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第21回がん対策推進協議会

  次期がん計画策定へ向け、現段階の進捗状況を報告


第21回がん対策推進協議会が、6月29日、東京都千代田区で開かれ、門田守人新会長の下、次期がん対策推進基本計画(以下、基本計画)の策定に向けた話し合いがスタート。2007年度から始まった現在の基本計画の進捗状況の確認や、前回までの協議会や専門委員会の報告が行われました。


  患者の満足度向上に結び付く、新たな評価指標づくりが課題


 「次のがん対策推進基本計画は来年4月には閣議決定されることになっており、それまでタイトなスケジュールになっています」

 がん対策推進協議会会長で大阪大学理事・副学長の門田守人さんは、改めて、がん対策の新たな5カ年計画である次期基本計画策定までのスケジュール案を示しました。それによると、次回の協議会では各専門委員会の報告と予算要求重点項目提案、次々回以降にがん医療、予防、早期発見、がん登録、がん対策指標などについて、集中審議が行われることになっています。

第21回がん対策推進協議会会場の様子
 会長代理でグループ・ネクサス理事長の天野慎介さんは、これに先立ち、次のように要請しました。

 「がん対策の指標については、昨年度のがん対策推進協議会の中でも繰り返し意見が出てきましたが、その都度、厚生労働科学研究の中でふさわしい指標がない、あるいは限られていると繰り返されてきました。この点については、集中審議の前に、事務局から現在どのような指標があり得るのか情報提供してほしい。来年度の診療報酬改定について、何らかの要望を出す予定はあるのでしょうか」

 これに対し、診療報酬改定について審議する中央社会保険医療協議会(中医協)の委員を務める国立がん研究センター理事長の嘉山孝正さんは、こう応じています。「私は、中医協の診療側の委員ですが国民の目線でやってきたつもりです。一番大事なのは現場の声です。この会で意見をまとめていただければ、その意見を診療報酬改定の議論に反映させるよう尽力したい」。また、協議会としても、診療報酬改定への提言内容をとりまとめる方針が合意されました。

  現目標は達成しつつあるが、患者の視点での指標開発は先送り


 現在の基本計画の進捗状況は中間報告書でも公表されていますが、改めて、全体目標と個別目標の達成度の最新データが発表されました。10年以内に達成を目指す全体目標の一つ、「がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)」については、2009年84.4で、ベースライン(05年)の92.4より8ポイント減少し、このままなら目標を達成できる見通しです。

 しかし、委員からは「がん検診受診率があまり上がっていない中で、20%減少ラインに乗っているということは、全体目標がこの数字でよいのか」(読売新聞社会保障部記者・本田麻由美さん)といった指摘も出ており、数値の見直しが必要になりそうです。また、もう一つの全体目標の「全てのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の向上」に関しては、未だに進捗状況の報告が、「厚生労働省研究において、がん患者ががん医療を患者の視点で評価する指標を開発」と記載するにとどまっています。

 一方、7つの個別目標のうち、在宅医療については、がん患者の在宅看取り率が、09年7.4%と05年の5.7%より若干増えています。ただ、これに関しても、「在宅医療の推進は患者の在宅死が目的ではない」として、在宅看取り率以外に「在宅医療の質や在宅医療への連携等を評価できる指標」が、中間報告の段階でも求められていながら、その後、指標づくりは進んでいないのが実情です。

  次期計画では患者の社会的痛みの軽減を


 現計画の問題点を踏まえて、質の面で患者・家族が満足できる医療、療養環境をどう整えられるか、そのために必要な評価尺度をどこまで取り入れられるか、が次期計画策定の焦点です。今回の協議会では、新指標や新たな課題として、主に、次のような提案が出ました。

 「緩和ケアや放射線治療を含めて患者さんが適切な医療を受けるためには、外科だけではなく、内科、放射線科、薬剤師など多業種が集まって治療方針を決めるチューマー(腫瘍)ボード(キャンサーボード)をどのくらいやっているか分かるようにしたほうがよいのではないか」(嘉山さん)

 「ガイドラインの作成頻度も重要です。新しい治療薬がどんどん出てくるなか、アメリカのNCCI(National Cancer Control Initiative)の診療ガイドラインは毎年更新されています。それによって患者が受ける恩恵も大きい。可能であれば、ガイドラインの見直しが3年に1度でいいのかという点も含めて検討する必要がある」(パンキャンジャパン理事・眞島喜幸さん)

 こういった要望に対し、会長の門田さんは、「数値目標を並べるだけで、内容はどうなっているのかという見方が前回の計画作成のときには強調されていなかったので、今後検討していきたい」と、従来の数値目標とは違った視点で、質の評価指標も入れて行く方針を示しました。

 さらに、天野さんは、「経済支援、就労支援、子育て支援といった社会的痛みについて現計画では抜け落ちていました。次期計画には、そうした社会的痛みの軽減策も必ず入れてほしい」と提案しました。

 今回、愛媛がんサポートおれんじの会理事長の松本陽子さんは、「2010年度がん対策評価・分析事業報告書(あなたの思いを聞かせてください!がん対策に関するアンケート調査)」を松本委員提出資料として示しました。この報告書は、厚生労働省の委託研究を日本医療政策機構が実施し、2010年12月、全国のがん診療連携拠点病院に外来通院中または入院中のがん患者・家族を対象に、「がん対策推進基本計画中間報告書」の施策に対しアンケート調査を行った結果です。松本さんは、「これには、がん対策の受け手である2200人を超える患者・家族の叫びともいえる意見が詰まっております。この意見をぜひ、今後の対策に反映させていただきたい」と呼びかけました。

 次回は、次期計画の初年度にあたる2012年度の予算概算要求に盛り込む重点施策について協議する予定です。がん登録に関しても、次回以降、協議会として明確な姿勢を打ち出すことになっています。(医療ライター・福島安紀)

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(更新日付:2011年07月08日)

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