1. ホーム > 
  2. 国のがん対策推進協議会レポート
  3.  > 第25回がん対策推進協議会

第25回がん対策推進協議会

  拠点病院の整備を中心とした施策が在宅緩和ケアの整備を遅らせた!?


第25回がん対策推進協議会が、9月26日、厚生労働省内で開かれ、化学療法とドラッグ・ラグについての集中審議を実施。在宅医療に関するヒアリングでは、「がん診療連携拠点病院を整備するがん対策推進計画が在宅緩和ケアの整備の遅れにつながった」と在宅緩和ケアの推進のために計画の大幅な見直しを求める意見も出ています。

  「ドラッグ・ラグ解消をがん対策推進基本計画の重点的取り組みの対象施策にしてほしい」


 第25回がん対策推進協議会では、患者関係委員有志とがん患者団体有志が、「ドラッグ・ラグ問題解決に向けての意見書」を提出。具体的対策として次の4点の実現を提言しました。

 (1)「未承認薬」と「適応外薬」の問題を整理し、それぞれへの対策を検討
 (2)がん対策推進協議会としてドラッグ・ラグ、特に「適応外薬」問題解消に向けて関連する審議会、協議会などに意見を提出すること
 (3)「適応外薬」問題の解消には学会などと協力し、明確なルールのもとでの保険適用拡大に関して具体的なプロセスを検討すること
 (4)他に治療選択肢のない患者に未承認薬を例外的措置として提供するコンパッショネートユース制度を確立すること――。

 こういった要望を受け、来年度から始まる次期がん対策推進基本計画では、これまで「放射線療法及び化学療法の推進並びに医療従事者の育成」の中に盛り込まれていた「ドラッグ・ラグ解消」を独立した項目として扱うことが決定しました。

第25回がん対策推進協議会会場の様子
 ただ、ドラッグ・ラグに関しては、厚労省大臣官房審議官(がん対策、国際保健、医政担当)の麦谷眞里さんが、次のような見解を示し、場内が騒然とする場面がありました。

「承認(未承認薬)のラグ、適応外使用のラグといった2つのドラッグ・ラグがある。承認のラグはすでにほとんどない。特例承認制度が平成18年(2006年)にできて、行政制度的にはこれ以上できない。適応外使用のときに保険からお支払われない、マネー・ラグが問題であり、保険で払ってもいいというということを担保する仕組みについて協議会で決めてもらったほうがいい」

 この承認のラグがないとの見解に対し、患者関係委員から次のような意見が出ました。

 「最初の計画(がん対策推進基本計画)では、ドラッグ・ラグが0年になることを目標にしており努力は継続して欲しい」(NPO法人パンキャンジャパン・眞島喜幸さん)

 「審査ラグは縮まっているけれども申請ラグは開いている。申請ラグがなぜ開いているかというと、日本が国際共同臨床試験から外されているという事実があるからだ。結局、それは患者さんの不利益につながっている。その問題もしっかり協議会として認識していかないと、未承認薬の問題は解決には向かわない」(NPO法人グループ・ネクサス理事長・天野慎介さん)

 患者関係委員らはこのように、未承認薬の解決に対して、さらなる努力を求めました。“適応外使用のときに保険で支払うことを担保する仕組み”について、今後どのように検討されるのかも注目されます。

  在宅緩和ケア専門診療所を基軸にしたシステム構築を


 この日の協議会では、在宅医療とチーム医療に関するヒアリングが行われました。

 「がん対策推進計画の中で、拠点病院中心の施策があまりにも厚く進んでいったために、在宅の整備が非常に遅れた。このことは、がんの終末期の患者さんの病院回帰の道筋を強化してしまっている。拠点病院中心の緩和ケアパスは何かあったら病院に戻るという道筋で、在宅で療養するという希望をかなえるという道筋がない」

 千葉市のさくさべ坂通り診療所院長、大岩孝司さんは、現状のがん対策推進基本計画の問題点を示し、次のように提案しました。

 「何らかのインセンティブをつけて、かかりつけ医と在宅緩和ケア専門診療所との診診連携を進め、それを拠点病院など、中核となる病院が支える概念が必要。」

 また、総合病院山口赤十字病院副院長、医療社会事業部長の末永和之さんは、日本ホスピス緩和ケア協会調査報告から在宅緩和ケアを行う医師、訪問看護師、ケアマネジャー、薬剤師の声を集約し、主に、次のような施策を求めました。

 「がんの末期患者が直前まで自立で、サービスの利用が必要になったときに要介護認定や要介護度の再審査を申請していたのでは間に合わないことから、がん末期患者は、要介護2以上の認定を原則としてほしい。また、年齢制限を取り払い、40歳未満のがん患者さんも介護保険のサービスが使えるようにすべき。家族の安心のためには、夜間の休日オンコール対応可能な介護福祉士・ホームヘルパー制度の新設、がん末期患者に対応できるショートステイや小規模多機能施設も必要です。病院での外来化学療法が進歩してきており、治療中に在宅の情報が届かなければ、病院で亡くなるということになる。がん治療中からかかりつけ医との連携を強めるべき」

 末期がん患者の介護保険認定に関しては、2010年4月、厚生労働省が、各都道府県と各市町村の介護保険担当課に介護保険認定の迅速化を求める通知を出しています。これに対し、末永さんは、「介護認定は早くなっていると思うが、地域差がある」との認識を示しました。

 「地域によって通達が十分反映されていないところがあると聞いています。医療と介護の一体化という面においてもがん患者の支援がまだまだ不十分な面がある。その辺りは、制度改正が必要な部分ではないか」(天野さん)と、患者の立場からがん患者の在宅緩和ケア医療の充実に向けて、制度改正を求める声も上がっています。

 一方、在宅緩和医療の評価指標をどうするかについては、かねてから議論のあったところで、NPO法人ミーネット理事長の花井美紀さんは、こう指摘しています。「在宅緩和ケアの受け手側の声、ニーズ、満足度を聞く工夫をしていかないと、患者・家族にとってよりよい在宅緩和ケアの質の向上に結び付いていかないのではないか」

 次回は10月20日、在宅医療・チーム医療についての集中審議、がん登録に関するヒアリングを実施する予定です。
(医療ライター・福島安紀)

関連サイト





(更新日付:2011年10月11日)

このページの先頭へ戻る