1. ホーム > 
  2. 国のがん対策推進協議会レポート
  3.  > 第24回がん対策推進協議会

第24回がん対策推進協議会

  ドラッグ・ラグのヒアリングで、協議会への不満噴出


第36回がん対策推進協議会が、11月6日、厚生労働省内で開かれ、がん計画の中間評価の指標、相談支援について、意見聴取と議論を行いました。中間評価に関しては、患者満足度調査の実施を求める意見が出ています。

 第24回がん対策推進協議会では、前回、専門家から示された深刻な外科医不足の現状と、それによる手術の待機時間の延長といった問題点に対し、活発に議論を展開しました。

 「外科医だけではなく、麻酔科医、手術中の迅速診断に欠かせない病理医といった周辺の医師も不足している。その点の改善も意見の中に取り入れていただきたい」(パリアンクリニック川添院長・川越厚さん)

 「外科診療以外の業務が多い日本の外科医療のあり方自体を見直す必要があるのではないか」(大阪市立総合医療センター副院長・原純一さん)

 「外科医の不足は憂慮すべきだが、具体的にどのくらい必要なのかということを医療界から示すことが重要。医学教育制度を俯瞰して、偏在をどうするか考える必要があると協議会として打ち出していくべき」(読売新聞社会保障部記者・本田麻由美さん)

 「医師の専門性の偏在化を防ぐために、日本における適正な専門医数の検討、彼らを教育するに適した研修施設とプログラムの認定を行う第三者機関が必要」。福岡大学医学部腫瘍・血液・感染症内科教授の田村和夫さんは、そう強調し、日本専門医制評価・認定機構が新たな専門医制度の確立に向けて始動しはじめていることを紹介しました。

 ただ、専門医の適正人数を決めることには、反対意見もあり、協議会としてどういう方針を打ち出すのか今後議論することになっています。

  放射線治療、化学療法の格差をなくすには


 放射線療法に関しては、放射線療法が手術と同等の治療成績をあげているがん種に対しても、治療医の不足などの理由から放射線療法という選択肢が示されていない点が問題に。NPO法人パンキャンジャパン理事の眞島喜幸さんは、「患者さんからしてみれば、治療の選択肢がきちんと示されることが大事。キャンサーボード※が本当に機能すれば、放射線治療も含めた選択肢がきちんと提示されるはずだが、きちんと提示されたという患者さんに会ったことがない。その辺りも問題ではないか」と指摘しています。

※手術や放射線療法、化学療法に携わる専門的な知識や技能を持つ医師や、その他の専門医師、医療スタッフ等が集まって、がん患者の症状や状態及、治療方針について意見交換・情報共有などをするための検討会のことをいう。

 また、化学療法については、同協議会会長代理でNPO法人グループ・ネクサス理事長の天野慎介さんが、「施設間格差、地域間格差があり、がん対策基本法の制定から5年経っても、標準治療が行われていないところがある」と発言。国立がん研究センター理事長の嘉山孝正さんは、化学療法専門の腫瘍内科医が不足している問題について、「文部科学省が専任の教授を置けるようにきちんと予算をつけて、大学に放射線治療部、化学療法部といった講座を作れば人材も養成される」とし、文部科学省に予算化を要望しました。同省医学教育課の担当者は、今年度で終了する「がんプロフェッショナル養成プラン」(以下、がんプロ)を今後も継続する方針を示した上で、「がんプロの継続も新たな講座の設置も予算がどれだけ取れるかにかかっているので、先生方にも協力していただきたい」と回答しています。

  ドラッグ・ラグ解消へ当事者目線の計画を


 今回は、化学療法・ドラッグラグについての意見聴取が行われ、5人が参考人として意見を述べました。患者団体などが長年改善を求めながらも、なかなか解消しないのがドラッグ・ラグの問題です。

 「がん対策推進協議会には、他人任せの誰がやるか分からないような提言ではなく、ドラッグ・ラグの解消のためにどうするべきか、どうしてほしいか、当事者目線の計画を出してほしい。国のがん対策を取りまとめる当事者として、薬事承認、医薬品に関連する国の会議にどんどん意見を出してほしいと思っています。適応外薬の問題についてはがんにおいて顕著であり、この協議会が意見を出さなければどうにもならない。今後5年間の計画がさらに患者さんを絶望に追いやらないように願っています」

参考人として意見を述べた片木さん
参考人として意見を述べた片木さん
 参考人として発言した卵巣がん体験者の会スマイリー代表の片木美穂さんは、具体的な事例を挙げながら、あるがん種では承認されていながらほかのがん種の治療には使えない適応外薬の問題を指摘し、次期計画にドラッグ・ラグ解消につながる施策を盛り込むように訴えました。さらに、化学療法による吐き気を抑える効果のある制吐剤やがん化学療法に伴う貧血を適応症とする薬剤といった副作用対策薬の未承認問題の早期解決を求めています。

 適応外薬の問題については、同じく参考人として参加した国立病院機構名古屋医療センター院長の堀田知光さんが、「日本では薬事承認が保険償還の大前提になっているが、海外では保険診療下で適応外使用が可能な仕組みがある。私見だが、標準治療に近いものについては、学会などの協力を得ている透明性の高い審査機関に保険償還の判断を委ねる仕組みが必要ではないか」などと提言。「仕組みを変えないと、今後もドラッグ・ラグは発生し続ける」と強調しました。

 その他、この日は、2012年度予算要求に関する意見書や、がん教育、小児がん専門委員会報告書、緩和ケア専門委員会報告書――に対する委員からの意見の取りまとめが行われています。化学療法とドラッグ・ラグについては、9月26日の次回協議会で集中審議が予定されています。同協議会が、患者目線で、次期がん対策推進基本計画骨子案に、どこまで踏み込んだ目標と施策を入れられるか注目されます。
(医療ライター・福島安紀)

関連サイト







(更新日付:2011年09月16日)

このページの先頭へ戻る