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第14回がん対策推進協議会

  第2期がん計画の策定方法を検討 患者委員らが協議会運営の見直し求める


第14回がん対策推進協議会が、2010年10月6日、東京都千代田区で開かれ、2011年度のがん対策関係予算概算要求などの報告のほか、第2期がん対策推進基本計画の策定に向けた協議が行われました。次期計画について具体的なことは決まらず、次回へ課題を積み残す形になりました。

 同協議会では、まず、11年度のがん対策関連予算の概算要求額について報告されました。がん対策予算は、厚生労働省541億円(前年比225億円増)、文部科学省201億円(同29億円増)、経済産業省84億円(同13億円増)の合計826億円、前年比267円増で、全体としては大幅に増額した要求がなされています。しかし、内容を見ると、「がんの予防・早期発見の推進費用」303.6億円(同197.5億円増)、「がんに関する研究の推進費用」85億円(同24億円増)で、既にがんになっている患者・家族への医療・相談対策よりも、がんの予防と早期発見を重視した予算配分となっています。

 これに対し、協議会委員からは、次のような批判が相次ぎました。「患者・家族のがんに関する相談をワンストップで提供する地域統括相談支援センターの設置については、都道府県がん対策推進事業のメニューの一つとしてあげられているため、作っても作らなくてもよいとなりかねない。47都道府県すべてに必要だという趣旨と異なる。2分の1予算ではなく、求めている結果が担保できる方式に予算を変えて欲しい」(埴岡健一・当機構がん政策情報センター長)

 「がん対策推進基本計画で重点的に取り組む事項になっている『放射線療法及び化学療法の推進』(前年比7億円減)、『治療の初期段階からの緩和ケアの実施』(同2億円減)の予算が少ない。一方で、子宮頸がんワクチン接種に149.6億円の予算を付けるなど、バランスを欠いている」(本田麻由美さん・読売新聞社会保障部記者)

  協議会の形骸化に患者関係委員らが警鐘


第14回がん対策推進協議会の様子
 11年度予算に対しては、委員有志による「提案書取りまとめワーキンググループ(以下、WG)」が作成して協議会が承認した74本の推奨施策が、10年3月、長妻昭前厚生労働大臣に提出されました。この提案例は、アンケートやタウンミーティングで集めた全国のがん患者や医療関係者の声を反映したものです。その中で、「都道府県地域統括相談支援センターの設置」「子宮頸がん撲滅事業」などは予算化されたものの、「全国統一がん患者満足度調査」など25項目が「今後検討」と棚上げされました。「診療報酬で対応」「研究費で対応」となっている項目も多く、全体に提案書が反映されたとは言い難い状況です。

 こうした事態に対し、NPO法人グループネクサス理事長の天野慎介さんは、次のように述べ、患者関係委員ら8人の委員の連名で、「がん対策推進協議会運営の見直しに関する意見書」を提出しました。

 「がん対策推進協議会は10年5月に開催されてから5カ月間開催されていない。その間に概算要求が決定され、その根拠や優先度が明らかではない状況で策定されている。こういった議論が協議会にあがってこないまま、がん対策推進基本計画やほかの施策が策定されても、不十分なものしかできないと考えます」

 意見書では、協議会の事務局であるがん対策推進室が健康局の所管であるため、ドラッグ・ラグなど他局や他省庁が担当の問題が議論になってこなかった点に触れ、がん対策推進室を厚労省大臣官房や内閣府に置くことも提案しています。

 これに対し、厚労省健康局がん対策推進室室長の鈴木健彦さんは、「基本的に、がん対策基本法9条4項の通り、『厚生労働大臣は、がん対策推進基本計画の案を作成しようとするとき、また、変更しようとするときがん対策推進協議会の意見を聴くこと』としております。それ以外の業務はございません」と回答しました。

 この発言に、「では、今まで私たちが時間を割いてやってきたWGの活動は無視されたということなんですか」(安岡佑莉子さん・NPO法人高知がん患者会一喜会会長)「がん対策基本法の附帯決議では『協議会の機能が十分に発揮できるよう配慮すること』とあります」(郷内淳子さん・カトレアの森会長)などと異論が続出。これを受け、次回、協議会のあり方について議論されることになりました。

 この日の協議会の重要な議題は、12年度から5年間のがん対策の柱となる第2期がん対策推進計画の策定についてです。次期計画は11年度初頭から中頃までに計画案が策定され、パブリックコメントの募集を経て12年4月~5月には閣議決定・施行されることになっています。次期計画案作成に向けた専門委員会の設置については、複数の委員から、「がん研究」「在宅緩和医療」「緩和ケア」「がん対策の評価尺度自体を検討する委員会」などの専門委員会を設置するべきとの提案がありました。しかし、今回は議論の時間が限られ、がん研究以外は具体的にどの専門委員会を設置するか決定に至りませんでした。計画の策定については、協議会の回数を増やすなど公開の場でオープンに議論することが求められます。

  がん研究センターがん難民解消へ始動


 一方、同協議会では、09年度から始まった「女性特有のがん検診推進事業」の実施状況が報告されました。子宮頸がんと乳がんの検診を受診するための無料クーポンの全国的な利用率は子宮頸がん21.7%、乳がん24.1%。全体の利用率が50%以上だった市区町村が子宮頸がん9カ所、乳がん30カ所あった一方で、事業そのものを未実施だった市区町村が子宮頸がんで28カ所、乳がんで31カ所あり、自治体の取り組み格差も明らかになっています。

 さらに、国立がん研究センター理事長の嘉山孝正さんは、同センターが、がん難民を作らないための新たな取り組みとして、「がん相談対話外来」とコールセンターの役割を果たす「患者必携サポートセンター」を開設したことを報告。「がん難民というが、定義もはっきりせず数も分からない。7月からがん相談対話外来として医師だけではなく、看護師、ソーシャルワーカーも入って相談に応じているが、利用者の92%が治療方針に不安を感じている。がん難民の定義、がん患者さんや家族がどういう問題が抱えているのか分析して今後報告したい」と述べました。

 患者関係委員らからは、厚生労働大臣、協議会会長などへ「たばこ税の引上げに関する意見書」が改めて提出されています。

 なお、次回の協議会は11月末に開催される予定です。
(医療ライター・福島安紀)

関連サイト




厚生労働省がん対策推進協議会提案書取りまとめワーキンググループ:
http://www.gan-working.net/




(更新日付:2011年01月18日)

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