患者関係委員らが要望書を長妻大臣に提出 がん対策提案書への意見集約も開始 |
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さらに、国民医療費に関しても、「日本の医療費の対GDP比は、先進7カ国で最も低い値です。効率的に予算をつけた上で、きめ細かな対策をとっていきたい」と言及していました。
これを受け、同協議会に参加した5人の患者関係委員が、国と都道府県のがん対策推進協議会などの患者関係委員有志一同による「たばこ税の引上げに関する要望書」と「がん対策の推進に関する要望書」を、長妻大臣に手渡しました。
前者は、たばこ税の引き上げによるたばこ価格の値上げを求める内容。後者は、がん対策推進協議会が平成22(2010)年度予算に対して提案した70本の施策を実行に移すことを求めたものです。北は北海道から南は沖縄まで、全国20数人の患者の立場の県協議会などの委員が、いっしょにこうした行動を起こしたことは、新しい動きとして注目されます。
協議会提案の70本の推奨施策 採用可否の“見える化”が必要 |
続いて、厚生労働省健康局総務課がん対策推進室室長の鈴木健彦さんが、2010年度がん対策関係予算として、厚生労働省、文部科学省、経済産業省の3省合計で、665億円(前年524億円)を概算要求していることを報告しました。また、がん対策推進協議会が2009年3月19日に舛添要一・前厚生労働大臣に提出した「平成22年度がん対策予算に向けた提案書~元気の出るがん対策~」への対応状況について、提案書の取りまとめを行った当機構の埴岡健一が、コメントを述べました。
厚生労働省がん対策推進室に対し、患者関係委員の特定非営利活動法人グループ・ネクサスの理事長である天野慎介さんは、「推奨施策に対して、何がどのように反映されているのか、検討しているのなら何をどう検討している段階なのか、見える化(可視化)していただきたい」と、要請しました。カトレアの森の代表である郷内淳子さんも、「がん対策予算は、前年より大幅に増額されているが、いま療養を受けている患者のための予算は増えていないように見える。われわれ患者としては遺憾です」と、予算概算要求の問題点を指摘しました。
基本計画の中間報告策定に向け評価指標の見直し求める声続出 |
がん対策推進基本計画は5年計画で、すでに折り返し地点を過ぎています。同協議会では、2009度中に中間報告をまとめることになっており、今回も同報告について協議が行われました。厚労省は、中間報告を前に、75歳未満の年齢調整死亡率が3年間で5・6%減少(目標は10年間で20%減)し、目標通り二次医療圏に1つのがん診療連携拠点病院と相談支援センターが整備されたと報告しています(358医療圏に375拠点病院・相談支援センター)。
しかし、各委員からは、次のように、目標設定自体の見直しを求める声が上がりました。
「協議会委員として自己反省を込めて言いますが、基本計画の中で設定した評価指標では、質的評価ができない。たとえば、今回も緩和ケア研修修了者数が9274人だと報告されましたが、“研修を受ける人が増えたこと”と、“初期の段階から適切な緩和ケアが提供されていること”は別の話ではないでしょうか。次期計画策定に向け、あるいは、今計画の評価をするにあたって、質的評価ができる目標設定が必要です」(読売新聞社会保障部の本田麻由美さん)。
「基本計画の策定の際には、喫煙率の半減も入れられませんでした。原点に戻って、目標設定から見直す必要があるのではないか」(国立がんセンター総長の廣橋説雄さん)。
厚生労働省がん対策推進室は、今後、各委員に対するアンケート調査を行い、その結果などを受けて中間報告案をまとめ、10年2月に予定されている次回協議会に提出する予定です。
さらに、同協議会では、提案書取りまとめ担当ワーキンググループ(以下、ワーキンググループ)が、がん医療の診療報酬の充実を求めてまとめた「2010年度診療報酬改定におけるがん領域に関する提案について」に関しても、審議が行われました。
提案は患者、医療提供者、有識者の立場にあるワーキンググループ委員14人が、患者・家族、医療提供者から集めた声を反映し作成したものです。放射線療法や化学療法の推進のためにインセンティブ(金銭的動機づけ)をつけること、緩和ケア診療加算や在宅医療の拡充を進めること、などを求めています。提案書は、協議会委員の意見を集めて一部修正したうえで、09年12月4日に、協議会の総意として協議会会長の垣添忠生さんから長妻大臣へ提出されました。
ワーキンググループでは、10年2月ごろに協議会に提出するがん対策に関する提案書で、具体的な提案を行っていくための話し合いを、すでに開始しています。10年1月から2月にかけて、患者・市民、医療提供者などから意見を聞く、タウンミーティングを全国数カ所開催する予定です。
長妻大臣も強調していましたが、2人に1人ががんになっており、がんはまさに国民病です。しかし、がん医療、がん対策への国民の関心は、必ずしも高いとは言えません。地域格差を解消し、がん難民をなくすためには、患者・家族や医療提供者、地方行政の担当者など、がん医療に関わる当事者が、体験に基づいた声を出していくことが必要になってきています。
(医療ライター・福島安紀)
(医療ライター・福島安紀)
※報告内容は、当時のものです。
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