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第35回がん対策推進協議会

中間報告の評価指標策定を求める声続出

第35回がん対策推進協議会が9月5日、厚生労働省内で開かれ、今後の協議会の進め方を中心に議論が行われました。がん診療連携拠点病院の相談支援センターの現状と今後の充実に向けて、専門家の意見聴取も実施。委員からは、中間評価の指標づくりを急ぐ声が相次ぎました。

 同協議会では、まず、第2期のがん対策推進基本計画の目玉となっている小児がん対策として、「小児がん医療・支援の提供体制のあり方について(報告書)」(小児がん医療・支援のあり方に関する検討会)が報告されました。

第35回がん対策推進協議会の様子
第35回がん対策推進協議会の様子
 この報告書では、小児がん治療を一定程度集約化し、地域の小児がん医療の均てん化を図るために必要な「小児がん拠点病院」の数や指定要件を定めています。それによると、全国を北海道、東北、関東信越、東海北陸、近畿、中国四国、九州の7ブロックに分け、地域ブロックごとに1~3、全体では10カ所の小児がん拠点病院を指定。主に成人の5大がんを対象にしたがん診療連携拠点病院とは異なり、「年間新規固形腫瘍10例程度以上、かつ造血器腫瘍10例以上」といった診療実績も指定要件の一つになっています。厚労省は、小児がん拠点病院の募集を進め、11月には拠点病院を指定する予定です。

 同協議会会長代理で同検討会のメンバーでもある天野慎介さん(特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長)は、次のように、拠点病院指定後も小児がん対策をよりよくしていく仕組みづくりと患者・家族への情報提供の重要性を強調しました。

 「報告書にもあるように、拠点病院の指定後も、小児がん医療・支援に関して定期的に議論する検討の場を必ず設けていただきたい。また、領域別の診療機能、診療実績や医療従事者の専門とする分野・経歴などを、わかりやすく情報提供することが拠点病院の要件にも入っていますが、ここについてはしっかり徹底してください」

14自治体で、都道府県協議会の患者委員が「1人」

 国の第2期がん対策推進基本計画を受け、すでに34自治体では、都道府県のがん対策推進計画の見直し作業が進んでいます。同協議会では、都道府県がん対策推進計画の見直しの進捗状況を報告。各都道府県の見直しの時期は来年2~4月ですが、8月の調査時点で、神奈川、石川、岐阜、静岡、三重、和歌山、徳島、愛媛、佐賀、熊本、大分、鹿児島、沖縄(ただし、神奈川、岐阜、佐賀、沖縄は8月末に開始予定)の13自治体が、見直しのための議論を開始していませんでした。

 また、計画の見直しの検討会への患者委員の参画状況にはばらつきがあり、5人の患者委員が入っている自治体が2カ所、4人が6自治体あったのに対し、1人のみのところも14自治体ありました。これに対しては、「人数が多ければいいというものではないが、1人では発言するのに勇気がいります。ぜひ、複数名の患者委員を入れてほしい」(天野さん)との意見が出ています。

 この日、最も議論が白熱したのは、「協議会の今後の議論について」の議題の際でした。各委員からは、「緩和ケアの強化策」「がん教育」「がん研究」「在宅緩和医療の充実」「就労問題解決のための具体策」など、議論すべきテーマが挙げられました。しかし、次のように、各論の議論の前にすべきことがあるのではないかとの意見も。

 「各論もとても大事ですが、これからのがん医療がどうあるべきか、財源が限られている中でどの対策に財源をあてるべきなのか、これまで議論できなかった問題について議論することが大事なのではないでしょうか。一方で、中間報告に向けた評価指標の策定は必須。第1期計画のときも指標がないから評価できないと何度も言われてきました。質をどう評価するのか、指標はあるのか、作れるのか、そういうことを本当に詰めていくべき」(読売新聞社会保障部記者・本田麻由美さん)

 「本当に計画はこれでいいのか、視点の置き方、視野の広げ方のディスカッションは、いまでないとできない。検討すべきということが計画に載っているものは優先しなければいけないですし、中間評価に関してはいまやらないといけない」(公益財団法人がん研究会がん研究所所長・野田哲生さん)

 同協議会会長の門田守人さん(公益財団法人がん研究会有明病院院長)は、「中間報告に向けた評価指標の策定が最優先であることは間違いない。11月の次回協議会までに何らかのアクションを取って、委員の皆さんと連絡を取りながらやっていく」と、評価指標策定に向けて動くことを強調しており、今後の動向が注目されます。

2013年がん対策予算として392億円を概算要求

 一方、相談支援に関する意見聴取では、国立がん研究センターがん対策情報センターの高山智子さんが、「がん相談支援センターの現状と今後の充実に向けて~研修の実施状況と相談対応の質評価の試み~」をテーマに発表。全国のがん診療連携拠点病院にある相談支援センターの相談件数が2011年度は2カ月で9万6552件(前年比9.5%増)と増加したものの、院外からの相談が1.8%減っていることに触れ、「もともと相談支援センターが、病院内の患者に限らず地域の人の相談にのるために作られた経緯を考えると、周知が足りないのではないでしょうか」と指摘しました。

 高山さんらは、米国での実践例を参考に、がん相談の質の評価や教育ツールを開発中で、相談支援の質を向上させる取り組みも始まっています。

 国立がん研究センター理事長の堀田知光さんは、都道府県がん診療連携拠点病院連絡協議会の中に、「情報提供・相談支援部会」を設置することを明らかにし、「できれば患者さんの代表にも来ていただいて意見を頂戴したい」と話しました。

 最後に、厚生労働省が2013年度のがん対策として、392億円(12年275億円)の予算を概算要求することを発表。特別重点予算として、子宮頸がんの早期発見のために新たにHPV(ヒト・パミローマ・ウイルス)検診を30代の女性に実施するなど「がんの早期発見」に116億円、「がんと診断されたときからの緩和ケアの推進」に8.2億円、「がん患者などの治療と職業生活の両立」に5.1億円が計上されています。

 HPV検診の実施については、次のような意見も出ており、対処しながら進める必要がありそうです。

 「過剰診断が起こる危険にさらされるのは若い女性たちです。残念ながら恐ろしいほど正しい知識が伝わっていませんので、過剰診断になったときに背負う精神的な苦痛にどう対処するか、子宮頸がんに対する正しい知識をいかに広げていくか、ぜひ検討いただきたい」(特定非営利活動法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長・松本陽子さん) (医療ライター・福島安紀)

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(更新日付:2013年01月25日)

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