者が安心して暮らせる社会の構築」を盛り込む方向で議論が進み、会長でがん研究会有明病院副院長の門田守人さんも賛同していながら、今回の「全体構成案」にも盛り込まれていなかったからです。
また、次のように、生活環境、社会的な痛みまで含めて、「全人的な」がん対策の必要性を強調する声も相次ぎました。
「この5年間で全体目標の(2)の『苦痛の軽減』のとらえ方も変わってきたのではないかと思います。苦痛の軽減というと身体的、精神的苦痛と捉えられがちでしたが、社会的痛みというのが大きなポイントになってきました。苦痛の軽減のところにも全人的なという言葉を入れていただいて、全人的な点からがん対策を考えていくということが誰にでもわかるようにしていただきたいと考えています」(NPO法人ミーネット理事長・花井美紀さん)
「がん患者のニーズは変わってきています。ニーズが変わったところに合わせて全体のがん対策を構築すべきではないか」(NPO法人パンキャンジャパン理事・眞島善幸さん)
精神的苦痛対策と適応外薬ラグの解消の明記を |
分野別の施策とその成果や達成度を計るための個別目標の協議においては、天野さんが、「精神的な痛みについて記述が不十分」とし、具体的な対策を盛り込むよう求めた上で、これまでも問題になってきた適応外薬の承認ラグの問題を次のように指摘しました。「骨子案には、未承認薬については一定の内容が書かれていますが、適応外薬についての取り組みはほとんどされていない。5年後もまた計画を見直す際に、また多くの患者さんが命を削って訴えて全く変わらないということは避けなければいけません。適応外薬に対する、薬事承認と保険承認の対応についてはぜひ、入れていただきたい」。
個別施策については、各専門委員会で議論された内容の反映が少ないことに不満が噴出。さらに、次のような意見も出ています。
「就業の問題と共に忘れてほしくないのは、教育を受ける権利です。小児がん患者の場合、義務教育までは手厚くしていただけるが、高等教育が受けられないケースも多い。働く権利と同じように差別、偏見を受けることなく、普通の日常生活が送れるように基本計画に盛り込んでほしい。また、就労問題などすべてを政府、行政だけでまかなうのは無理だと思います。NPOなど民間の力を導入する方向性を打ち出したらどうか」(大阪市立総合医療センター副院長・原純一さん)。
「国民のがんに対する意識の中でも、緩和ケアに対する誤った認識をもった方が多いということもありますので、緩和ケアの課題の中に、緩和ケアに対する誤解がいまだにあるということをきちんと認めておくべき。この5年間で受け皿作りは進んできましたが、残念ながら患者・家族がアクセスできていません。確実にアクセスできる道筋を作ることを計画の中に打ち出していただきたい」(NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長・松本陽子さん)
全体構成の大幅な入れ替えはない?! |
議論が消化気味に終わった、 第29回がん対策推進協議会の様子 |
読売新聞社会保障部記者の本田麻由美さんは、全体目標が先ではないかと指摘し、その理由をこう話しました。「患者の1人として、法律を作るときに求めたのは、何も放射線療法や化学療法、緩和ケアが充実すればいいというだけではなく、その充実によって、がんの死亡率が下がる、社会的な生活が可能になる、がんで死なない、痛みのない生活が送れる、そっちが基本的な目標。そういう意味で全体目標が先ではないでしょうか」。
これに対し、健康局長の外山千也さんは、順番は変えても構わないとしながら、「がん対策基本法を策定する過程の中で、重点的に取り組むべき課題にある疼痛緩和ケアなどが議論され、国会でもそのことが前面に出ました。基本法の重要なエキスを前面に出すべきだということがあってこういう順番になった経緯があります」と発言。「よく見てみると、全体目標の後に個別目標があるほうがおさまりもいい気がします」(NPO法人周南いのちを考える会代表・前川育さん)といった意見も出て、最終的には大幅な構成の変更はない見通しです。
3時間半にわたった今回の協議会では、がん対策推進室の担当者が資料を読み上げる時間が長く、肝心の骨子案の内容に関しての議論は消化不良のまま、各委員の意見は文書で出すことに。次回12月26日の協議会では、厚生労働大臣に提出する「次期がん対策推進基本計画の全体構成及び骨子」が固まる予定ですが、本当に患者のニーズに沿った内容の新計画になるのか、注視する必要がありそうです。
(医療ライター・福島安紀)
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