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第18回がん対策推進協議会

  「がん相談支援・情報提供」をテーマに集中審議
 相談窓口の相談内容と認知度の向上に、財政支援も必要

第18回がん対策推進協議会が、2011年3月4日、東京都港区で開かれ、12年度から始まる次期がん対策推進基本計画策定へ向け、「がんの相談支援・情報提供」について集中審議を実施。がん拠点病院に設置することが条件となっている相談支援センターの相談件数1日1件以下の施設が依然として多いなど、本来の機能を果たしてないセンターが少なくない実態が明らかになり、今後の相談機能の強化について議論が行われました。


 「相談支援センターは、院内に設置していれば指定要件を満たすわけで、相談をたくさん受けても経営に対するメリットはほとんどない。相談支援業務を充実させれば診療報酬が得られるなど、インセンティブをつける必要があるのではないか」

 第18回がん対策推進協議会には、国立がん研究センターがん対策情報センターセンター長補佐の若尾文彦さんが参考人として参加し、そう強調しました。

参考人の方々(左から若尾さん、加藤さん、浅野さん)
 若尾さんは、がん診療連携拠点病院の2010年度現況調査の相談支援センターに関する部分の速報値も発表。全国388カ所の拠点病院内に設置されている相談支援センターの相談件数は1日平均5.3件で、前年度(平均4.6件)より若干増えたと報告。しかし、2010年6~7月の43日間で2500件以上のセンターがある一方で、20件未満のセンターが10施設以上あり、最も多かったのが20~39件の施設というデータを公表。依然として1日1件以下の相談件数のところが多いことが分かりました。また、相談支援センターの本来の機能には、ほかの病院にかかっている患者・家族の(院外からの)相談を受け付けることも掲げられていますが、院内の患者からの相談が84%と、病院の中の相談窓口という役割から脱却できていない実態が明らかになっています。

 これに対しては、審議の中で、同協議会会長代理の天野慎介さんも、「相談支援センターへの財政支援が不十分。一定の研修を修了した相談員の配置を診療報酬上で評価するなど、財政的な支援が必要ではないでしょうか」と指摘しています。

  情報格差を解消するには

 一方、患者の間の情報格差が生じないように、基本計画ですべてのがん患者・家族の手に届くようにすることが決められていたのが「患者必携」です。この日の協議会では、「患者必携『がんになったら手にとるガイド』」が書籍として、3月上旬から全国の書店や病院の売店で販売(税込1,260円)、中旬には携帯電話、スマートフォンなどでも閲覧できるようになることが報告されました。国立がん研究センターでは、メディアに広報の協力を呼び掛けるとともに、患者関係者から患者必携を患者・市民に広く紹介してもらおうと、見本版を提供する患者会・患者支援団体を募集中です。なお、PDF版は、がん対策情報センターのホームページから無料でダウンロードでき、随時最新の内容に更新する予定です。

 患者必携については、当初、患者への無料配布が検討されていました。しかし、がん対策情報センターでは、常に最新の情報を継続して提供するという役割を担うこととし、がんに関する情報を必要とする患者が増える一方で冊子の印刷や製本にかけられる予算は限られているとして、現行版の有料販売について理解を求めました。

 今後、どのようにすべての患者・家族が患者必携のことを知って、入手(無料あるいは有料で)できることを担保していくのか、その方法を詰めていくことが求められます。

  病院外にも患者・家族の相談を受けとめる機関が必要

 また、同協議会では、高知県健康政策部健康対策課の浅野圭二さんも参考人の1人として、県が運営する相談機関として高知市内に設置している「がん相談センターこうち」について報告しました。がん相談センターこうちは、2007年3月に制定された高知県がん対策推進条例に基づいて同年10月に開設された相談機関です。相談業務は、県内のがん患者会「一喜会」が委託を受け、年間700件以上の相談を来所面談と電話で受け付けています。拠点病院の外に作られているため、拠点病院に対して直接相談しにくい内容や、拠点病院にかかっていない患者や県外からも問い合わせがあります。

 浅野さんは、患者会が相談業務を行う主なメリットとして、「患者目線で対応できることから、経験に基づくきめ細かな助言ができ、些細な疑問でも気軽に相談できる」点を挙げました。さらに、「拠点病院以外の相談窓口では、拠点病院の医師への不満や治療に対する疑問にも対応できる。複数の医療機関の患者の相談に乗ることで、多くの関係機関の現状把握ができるのも拠点病院以外に相談窓口を設置するメリットです」と話しています。

 県の予算では、同センターの人件費として2010年度約500万円を計上。11年度の予算案では相談員を現行の1.5人から2人に増やし、約800万円に増額する予定といいます。

 同協議会の患者関係委員で、がん相談センターこうちのセンター長である安岡佑莉子さんは、治療に関する相談については必ず医療機関と連携していることを強調しつつ、次のように話しました。

 「がん相談センターこうちでは、1人の相談に約2時間かけ、ときには患者さんの家まで行ってフォローします。高知県でできることは、ほかの県でもできます。皆さんと話しながら、地方でできることをやっていきたいと思います」

 集中審議では、拠点病院の相談支援センターの認知度が低いため(10年度内閣府世論調査では「相談支援センターを知っている」が30%)、治療内容や療養生活に不安を感じた患者や家族がどこに相談に行ったらよいか分からない現状の改善が課題として挙がりました。当機構の埴岡健一は、「拠点病院内の相談支援センター、高知県のように院外にあって患者の悩みを親身になって解決する地域密着型の相談センター、そして、どこに相談に行ったらよいかわからない患者への初期対応と振り分けを行うコールセンターの3つを組み合わせて運用していく必要があるのではないか」と強調しました。

 さらに、患者・家族への支援体制として、天野さんは、「長期に渡って治療を受けるがん患者の負担は重く、経済的な負担の軽減策を検討してほしい。就労や復職の問題に関しても、休職規定を充実させるなど、次期基本計画での対応をお願いしたい」と提案しました。

  拠点病院の役割に関する議論大詰め、予算措置も担保

 なお、前回まで審議された「がん診療連携拠点病院等の今後の役割等」に関しては、次期基本計画策定に向けた協議会の提案がおおむね決定。特に、患者委員が指摘した「相談支援センターの場所が分かる掲示や、相談できる内容を院内やホームページ等にわかりやすく表示すること」「がん患者及びその家族等が心の悩みや体験等を語り合うための場を設けること」「拠点病院の第三者評価の導入」を盛り込むことが決まりました。

第18回がん対策推進協議会の様子
 これに対しては、「予算なしで現場の努力だけでやるのは限界がある。業務内容を増やす内容を要望するのであれば、予算配分についても担保しない限り、ますます医療崩壊が進む」(国立がん研究センター理事長・嘉山孝正さん)といった指摘があり、予算措置も盛り込んだ形で提案することになっています。

 拠点病院の指定については、現行の2次医療圏に1カ所にこだわらず、都道府県、地域の実情に合わせて弾力化する方向性が示されています。現在、拠点病院が整備されている2次医療圏は349圏中231圏で、118カ所が拠点病院のない空白医療圏ですが、そこに住む地域住民の安心のために、拠点病院に準じる「がん相談・診療連携拠点病院」(仮称)を新たに指定する方針でまとまりました。

 次回の協議会は、2011年3月28日、東京都港区で開催され、引き続き「相談支援体制・情報提供」をテーマに集中審議を実施するほか、緩和ケア・小児がん・がん研究の3つの専門委員会での協議内容が報告される予定です。
(ライター 福島安紀)

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(更新日付:2011年03月07日)

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