協議会の運営のあり方が焦点に「小児がん対策」の専門委員会設置へ |
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会議の冒頭、郷内淳子さん(カトレアの森代表)が、会長の垣添さんに対して、前回と今回、有志の委員が提出した「がん対策推進協議会運営の見直しに関する意見書」に対する意見を求めました。
意見書は、全国の患者・家族、医療関係者らの声を集約した「平成23年度がん対策に向けた提案書~みんなで作るがん政策」を提出したにも関わらず、2010年5月以降10月まで同協議会が開催されることなく、がん対策関連予算概算要求が決定されたことなどに疑問を呈し、協議会運営の改善を求めたものです。今回は、医療関係者である専門家委員も名を連ね、13人の有志委員の連名で意見書が再提出されました。
これに対し、垣添さんも意見書に共感するとし、厚労省健康局長の外山千也さんに宛てた文書で運営方法の改善を要求。そして、「閉塞状況を打ち破るためには、1)予算にがん対策推進枠を作る、2)たばこ対策に本腰を入れる、3)がん検診を国の事業に戻す、4)がん登録法を作って登録を義務化、5)全拠点病院に国が100%援助をする--この5点を特に実現することによって現在厚労省の中で滞っている懸案がいっきに進むのではないか」と強調しました。
多数の委員が続投求めるも、垣添会長は辞意を表明 |
しかし、郷内さんは、「最初の発言はご意見であり、動議ではない。もう一度動議の趣旨を説明してほしい」との指摘を受けて、改めて協議会の責任者である垣添さんの解任動議を提案。「前回のような発言(協議会には意見を聞くだけ)を事務局から聞かされるとは思っていませんでした。失望感が根底にあります。この場で責任のある発言をしなければならないと思って毎回参加していますので、前回の発言には(患者関係委員としての)存在理由を否定されたような気がしました」と理由を述べました。その後、「事務局への失望感を会長にぶつけるのは違うというご指摘はもっともですが、協議会のあり方については、会長の責任も重いと考える」とも付け加えました。
ほかの委員からは、「事務局が悪いことの責任をなぜ、会長が責任を取らなければいけないのか」、「問題点はここで出ているのだから、一番大事なところから手を打っていかなければいけないそのときに、ここまで分かっている会長を解任するのが良い手段とは思えない」と、垣添さんの会長継続を求める意見が続きました。
意見が出尽くしたところで採決を取ったところ、12人が「続投」に賛成、「解任」に賛成が2人、棄権が2人という結果に。ところが、多数決で続投を求められた垣添さんは、「これだけ重要な提案をいただいた以上、このまま会長を続けることはできない」とその場で辞意を表明。厚労省事務局より慰留されましたが、その後の議論は、会長代理の天野慎介さん(グループ・ネクサス理事長)が司会を務める形で進行しました。
患者の意見を集約して次期計画を策定する方向へ |
同協議会の位置づけとしては、厚労省側も「患者さんの意見を聞いて政策立案の要素にする会」と確認。今後は、月1~2回協議会を開催し、事前に決めたテーマについて集中審議を行い、次期がん対策基本計画の変更の骨子を固める方針を示しました。当機構がん政策情報センターの埴岡健一は、「13人からの意見書にもあるように、議論を増やすだけではなく、省庁横断的な運営、省内の全力を挙げた運営の改善プランを出していただきたい」と協議会の運営体制のさらなる改善を求めています。
一方、集中審議のほかに、これまで協議会で議論されず、委員以外の専門家のヒアリングなどが必要な分野については専門委員会を設置し、そこでの議論をまとめて協議会に諮ることも確定しました。
「がん対策は発症数が多い5大がんに集中し、小児がん対策および希少がん対策が著しく遅れています。小児がんは希少がんであることから深刻なドラッグ・ラグが生じていますし、小児に対する緩和ケアもまったく手がつけられていない」
この日、檜山英三さん(広島大学自然科学研究支援センターセンター長)は、日本小児がん学会、日本小児血液学会、小児がん親の会有志など42患者家族団体の要請を受けて、天野さんと共に、小児がん対策専門委員会の設置に関する要望書を提出。次期計画策定に向けて、「がん研究」と「小児がん」の専門委員会の設置が決定しました。
次回の協議会は10年12月10日、「がん診療連携拠点病院」に関する集中審議が行われる予定です。患者委員の一人である安岡佑莉子さん(高知がん患者会一喜会会長)は、「拠点病院に対しては、患者さんたちの不平・不満があります。その患者さんたちの声を集めてきたい」と話しており、患者・家族の意見を集約したものを元に議論が進むことになっています。(医療ライター・福島安紀)
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