患者さんやご家族が実際に行っているアドボカシー(提言)活動の現状と自己意識、患者アドボカシーに対する他の立場からの評価などについて聞くために、「がんアドボカシー・アンケート」を実施しました。アンケート結果から、患者アドボカシーが重要であると考えられていることが示されました。また、医療提供者が行うアドボカシーなど、さまざまな立場で行うアドボカシーの内容も明らかになりました。
アドボカシーとは、ものごとを決める過程において主張や提言をすること(提言活動)を指します。
今回の「がんアドボカシー・アンケート」の対象は、1,患者・家族、2,国会議員・都道府県議会議員、3,都道府県庁がん対策担当者、4,医療提供者、といったさまざまな立場の関係者(ステークホルダー)です。回答数は、1,患者・家族:103件、2,国会議員・都道府県議会議員:89件、3,都道府県庁がん対策担当者:45件、4,医療提供者:263件でした(アンケート概要については、文末をご参照ください)。アンケートの結果から、がんアドボカシーについて考察します。
図1:患者アドボカシーに関する患者・家族の意識 |
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患者アドボカシー活動について、患者さんやご家族自身はどのように考えているのでしょうか。「患者アドボカシーの重要性」について聞いたところ、「重要だ」あるいは「どちらかといえば重要だ」と回答した人が97%に上りました(図1)。
「患者アドボカシーの活発度」について聞いたこところ、「高まっている」「どちらかといえば高まっている」と回答した方が合わせて62%。「患者アドボカシーの成果」については、「成果を生んでいる」「どちらかといえば成果を生んでいる」と回答した方が合わせて57%でした。
「重要性」についてはほとんどの回答者が認識していますが、「活発度」や「成果」については過半数が認めているものの、重要性についての認識にはまだ追いついていません。
図2:患者アドボカシーの内容 |
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「患者アドボカシー活動の内容」について聞いたところ、最も多く回答があったのは「がん患者・関係者同士の意見交換」(56%)、次いで「がん患者・関係者とその他の立場の人との意見交換」(52%)、「がん政策を考えるイベントなどの参加や開催」(48%)でした。一方で、行政担当者や議員への働きかけや、課題を明らかにするためのアンケート調査などの活動については、比較的回答数が低い結果となりました(図2)。がん患者・関係者同士の協働やイベントなどの活動は高まっていますが、政策立案者との直接的なコミュニケーションはまだあまり行われていないことがうかがえます。効果の高い活動が何かを考えてから、それが未実施であれば活動計画に盛り込んで実行するという発想も大切かも知れません。
図3:患者アドボカシーに対する他の立場からの意識 |
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では、国会議員・都道府県議会議員、都道府県庁がん対策担当者、医療提供者の患者アドボカシーに対する意識はどうでしょうか。
「患者アドボカシーの重要性」について、「重要だ」あるいは「どちらかといえば重要だ」と回答した人は国会議員・都道府県議会議員では実に99%という結果になりました。都道府県庁がん対策担当者回答でも87%、医療提供者でも91%にのぼりました。3つの立場いずれからも、その重要性についての認識が非常に高いという結果が示されています(図3)。
「患者アドボカシーの活発度」については、国会議員・都道府県議会議員では「高まっている」「どちらかといえば高まっている」と回答した人が合わせて58%、都道府県庁がん対策担当者では65%、医療提供者では68%でした。
「患者アドボカシーの成果」については、国会議員・都道府県議会議員では「成果を生んでいる」「どちらかといえば成果を生んでいる」と回答した人が合わせて59%、都道府県庁がん対策担当者では67%、医療提供者では61%となりました。
患者・家族からの回答同様、患者アドボカシーの重要性については9割程度と高く示された一方で、患者アドボカシーの高まりや成果については6割程度にとどまり、3割程度のギャップ(差)があります。まだ高まる余地があるといえるかも知れません。
図4:がん政策を推進させる上で重要な役割を担うステークホルダー |
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がん政策を推進する上で、どのステークホルダーに期待が寄せられているのでしょうか。アンケートでは「がん政策で重要な役割を担うステークホルダー」を聞いています。その結果、患者・家族では、「患者・家族」(81%)が最も多く、その後に「行政府」(65%)、「医療提供者」(59%)の順となりました。国会議員・都道府県議会議員では「行政府」(71%)、「立法府」(65%)、「医療提供者」(62%)でした。行政府では「医療提供者」(78%)、「患者・家族」(73%)、「行政府」(64%)という結果になり、医療提供者では、自らの「医療提供者」(78%)を筆頭に、「行政府」(73%)、「患者・家族」(57%)が続いています(図4)。
患者・家族の回答では、「医療提供者」、「立法府」と回答した人の割合が比較的低くなっています。一方で、国会議員・都道府県議会議員からの回答や医療提供者からの回答では、「患者・家族」と回答した人の割合が低くなっています。このことから、患者・家族と議員、患者・家族と医療提供者のコミュニケーションをより一層高めることも必要と考えられます。
図5:医療提供者によるアドボカシーに関する意識 |
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アドボカシーとは提言活動のことですから、患者・家族以外の立場からも行われます。医療提供者を対象に「医療提供者によるアドボカシーの重要性」について聞いたところ、「重要だ」あるいは「どちらかといえば重要だ」と回答したのは合わせて97%でした(図5)。「医療提供者によるアドボカシーの活発度」については、「高まっている」「どちらかといえば高まっている」と回答した人が41%。「医療提供者によるアドボカシーの成果」については、「成果を生んでいる」「どちらかといえば成果を生んでいる」と回答した人が30%でした。重要性に比べて、活発度や成果についてはまだ格段に低い結果となっています。
図6:医療提供者アドボカシーの内容 |
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実際の医療提供者によるアドボカシー活動の内容としては「医療提供者同士の意見交換と協働の場の参加や設定」(65%)、「協議会や検討会(およびその部会)などにおける提案」(45%)、「がん政策、がん条例、がん対策予算などについての学習」(40%)などが挙がっています(図6)。
活発度や成果を高めていくには、今回のアンケート結果で活発度や成果が比較的高い患者アドボカシー活動と連携
更新日:2011年11月14日