平成24年度「がん対策予算」の概算要求へ、議論大詰め |
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平成24年度予算への提言を議論、次回までにとりまとめ |
この日は、開会の前に、第1期がん対策推進協議会の患者関係委員を務めた富樫美佐子さんの逝去の報に接し、委員・傍聴者全員で黙とうが行われました。
「がん対策予算については、概算要求までの時間が差し迫っていることから、最初に話し合いたい」
会長である門田守人さん(国立大学法人大阪大学理事・副学長)は、冒頭でこう話し、来年度予算については限られた時間の中で優先的な課題を絞りこんで検討する必要があることを強調しました。事前に委員から集めた意見をもとに、平成24年度予算要求等に関する意見の一覧が示され、予算に直接関係のある事項について検討が行われました。
また、嘉山孝正さん(国立がん研究センター理事長)からは「がん対策を推進するための平成24年度予算概算要求に係る提案」が示され、主に予算に直接影響する事項について提案が行われました。
門田会長は、協議会で意見を聞くと、予算に直接関係する問題と、そうでない問題とが混在してしまい、議論が拡散してしまいがちであることから、ひとまず、会長が預かるとして、次回までに提案内容を確定することで合意しました。
がん教育のあり方について検討 |
また、この日は文部科学省の担当者より、小学校・中学校・高校課程における学習指導要領の中の、がん教育の現況について説明がありました。
文科省によると、保健の授業時間の中で、がんに特化して割り当てられる教育時間はごくわずかで、学校側が自主的に取り組むことのできる範囲で工夫をしているのが現状だとしました。全国一律で、がん教育の時間を設けることとするには、おおむね10年単位で行っている学習指導要領の改訂や、学習時間数の変更のタイミングで盛り込むことが必要との見解です。
これに対し、松本陽子さん(NPO法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長)は、委員およびがん患者団体有志7人連名の意見書を示し、若年層に“いのち”について考えるきっかけとなってほしいと述べました。また、2010年に厚労省が作った「薬害って何だろう?」という副読本の事例を示しました。松本さんは「この短期間でまとめられた副読本という好事例を参考にすれば、制度等の変更を待たなくとも若年層へのがん教育を強化できるのではないでしょうか」と話し、早急な対応を提案しました。
がん研究分野の提言、患者にも分かりやすい内容へ |
この日は、各専門委員会からこれまでの議論の経過について報告が行われました。がん研究専門委員会からは8回におよぶ討議の結果として、次期がん対策推進基本計画のがん研究部分の骨子にあたる資料が提示されました。分野設定は、(1)基礎研究・橋渡し研究(トランスレーショナル・リサーチ)(2)臨床研究(3)医療機器の開発研究(4)公衆衛生研究と政策研究(5)その他、全般的な課題と対策について--の5つ。
これに対し、委員からはがん研究の全体像を把握し、詳細な論点に踏み込んだことを評価する発言がありました。一方で、さらに患者目線でわかりやすい記述をすべきという指摘がありました。がん研究専門委員会の委員長を務める野田哲生さん(がん研究会がん研究所所長)は、患者関係委員の意見を踏まえ、一般の人からもわかりやすい記載に努めることを約束しました。
また、天野慎介さん(NPO法人グループ・ネクサス理事長)は、委員およびがん患者団体有志7人連名の「ドラッグ・ラグの解消に関する意見書」を示し、次期がん対策推進基本計画における重点項目に盛り込むよう、要望しました。
さらに、前回に引き続いて議論されている「がん患者に対する支援や情報提供の今後のあり方等について(案)」は、新委員からの意見を反映したものが提示されました。この日は、患者への相談・支援体制の充実はがん医療においてはもちろん、がん以外での疾患においても必要だという方向で、大筋で合意しました。一方で、地域統括相談支援センターのあり方等については、実効性のあるものとできるかといった意見もあり、もう一度内容について確認を行うこととなりました。
(がん政策情報センター 沢口絵美子)
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