基本計画の中間報告書案を審議 今後の方向性を強く打ち出せない報告へ批判続出 |
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がん対策推進基本計画は、がん対策基本法に基づいて2007年に作られた国の5カ年計画で、すでに折り返し点を過ぎ4年目に入っています。
また、がん診療の均てん化の目玉として設けられた「原則として全国すべての二次医療圏において、3年以内に、おおむね1カ所程度拠点病院を整備」の目標については、10年4月1日現在349医療圏に377の拠点病院(108.0%)があり、100%以上達成したとされました。さらに患者や家族に対する相談支援及び情報提供の充実のために作られた相談支援センターもすべての拠点病院に設置されており、「二次医療圏に相談支援センターを概ね1カ所程度整備」の数値目標はクリアしていると報告されました。
患者・家族の苦痛は減っているのか? |
しかし、全体目標のもう一つの柱である「すべてのがん患者及びその家族の苦痛の軽減並びに療養生活の質の維持向上」については、進捗状況を「評価方法の開発を行い、測定の可能性を検討しているところである」との明記に留まりました。これに対し、患者関係委員の郷内淳子さん(カトレアの森代表)からは、「患者にとって非常に重要な苦痛の軽減という部分の進捗状況の中間報告書がこれだけというのは大変失望しています。測定の可能性を検討しているというのは、これまでの3年間何もやってこなかったということなのか」と中間報告書案の書きぶりを厳しく批判しました。これを受け、その後の中間報告書では、「厚生労働省研究班のEORTC-QLQ-C15PAL、がん患者ががん医療を患者の視点で評価する指標を開発し、拠点病院を対象とした全国遺族調査を行い、評価した。今後は、全国規模での患者アンケート調査の実施体制を検討している。」と書き足されました。
また、協議会委員で当センター長の埴岡健一は、「中間報告書案は、今後の課題について各委員の考えを列挙した意見集になっており、ほとんどの語尾が『必要がある』、『意見がある』、『期待する』となっています。今後4年目、5年目、次期計画も踏まえて、誰がいつまでにやるかはっきりさせ、そのプロセス自体を深めていく必要がある」と強調しました。
一方で、今回から新たに委員に加わった国立がん研究センター理事長の嘉山孝正さんは、「がん登録さえきちんとできていなくて、罹患率もきちんと把握されていない中での目標設定はナンセンス。がん登録が患者さんに還元される仕組みにしなければ意味がない」と指摘。これを受けて、がん登録に関しては、「更に精度の高い地域がん登録の適切な推進に向けた、予算上及び制度上の包括的な取り組みを行う必要がある」と明記することが全会一致で決まり、中間報告書に追記されました。
さらに、個別目標に関する議論の中で、患者関係委員からは、相談支援センターの相談体制と研修の内容に対して不満が続出しました。「相談支援センターが病院内にあることを知らない患者も多い。最低限、相談支援センターの掲示を必須の項目として入れていただきたい。また、今後の課題に、医療従事者等のプロ・サポーターとがん経験者等からなるピア・サポーターとの交流や相互啓発が重要だということが入っているが、ピアサポートの質の担保ができていない面もある。ピア・サポーターの質を保つための研修を実施することを報告の中に入れてほしい」(三好綾さん・NPO法人がんサポートかごしま代表) 「がん対策情報センターが行っている相談員研修は修了証書をもらえるので皆さんが行っているが果たして役に立つのか。ピアサポートも心のケアの勉強をきちんとしないと、反対に患者さんを傷つけてしまうことになる」(安岡佑莉子さん・NPO法人高知がん患者会一喜会会長)。これに対し、がん対策情報センター長でもある嘉山さんが、「研修の内容を患者さんの視点に立ったものに改めますから、ちょっとお待ちください」と応じる場面も見られました。その議論を受けて、中間報告書には、「研修修了者の質を評価する利用者満足度調査を行うことなどが提案されている」と記載されました。同協議会では、新たに、癌研究会癌研究所所長の野田哲生さんを中心に、がん研究に関するワーキンググループを発足させることになりました。提案書とりまとめワーキンググループも引き続き活動することが決定しています。
ところで、今回の協議会では、「がん対策推進計画を推進するための都道府県の主な取組」(アクションプラン)の報告状況も公表されました。2009年10月が提出期限でしたが、5月27日現在、1府7県が未だにアクションプランを未作成です。特に、福島県、大分県、宮崎県、鹿児島県は報告時期が「検討中」あるいは「未定」であり、がん対策の遅れが懸念されます。
なお、今回の協議会の審議を踏まえた正式な中間報告は、6月15日に公開されました。
(医療ライター・福島安紀)
(医療ライター・福島安紀)
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