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第17回がん対策推進協議会

  がん難民をなくすために拠点病院の指定要件見直しへ
 本当に患者のためになる改革を



第17回がん対策推進協議会が、2011年1月28日、東京都千代田区で開かれ、前回に引き続き、がん診療連携拠点病院(以下、拠点病院)をテーマに集中審議を行いました。拠点病院の指定要件を3つのタイプに分類する案も浮上しています。また、患者関係委員が独自に実施した訪問調査で拠点病院の問題点を指摘しました。


 今回のがん対策推進協議会では、2012年4月からスタートする次期がん対策推進基本計画の策定に向け、都道府県の立場、がん診療連携拠点病院の立場、拠点病院の認定を行う立場からそれぞれ参考人を招致。その中で、宇都宮仁志さん(広島県健康福祉局医療政策課)は、全国衛生部長会の会員である都道府県から得た調査結果を示し、「拠点病院制度の指定は、二次医療圏につき1か所の整備を基本とする考え方は改めるべき。都道府県の実情に合わせた指定が必要」と強調しました。

山口さんが説明している様子/第17回がん対策推進協議会
 拠点病院指定検討会のメンバーである山口建さん(静岡県立静岡がんセンター総長)は、拠点病院の指定要件の見直しに関し、「患者の意見をもう少し重視しなければいけない。東京中心に考えたり、学者の意見だけを重視すると、新たにがん難民を生む可能性もある」と指摘。拠点病院の数は2011年1月末現在377カ所で全国の二次医療圏の数を超えているものの、人口の多い地域に偏っており、拠点病院のない空白医療圏が117カ所(充足率66%)あるのが実情と説明。そのうえで、個人的意見として、①全てのがんについて、QOL(Quality of Life、生活の質)を重視した治癒を目指す治療を実施できる拠点病院(人口100万人当たり1カ所程度)、②5大がんについて標準治療を実施できる拠点病院(人口30万人当たり1カ所程度)、③現在空白となっている二次医療圏に再発がんの治療、緩和ケア、相談支援センター機能、院内がん登録などを実施する拠点病院(全国100カ所程度)――の3つのタイプに分けて認定する案を提示しました。

  患者関係委員有志が相談支援センターを訪問調査


 一方、拠点病院制度の重要な役割の一つが、その病院にかかっていない人も含めて地域のがん患者・家族をサポートする相談支援センター機能です。患者関係委員の三好綾さん(がんサポートかごしま代表)は、前川育さん(周南いのちを考える会代表)、安岡佑莉子さん(高知がん患者会一喜会会長)と手分けをし、地元の患者団体とも協力して8県34カ所の拠点病院にある相談支援センターを訪問調査した結果を発表し、次のように述べました。

 「実際に訪問してみたところ、相談室が事務室の中にありプライバシーが守られていない病院やソーシャルワーカーがいないところもありました。相談支援センターはまだまだ患者・家族にとって使いやすいものにはなっていません。指定要件の見直しに患者目線を入れ、現状の早急な改善を望みたい」

 調査結果によると、拠点病院について知らない人が多いにもかかわらず、その役割について掲示があったのは、34病院中8カ所だけでした。これに対し、外山千也さん(厚生労働省健康局長)は、「(役割の掲示は)当たり前のことで、それが行われていないのであれば指定要件にしたいと思います」と応じました。

 また、本田麻由美さん(読売新聞社会保障部)は、千葉県の「がん患者等の意識調査」と「愛媛県がん患者満足度調査」の結果を参考資料として提出。「『愛媛県がん患者満足度調査』によると、がんの告知・説明に30分以上時間をかけたかどうかで満足度に差がでるということが分かります。積極的な治療の後の療養生活に関する患者ニーズは、自宅に帰ることだけでなく、主治医に継続してみてもらいたい、緩和ケアの専門医にかかりたいなど多様であることも知ってほしい」と発言しました。

 同協議会で示されたたたき台では、ドラッグ・ラグを解消するため、臨床研究の推進を担う拠点病院でも新たな要件としてはどうかという議論が示されています。これについて、天野慎介さん(グループ・ネクサス理事長)は、「ドラッグ・ラグ解消のために臨床試験が推進されるのはありがたいと思います。しかし、中医協や医療イノベーション会議での同様の議論では高度医療評価制度が用いられることになり、ハードルが高いと聞いている」とし、患者にとって意味のあるドラッグ・ラグ解消策を進める必要性を訴えました。

 2011年1月17日には、天野さんが発起人のひとりとして名を連ねる患者会ネットワークJ-CAN(Japan Cancer Action Network)が、細川律夫厚生労働大臣、遠藤久夫中医協会長などへ、「適応外医薬品の保険支払いの早期推進に関する要望書」を提出しています。

  患者満足度調査を行う方向へ


第17回がん対策推進協議会の様子
 拠点病院制度について2回にわたり議論してきた整理として、協議会会長の垣添忠生さん(日本対がん協会会長)は、“均てん化”と“集約化”に分けて、拠点病院のあり方について、今後の方向性を示しました。“均てん化”については、二次医療圏単位の整備指針にこだわることなく、タイプ別に分類して拠点病院を再整備することが必要だとしました。さらに、患者関係委員から指摘のあった、診療機能の院内掲示を新たな指定要件とすること、患者満足度調査の実施や実際に果たしている機能を監査することの必要性にも言及。“集約化”については、小児がんや放射線治療などへの対応も含めて、その役割を検討するとしました。また、地域のがん診療を担っている拠点病院以外の中小病院の役割や、現在拠点病院がない空白圏についても整理をする方針。次回までに新たな拠点病院の枠組み案として提示すると明言しました。

 なお、同協議会では、天野さんが、厚生労働省の2011年度予算案の目玉の一つである「都道府県がん対策推進事業費」について、各都道府県にアンケート調査した結果を報告。「地域統括支援センター」の設置は、がん対策推進協議会の提案書とりまとめワーキンググループが全国の患者・現場・地域の声を受けて提案し予算化にこぎつけたものです。国から相談支援の充実ということで予算がついていますので、ぜひ、47都道府県で予算措置をお願いしたいと考えています」と天野さんは話しています。

 次回の協議会では、「相談支援体制・情報提供」をテーマに集中審議が行われる予定です。
(ライター福島安紀)


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(更新日付:2011年02月04日)

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