がん難民をなくすために拠点病院の指定要件見直しへ 本当に患者のためになる改革を |
|
今回のがん対策推進協議会では、2012年4月からスタートする次期がん対策推進基本計画の策定に向け、都道府県の立場、がん診療連携拠点病院の立場、拠点病院の認定を行う立場からそれぞれ参考人を招致。その中で、宇都宮仁志さん(広島県健康福祉局医療政策課)は、全国衛生部長会の会員である都道府県から得た調査結果を示し、「拠点病院制度の指定は、二次医療圏につき1か所の整備を基本とする考え方は改めるべき。都道府県の実情に合わせた指定が必要」と強調しました。
患者関係委員有志が相談支援センターを訪問調査 |
一方、拠点病院制度の重要な役割の一つが、その病院にかかっていない人も含めて地域のがん患者・家族をサポートする相談支援センター機能です。患者関係委員の三好綾さん(がんサポートかごしま代表)は、前川育さん(周南いのちを考える会代表)、安岡佑莉子さん(高知がん患者会一喜会会長)と手分けをし、地元の患者団体とも協力して8県34カ所の拠点病院にある相談支援センターを訪問調査した結果を発表し、次のように述べました。
「実際に訪問してみたところ、相談室が事務室の中にありプライバシーが守られていない病院やソーシャルワーカーがいないところもありました。相談支援センターはまだまだ患者・家族にとって使いやすいものにはなっていません。指定要件の見直しに患者目線を入れ、現状の早急な改善を望みたい」
調査結果によると、拠点病院について知らない人が多いにもかかわらず、その役割について掲示があったのは、34病院中8カ所だけでした。これに対し、外山千也さん(厚生労働省健康局長)は、「(役割の掲示は)当たり前のことで、それが行われていないのであれば指定要件にしたいと思います」と応じました。
また、本田麻由美さん(読売新聞社会保障部)は、千葉県の「がん患者等の意識調査」と「愛媛県がん患者満足度調査」の結果を参考資料として提出。「『愛媛県がん患者満足度調査』によると、がんの告知・説明に30分以上時間をかけたかどうかで満足度に差がでるということが分かります。積極的な治療の後の療養生活に関する患者ニーズは、自宅に帰ることだけでなく、主治医に継続してみてもらいたい、緩和ケアの専門医にかかりたいなど多様であることも知ってほしい」と発言しました。
同協議会で示されたたたき台では、ドラッグ・ラグを解消するため、臨床研究の推進を担う拠点病院でも新たな要件としてはどうかという議論が示されています。これについて、天野慎介さん(グループ・ネクサス理事長)は、「ドラッグ・ラグ解消のために臨床試験が推進されるのはありがたいと思います。しかし、中医協や医療イノベーション会議での同様の議論では高度医療評価制度が用いられることになり、ハードルが高いと聞いている」とし、患者にとって意味のあるドラッグ・ラグ解消策を進める必要性を訴えました。
2011年1月17日には、天野さんが発起人のひとりとして名を連ねる患者会ネットワークJ-CAN(Japan Cancer Action Network)が、細川律夫厚生労働大臣、遠藤久夫中医協会長などへ、「適応外医薬品の保険支払いの早期推進に関する要望書」を提出しています。
患者満足度調査を行う方向へ |
なお、同協議会では、天野さんが、厚生労働省の2011年度予算案の目玉の一つである「都道府県がん対策推進事業費」について、各都道府県にアンケート調査した結果を報告。「地域統括支援センター」の設置は、がん対策推進協議会の提案書とりまとめワーキンググループが全国の患者・現場・地域の声を受けて提案し予算化にこぎつけたものです。国から相談支援の充実ということで予算がついていますので、ぜひ、47都道府県で予算措置をお願いしたいと考えています」と天野さんは話しています。
次回の協議会では、「相談支援体制・情報提供」をテーマに集中審議が行われる予定です。
(ライター福島安紀)
(ライター福島安紀)
関連サイト