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第37回がん対策推進協議会

「約75%の患者が、病院内に“がん経験者の交流の場”の設置を希望」--。1月18日、東京・平河町で開かれた第37回がん対策推進協議会では、がん体験者が関わるピアサポートについて議論が行われ、患者のサポートプログラムに対する調査結果が発表されました。また、がん対策推進基本計画(以下、がん計画)の中間評価に向けてがん経験者への調査を実施し、その意見を新たな指標作りに反映させることも決定しています。

がんのピアサポート求める患者多数。政策的にも支援を

 「病院内における“がん経験者の交流の場”について、設置を希望する人は約75%、参加希望がある人は60%でした。『どのような交流の場を希望するか』では、『体験を語り合う』『体験談を聴く』『医療者の話を聴く』の3つの組み合わせを希望する人が最も多い傾向がみられました」

 参考人として、「がん患者のサポートプログラムに関するニーズ調査」の中間報告を発表したのは、がん研究会有明病院患者支援推進委員会患者・家族サポートワーキンググループで看護師長の花出正美さん。調査は、同院に外来通院中のがん患者に昨年12月10日~14日の5日間、自記式アンケート形式で実施し、4932人(女性48%、男性29%、性別無回答23%)の回答を得ています。

 実際に“がん経験者の交流の場”に参加経験がある人は回答者の8%(女性10%、男性5%)。交流を希望する時期は、「治療中」が最も多く、「治療後」、「治療前」の順でした。経験者同士で話してみたいことは、治療前は「気持ちのもちかた」、「医療者との付き合いかた」が上位だったのに対し、治療中と治療後には「日常生活上の工夫」、「身体症状への対応のしかた」が上位に。治療前と治療中・治療後では、がん患者が同じ体験者に求める情報の内容が変化することがうかがえます。

持続可能なピアサポーター体制の後押しを求める声も

 がん患者を支援するため、ピアポーターとして活躍するがん経験者や家族も増えています。同協議会では、厚生労働省が2011年度から始めた「がん総合相談に携わる者に対する研修プログラム策定事業-ピアサポーターを対象とした研修-」について、研修プログラム策定事業運営委員会委員長の天野慎介さん(特定非営利活動法人グループ・ネクサス理事長)が事業の内容とスケジュールを説明しました。

 同委員会は、初めてピアサポートについて学ぶ人を対象に、守るべきルールや基本的な内容をまとめた研修プログラム「がんピアサポーター編」(初級編、β版)のテキストとDVDを今年度中に作成する予定です。天野さんは、「特に、個人情報の保護など守るべきルールを知ることが大切。医療介入しないのがピアサポーターの原則だと考えていますが、ピアサポーターが話を聞く際の知識として各種がんの基本的知識も盛り込みました」と話しました。

 また、特定非営利活動法人ミーネット理事長の花井美紀さんは、「愛知県下11のがん診療連携拠点病院等における院内ピアサポートに関する調査報告-がん相談連携の現状・課題・今後に向けての提案-」と題して発表。「ピアサポート導入後の院内評価」は「期待以上」27%、「期待通り」64%と高評価を得ており、医師や相談支援センターから直接紹介のある病院もあるといいます。活動の場所としては、「外来ロビー」が適切との回答が58%、「専用の部屋」16%で、オープンスペースでの活動を求める声が多い傾向がありました。

 調査結果を受け、花井さんは、次のように強調しました。

 「ピアサポーターが相談支援体制の充実に貢献する役割を担い、持続可能な活動を進めるためには、サポーターの公共的な養成と医療機関との連携が何より重要です。ピアサポーターが健全に発達して普及していくためには安定した財源が必要であり、ピアサポーターを導入している病院を診療報酬で評価し、サポーターが有償で任務にあたることも必要ではないかと思っています。また、ピアサポーターのマネジメントの拠点として、病院とは別に地域統括相談支援センターも必要。相談支援体制の充実はがん患者・家族の精神的・社会的痛みの緩和に大きな役割を果たしています。持続可能なピアサポートが根付くための関係者の熱意とアクションと財源が求められています」

がん計画の指標作りに向け患者体験調査を実施へ

 一方、がん計画の中間評価の指標について、参考人として参加した東京大学大学院医学系研究科医療品質評価学講座准教授の宮田裕章さんは、「がん対策を評価する枠組みと指標の策定に関する研究」の方針と今後のスケジュールを報告。質の評価については、既存資料の中で活用できるものが少ないことから、がん診療連携拠点病院の入院患者または外来患者に体験調査を実施し、それを反映しつつ指標候補を同協議会に提示する方向性を示しました。宮田さんは患者体験調査について、「病院での患者さんの体験だけではなく、がんになってからそして地域の中で生活していく流れを考慮しながら指標を作りたい。最初は大病院が対象になりますが、今後は小規模病院の動向を確認できるような形の展開を想定しながら準備を進めたいと考えています」と話しています。

 前回から議論になっている患者満足度調査に関しては、次のように意見が続出しました。

 「患者の満足度については評価が難しく慎重な取り扱いが必要だとは思いますが、私共患者の立場からすると患者満足度を測定しないのは問題」(天野さん)

 「満足度調査に答えられるのは生きて元気な一部分の患者さんであって、必ずしも全体を代弁していないと考えられる。がんは高齢者の病気であって、年齢の高い方本人が答えられない場合もある。調査がかなり偏ったものになるのではないかと危惧しています」(埼玉医科大学ゲノム医学研究センター疾患制御医学部門教授・西山正彦さん)

 「退院後の在宅療養の患者、家族や友人へのサポートがどうなっているかといった視点も取り入れていただきたい」(特定非営利活動法人愛媛がんサポートおれんじの会理事長・松本陽子さん)

 今回の議論を受け、同協議会会長でがん研究会有明病院院長の門田守さんは、次回の協議会までに評価指標の候補を絞り込む方針を示しました。

 「最初の5年間結局、質の評価指標ができなくて何とかしなければいけないということで議論しているわけで、難しい難しいといってもキリがありません。今どこまで何ができるか、何とか次回までにまとめたい」

 さらに協議会では、西山委員提出資料として、日本がん治療認定医機構(平岡真寛理事長)が、「がん専門医に関する検討についての要望書」を提出。患者にわかりやすいがん専門医制度の構築に向け「がん専門医のあり方に関するワーキンググループ」の設置が全会一致で承認されました。(医療ライター・福島安紀)

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(更新日付:2013年01月28日)

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