がん計画に患者の経済的支援、就労支援策を盛り込む方向へ |
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現計画から一歩進んで総合的な患者支援を |
素案には、新たに、がん患者・家族への支援策として、(1)経済的支援(2)就労支援(3)子育て・介護支援--を盛りこむ方向で合意されました。経済的支援としては、長期継続治療を受けるがん患者について、高額療養費制度における負担上限額の軽減、社会福祉協議会の療養貸付期間の延長を目指します。また、がん患者および経験者の就労・復職支援として、短時間勤務制度の拡大や休職規定の充実を求めていく方向です。
相談支援センターに関しては、患者関係委員が提案した、「拠点病院の機能や相談支援センターの場所がわかる掲示、相談できる内容を院内やホームページ等にわかりやすく表示すること」を拠点病院の指定要件に入れる方針。また、より質の高い相談支援が行われるためにインセンティブをつけ、院外の相談機関として位置づけられる地域統括相談支援センターの設置推進も基本計画に盛り込むことになっています。
地域統括相談支援センターの設置は、11年度のがん対策予算の新規事業に入っているものの、設置が予定されている都道府県は少ないのが現状です。その打開策として、がん相談センターこうちのセンター長である安岡佑莉子さん(高知がん患者会一喜会会長)は、次のように提案しました。
「人材がいないことが、院外の相談センターの開設を難しくしている。国立がん研究センターが実施している相談支援センター相談員研修をがん患者や経験者が受講できるようにするのも一つの手段ではないでしょうか」
さらに、情報提供体制については、科学的根拠が明らかでない治療情報等に患者・家族が惑わされないように、正しい情報を提供する必要性が強調されました。「一般の国民に対して、がん、医療、命についての教育を、文部科学省で広く取り入れてほしい」(グループ・ネクサス理事長・天野慎介さん)。学校教育や生涯教育の中でがんの予防や病気に対する理解を深める機会を増やすことを求める意見も複数の委員から出ています。
一方で、「相談支援・情報提供のあり方については次期計画では何を目指していくのか。評価指標、尺度を入れておく必要があるのではないか」(当機構がん政策情報センター長・埴岡健一)など、素案の加筆、修正を求める指摘も。次期計画に反映されるべき内容の枠組みを決めてから議論を深めるべきとの指摘も相次ぎ、患者・家族に対する相談と支援に関する分野の分け方、目標と評価尺度については、現委員の承認を経て、次回協議会で再度示される予定です。
がん研究、小児がん、緩和ケアの専門委員会が中間報告 |
この日の協議会では、「がん研究」「小児がん」「緩和ケア」について次期計画に入れる施策などを検討している専門委員会の中間報告も行われました。
「小児がん」については、現計画の分野別項目には入っていませんが、多職種連携が可能なハイレベルな治療を行う施設に集約化する方向で、新たに項目立てをし、達成目標と評価指標を設定することが報告されました。
この日は、患者関係委員を中心に、東日本大震災で被災したがん患者や医療機関へのさらなる支援を求める声が相次ぎました。
「被災されたがん患者さんが別の場所に移って治療を受ける際には、移動手段の確保、経済的負担の軽減策についても検討してほしい。また、被災地の医療機関への支援も必要です。さらに、ワンストップで対応可能な被災がん患者さん向けのコールセンター設置とその周知をお願いしたい」(天野さん)
「震災で家族を亡くしながらも治療を受け続ける必要があるがん患者さんの心のケア、グリーフケアも同時進行でやっていただきたい」(がんサポートかごしま代表・三好綾さん)
厚生労働省では、被災のため保険証を提示できない場合でも、医療機関を受診できるように都道府県に通知。また、国立がん研究センターは、全国のがん診療連携拠点病院の被災がん患者受け入れ状況をホームページで公表しているほか、被災地で必要ながん治療を受けることができない患者のために、被災がん患者ホットラインを開設しています。
日本臨床腫瘍学会、日本放射線腫瘍学会、日本緩和医療学会などもホームページで、被災したがん患者の受け入れ医療機関を公表中です。学会や全国の医療機関の迅速な対応を評価する声も多かった一方で、「被災地にはインターネットにアクセスできない人も多く、情報提供の方法については今後検討する必要がある」(神戸大学医学部附属病院腫瘍内科教授・南博信さん)との指摘もありました。
なお、第2期がん対策推進協議会委員の任期は4月4日まで。次回の協議会は、厚生労働省が新たに選出したメンバーで開催される予定です。11年度初旬から中旬までには次期計画の原案を策定することになっており、患者の声を反映した計画ができるように注視していく必要がありそうです。(医療ライター・福島安紀)
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